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━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会
「突然の社会状況の変化,QMSも変化に対応した活用をしていきましょう!」
2020年4月28日発行 第93号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第93号 目次 ≫
・はじめに
・2020年度QMS委員会総会について
・知識活用型企業への道
『QMSにおける知的資産運用への取り組み』
・QKMアクティブラーニング(第17回)報告
・QMSサロン(第28回)の報告
『QMSの機動性を考える』
〜アジャイル開発と基盤性のスクラム化はできるのか〜
・異業種見学会『ANA機体工場』の報告(中止に関して)
・ISO 9001関連の最新動向
・TL 9000コーナー TL 9000説明会の予告
・編集後記
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●はじめに
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会員企業の皆様,新年度が開始され,いかがお過ごしでしょうか?
前回のメルマガ92号発信時とは社会状況が一変することになるなど想像もつきませんでした。
ご存じの通り,世界的に猛威を振るっている新型コロナウィルスへの感染拡大が深刻な状況となっており
ます。日本国においても2020年4月7日に緊急事態宣言※が発出され,企業活動にも大きなインパクトが
でておられると思います。日本国の緊急事態宣言の発令に先駆けて,特に深刻なヨーロッパ諸国やロシア,
アメリカ,インド等の国々では非常事態宣言や緊急事態宣言が出され,日本国よりかなり厳しい内容(外
出制限,ロックダウン等)となっています。
※2020/04/07〜2020/05/07迄の1カ月間の範囲で,東京,神奈川,埼玉,千葉,大阪,兵庫,福岡が対象。
さらに,2020年4月16日には先の7都府県に北海道,茨城,石川,岐阜,愛知,京都を加え,計13都道
府県を特に重点的な対策を進める「特定警戒都道府県」とし,緊急事態宣言を日本全国に拡大しました。
日本国で今回発令された緊急事態宣言は2009年に世界中で大流行となった新型インフルエンザを契機に作
られ,2012年に成立した特別措置法「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づくものです。
新型コロナウイルスの感染が拡大したために,対策として新型インフルエンザ等対策特別措置法の対象と
なったとのことです。
幸いなことに2012年に特別措置法が作られて以降,実はこの緊急事態宣言は一度も出されたことがないと
のことです。
QMS委員会にとっても2020年3月5日に予定した異業種見学会を中止せざるを得なかったことや運営委
員会の開催延期(集合形式における)など様々な影響がでております。
また,会員企業の皆様の企業活動においても様々な影響(在宅勤務やテレワーク,時差通勤,一時休業な
ど)が出ていることと思います。
QMS委員会では,新型コロナウィルスに関する社会状況を踏まえつつ,会員企業の皆様への情報展開を
本メールマガジンやQMS委員会のHP、その他リモートで対応可能な活動などにて実施していきたいと
考えております。
いち早く,事態が収束し,通常の企業活動が再開できるよう,切に願っております。
それでは,メルマガ93号をお届けいたします。
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●2020年度QMS委員会総会について
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例年6月に開催予定のQMS委員会総会については,新型コロナウイルスの影響で大変申し訳ございませ
んが,開催日程および開催スタイルともに現在未定であります。CIAJ本体とも連携し目処が立ち次第に早
急にご案内させていただきます。なにとぞご理解の程よろしくお願い申し上げます。
なお,QMS委員会総会後に開催される特別講演として,講演者候補として立教大学 社会情報教育研究
センター 門田 実助教をお招きし,品質マネジメントと統計の繋がりがわかりやすい具体的なデータ評
価事例なども交えながら,品質マネジメント視点から,後々データをより活用できるようにするためには
,数値データや言語データをどう観て適切に評価するのがよいか,測定した関連するデータの因果関係の
見方も含めデータの見方についてお話しいただけるよう調整中です。
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●【連載】知識活用型企業への道
『QMSにおける知的資産運用への取り組み』
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この「知識活用型企業への道」の連載を2007年から担当し,気づいたら13年目になりました。その動機は
企業内にある暗黙的な現場知を表出化させ,例えば品質マネジメントシステム(QMS)などを使い,知識
活用型企業のシステムとしてうまく活用できるかを考察することにありました。
その連載期間にもグローバル経済の発展は目覚ましく,情報だけでなく知識の交流もさらに求められまし
た。
また技術的な面から見てもインターネットが高速化し応用範囲が広がるとともに,例えば動画配信や通販
など新たなビジネスが次々と急成長しました。さらに,人工知能(AI),IoT,5Gなど新技術が次々と開発
・導入され,企業活動も新たな知識なしには進展しない状況になっています。
さらにこの動きは,東京オリンピック2020の開催決定を契機に,自動車の自動運転,渋滞制御,顔認証,
無人コンビニなどさまざまなものに展開され実用化に向かっています。同時に海外からの観光客が急増し
インバウンドビジネスも大きくなり,オリンピック景気に期待をかけてきました。
一方で,社会生活や企業活動に大きな影響を与える異常気象,地震および台風など,これまでの経験を超
えた災害が次々と襲い,昨年はこれまで経験していない強風が吹き千葉県では電力網が分断され長期停電
が起きました。その結果,通信網も分断され首都圏にもかかわらず長期にわたり陸の孤島化した地域があ
りました。
このように変化が激しい中,現在は新型コロナウィルスの世界的流行により,大きく経済活動が影響を受
け,日本も国家運営の危機として非常事態宣言を発しその渦中にいます。
皆さんも嫌になるほど聞いているように,感染防止のため密閉,密集,密接を避けることが求められ,人
が集まるさまざまな業種が営業できず存続の危機にさらされています。また,不要な外出を控えることが
要請されていますので,実質的に経済活動が停止状態にあります。前代未聞の経験です。
このような状況に至り,在宅勤務が推奨されニワカに普及したのがテレワークです。ご存知のようにテレ
ワークは東京オリンピック時の混雑緩和策の一つとし提唱されおり,いくつかの企業で実証実験が計画さ
れていたようです,しかし現状では待ったなしで対応しなければならない状況になりました。
それゆえ,テレワークに必要なグッズ,パソコンやタブレットが良く売れているとの話を聞きますし,巣
籠グッズとしてゲームやゲーム機器の需要が高まり,品薄状況にあると報道されていました。
このような状況ですが,幸いにしてインターネット,携帯電話,電力,物流など基盤インフラが安定して
いるため,不便な点は多々ありますが大きな社会的混乱は今のところ見られません。
実際,公共交通網は安定しておりますし,ネット利用率が40%以上増えたにも関わらずネットシステムも
通常と変わらず機能しております。また,物流関連の多大な努力のおかげで生活必需品も不足なくお店に
並んでいる状況なので,感染不安はありますが日常は維持されているかとみえます。
この状況で最も必要とされている医療は,急増する患者に伴い医療崩壊の危機にさらされており,医療関
係者の献身的な努力が続けられております。感謝しなければとつくづく思っています。それゆえ巣籠はつ
らいのですが我慢しているかと思います。
このような動きの中,国内のウィルス感染防止の動きが他国に比べ何かと遅いのが気になります。その中
でも顕著に感じられるのは,国と東京都との意思決定と対応のスピード差です。国難にもかかわらず国の
対応は遅く,東京都が常に先行しリーダーシップを発揮しているように思えます。
その背景を考えてみますと,官庁は縦割り行政で縄張り意識が強く,また中長期の視点を重視しているた
め,個々の結果すなわちアウトプットよりも,その結果が導く効果すなわちアウトカムを重視する傾向に
あります。
一方,都政をはじめ地方行政は,住民との関係が密かつ直接的であり,限られた予算で今何をするかとい
うアウトプットが常に求められているため,行動の差を生み出しているようにみえます。
平時の時は,進むべき方向性を示す官庁と,それを現場に合わせ実現する地方行政が相互に補完し進んで
いく姿が現実的かとみえますが,今回のような非常事態では,対応スピードが最も必要な要素なので,す
ばやい意思決定と行動が成果の違いを生み出します。
以前は東京都も都知事がほとんど登庁していないとか,週末に別荘に公用車を使っていきお風呂につかっ
ていたなど,ノンビリした役所体質が話題になりましたが,都知事も変わり東京オリンピック開催のタイ
ムリミットがある中,築地市場の豊洲移転をはじめ競技場や関連施設の整備など山積する課題を,猛烈な
勢いで調整・解決してきたため,良い意味で組織的行動の変容を重ねてきたようです。
それゆえ,今回の非常事態でも素早い意思決定と行動が行える下地が出来上がっていたかと推察します。
実際,現在の対応に活かされていることが実感できます。
また,最近の東京都財務局(https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/zaisei/yosan/r2.html)の令和2年
度予算の「予算の執行について(依命通達)」を見てみますと,「新型コロナウィルス感染症への対応や
,東京2020大会の延期への対応など,喫緊の課題に的確に対処していくことに加え,・・・・・」と各部
署に通達されていました。
その中をみると「社会経済情勢が不透明感を増す中,都政が,都度直面する課題に対し,一つひとつ,時
機を逸することなく,柔軟かつ的確に対応していかなければならない。」,「Society 5.0 の社会実装に
向けた取組など,AI,IoT,5Gなどの第4次産業革命の技術革新にいち早く取り組んでいく必要が
ある。」と前置きし,「よって,貴職におかれては,現下の都財政の状況と課題を職員に十分周知徹底し
,下記の事項に留意の上,予算の執行に万全を期されたい。 この旨,命によって通達する。」と明確な
命令が出されています。
この通達により,予算に限度があるものの各組織はワンチームとして無用な忖度もなく進めることができ
るようになりますので,これを命じたリーダーシップの強い意志がみえます。
この通達の中で特に重要だと思えるのが,“時期を逸することなく,柔軟かつ的確な対応しなければなら
ない”という点です。お役所的になってきた企業では襟を正す内容だと思います。
さてお役所仕事といえば,品質マネジメントシステム規格(ISO 9001)に準じて構築された品質マネジメン
トシステム(QMS)の形骸化の話題は避けられません。
その対応として前回メルマガで,図らずもアジャイルQMSの必要性について言及しました。その中で「“
アジャイルは機敏な”,機動的な“とか,“頭の回転が速い”という意味で柔軟性をも含む概念なので,
“迅速な”(例えば,speedy,swift,rapidなど)とは少し意味合いが違うようです。」と述べました。
これはまさに,今回の東京都の「予算の執行について(依命通達)」の内容と符合しています。
手続き型業務が中心である,いわゆるお役所仕事と見ていた東京都が,このような依命通達を出し覚悟を
決めている中,本来は変化が激しく賢く機敏に動かなければならぬ企業が,指示待ち社員の増加やマニュ
アルワーキング主体となっているとすれば本末転倒の感があります。
このウィルス感染が一段落し平常に戻る時期がかならず来ますが,大きく経済状況が変わってしまってい
ることが予想できます。従来の延長線では考えられない状況なので,機敏かつ柔軟に新たな状況に対応す
るアジャイルな組織活動がさらに強く求められるでしょう。
このような状況に至っても,QMSなど企業活動の基本フレームワークは不可欠だとみています。その理由
は全てを根底からやり直すなら別ですが,現状のQMSに照らし維持すべき点,変えるべき点および廃止す
べき点を演繹的にすばやく導く道具の一つとして利用価値があるからです。
一方,変化に対応し新たな取り組みが求められる部分,すなわち過去の延長線として演繹的に導けないも
のは,まずは企業内にある知的資産を使い,すばやく計画・実行し,結果をレビューし,短期サイクルで
帰納的に収れんさせるアジャイルな反復学習が必要になります。
アジャイルな活動は変化対応への賢さが求められるため,従来の経験や勘だけではどうにもなりません。
必要な情報の収集と,それらを組み合わせて知識化し,同時に関係者相互の協力と信頼関係を基盤とし活
動することが必要です。それに加え,それらを支える卓越したリーダーシップが求められるでしょう。
これらは人々の資質に基づくものが多く,だれもが全てを満たせるわけではありません。コミュニケーシ
ョンを密にし,相互に知識を補完しながら進めることが現実的かとみえます。その上でQMSなど基盤的な
システム要素と照らし知識を活用することにより,最小限の変更で機敏かつ柔軟に変化に対応できるアジ
ャイル行動を導けるでしょう。
さて,新型コロナウィルスの影響で世界的に影響を受けている今,その後の新しい世界に注目し準備して
おくことも企業として今やるべきことの一つです。
一般的に見れば,一部の特需業界を除けば多くの企業は一時的に経営が厳しくなり,また廃業も多く出る
でしょう。また,グローバル経済の在り方も今回の経験で変わるので,新たな視点でレビューする必要が
あるかと思います。
経済大国の一角を担う日本が,マスクすら手に入らず,また感染防止の防御服が入手できず,医療関係者
は雨合羽を代用するなどの事態をだれが想像したでしょうか。総理大臣自らがマスク配布を宣言する現状
では,かなり心もとない状況だといえます。
日本がグローバル経済の中,一旦歯車が狂えばどれほど脆弱な状況であったことを自覚できたことは,代
償は高いものにつきますが将来を考えるとき有益であるとポジティブにとらえるべきでしょう。
余談ですが,地球温暖化の影響による異常気象が続いている中,またCOP25(2019/12)で見るように国際
的な足並みがそろわない現状において,今回の生産活動の世界的低迷がもたらす環境への影響は,貴重な
データをもたらしてくれると期待しています。
“禍を転じて福と為す”ですが,世界的な経済活動の低下により企業活動も交通量も大幅に低下したと思
いますので,これが地球温暖化にどのように影響したか,図らずも貴重なデータがとれるようになるでし
ょう。
さて話は長くなりましたが,新たな変化に対応するアジャイルな行動が,将来の企業の姿を決めかねない
状況であることは否めませんので,基盤要素のひとつであるQMSも活用し,痛みを伴いますが機敏で柔軟
性あるアジャイルな組織を作り上げたいものです。
まだまだ新型コロナウィルスの感染が拡大している状況なので,どのようにこの現状を乗り越えるか心配
ですが,ガッカリしているだけでは何もなりません。これを契機に次の成長につなげる機会とし前向きに
夢をつなげる努力をし続けなければと思っています。皆様のご活躍を願うものです。
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●QKMアクティブラーニング(第17回)報告
『バランススコアカードの基礎から構築まで』
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2003年より継続してまいりました,QKM-ALの企画「バランススコアカードの基礎から構築まで」を
今回もバランススコアカード(BSC)の国内第一人者である横浜国立大学大学院の吉川名誉教授に講師
をお願いし,2020年1月17日に実施いたしました。
本講座の前半はBSC構築についての講義を実施し,後半はグループに分かれてケーススタディを実施し
ました。ケーススタディでは,事業の業績向上をテーマに事例となった組織を分析し,再生のシナリオを
描き,BSCの7ステップを用いて,業績向上に向けた対応策を検討しました。
演習の中で体験するSWOT分析やさまざまな視点から戦略目標〜アクションプランまでを夫々の因果関
係に矛盾がないことを相互にHOW/WHYで計画をチェックするなど,QMSの計画を立案する場面な
どで活用できるものが多くあります。ISO9001:2015の要求事項にある,”組織の状況”,”
リスクと機会”など,まさにBSCがQMSを有効に機能させるツールではないでしょうか。
アンケートの結果を拝見しますと,本講座への期待としてBSCへの興味,業務への応用などを挙げられ
ており,受講後の感想では十分その期待に応える内容であったようです。また他の企業の参加者とコミュ
ニケーションが行えたことを挙げられた方もおり,普段の業務で感じる機会の少ない様々な刺激となった
のではないでしょうか。
アクティブラーニングは自ら学ぶ場であるとともに,参加者同士が互いに意見を交わすことで,今までに
ない価値観や視野を身に付ける効果もあるかと思います。
今後も様々な企画を計画していきますので,皆様に是非積極的にご参加いただきたくよろしくお願い致し
ます。
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●QMSサロン(第28回)の報告
『QMSの機動性を考える』
〜アジャイル開発と基盤性のスクラム化はできるのか〜
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2020年2月7日にQMSサロン(第28回)を開催しました。
山本正 QMS委員会特別委員(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え,『QMSの機動性を考える』をテーマ
に話し合い,知識循環からQMSの機動性をみること,機動的QMSとは何かに視点をおきました。
はじめに,山本氏から“アジャイル”について説明がありました。
ソフトウェア開発の現場では,アジャイルソフトウェア開発として,反復型開発で短い期間を単位とする
開発手法で,機動性などを重視した言葉として使われていることが多いのですが,言葉の意味を考えると
山本氏は,“頭の回転が速い”など,機動性とは少し違う観点で捉えているということでした。
この解釈は,今回のテーマ『QMSの機動性を考える』にも深く結びついていきます。
テーマの機動的QMSを考える前に,アジャイルソフトウェア開発について意見を出し合いました。
・高度に洗練された共同作業と言える
・その分野の経験知を持っている人材が集まる
・自分で考える能力(自分から問題を解決する能力)を求められる
・問題を発見できる能力が必要である
・短納期で設計を完成させるため,パート図,日程管理,クリティカルパスを決める
・道具を使わないと,アジャイル開発はできない 等
山本氏からはアジャイル開発ができる人・できない人がいること,アジャイル開発では全体像は把握しづ
らいこと,要件定義をしっかりやることなど,開発をハンドリングして,知識化ができるナレッジマネー
ジャーが存在すると良いとの説明を受けました。
これらから導き出したことは,自分たちに経験があれば,ある程度,仕様書,要件定義書は書ける,何も
しないでアジャイル開発するのは無謀である,分からないのに文書化は出来ないということでした。
また,どこをアジャイル,どこをウォーターフォールにするかなどを決める必要があるとのことで,これ
らを文書化する(知識の形式知化)ことにより反復学習もできる,とのことでした。
これらには,知識をイネーブリング(*)させることが必要で,知識イネーブリングの機動性は,情報収集
の総合性と反復学習の機動性から影響を受けるという仮説が述べられました。
* ポジティブな文脈においては,個人の成長・自立を促す反応パターンを指す(出典:Wikipedia)
知識循環としてQMSを考えると,マニュアルワーキングも,元は,ノン・マニュアルワーキングであり,
その活動は知識(形式知,暗黙知,身体知,経験知など)に基づき,それ相応の知識形態で構成されて
いること,情報から知識にしていくことで行動につながっていることの説明を受けました。
情報と知識の違いの説明で,知識で動く人は自律的に動く,自分で納得して失敗したら自分にフィード
バックできる。情報で動く人は他律的に動く,失敗した経験がフィードバックされない。
従って,組織において,知識で動く人を増やしていく必要があるということでした。
私たち情報通信を扱う組織の取り巻く環境は,AI(人工知能),5G,IoT,更には車の自動運転も急速に
社会に導入されつつあり,第四次産業革命と表されるほどの変化が起きつつあります。
企業内でもDX(Digital Transformation)が浸透する中,マニュアルワーキングだけでなく,手続き化が
難しい知識活用型業務にも導入されていくということでした。
そのような変化の中で,基盤性を重視するQMSも,変化に順応する能力が求められます。
そして,企業内情報の共有だけでなく外部情報も含めたさまざまな情報との結合が必要になります。
各種情報に意味を与え知識化を素早く行い,共有することが勝敗を決めるとのことでした。
すなわち,QMSにおいても,反復学習と知識循環が求められていて,知識をイネーブリングさせる,文書
化もあれば,反復学習もあり,QMSを機動的に動かすためには,両者を上手く使っていくことが必要だと
感じました。
次に,知識循環からQMSの機動性をみるために,人の能力について話し合いました。
スキル,頭の良さ(アジャイル),行動特性・思考特性,動機付けなどの観点から,QMSが機動性を持つ
ための特性などを考察しました。
これらから,機動性を高めるための3つの提言が見えてきました。
・「知識スパイラル」;反復学習を含む学習能力
・「認知限界」;機動性を考えるため注目する観点
・「システム思考」;行動特性・思考特性
QMSとアジャイル開発の立ち位置の違いとして,アジャイル型開発の主な関心事は,「知識スパイラル」
と「認知限界」であり,QMSの主な関心事は,「システム思考」と「知識スパイラル」であるとのことで
した。
QMSは,主に<過去の知>で構成され,アジャイル開発などは,<今ここにある知>を軸にした現場知で
動いており,特に,現場知を活かすためには,知的協力関係の構築と,人々の自律がマネジメントする上
で大事な要素になっていました。
<過去の知>
a) 制度的知,成文化すべき知
b) ルール化・手順類
<今ここにある知>
a) 成文化できない知(創造力,リテラシー,技能)
b) 非制度的知 成文化しない方がよい知(意思決定)
そして,QMSとアジャイル開発のマネジメントする上でどちらにも言えることは,認知限界を広げていく
ことを意識していることでした。
本日のQMSサロンのまとめとして,ファシリテーターの山本氏から次の言葉がありました。
・企業活動は過去の経験から得られた“過去の知”を基盤とし,現状から得られる“今ここにある知”の
コラボレーションで構成されている
・過去から得られた認知と現在進行中の事柄からの認知を重ね合わせ,QMSとアジャイル開発を併用また
は使い分けし,最適な現場知を常にイネーブリングさせるマネジメント知が必要となる
・両者の特性をうまく組み合わせイネーブリングできれば,QMSとアジャイル開発はスクラムを組める
とのことでした。
QMSサロンは,自身の勉強目的のみならず,会員間コミュニケーション,リレーションを築くことにも
最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。
皆様のご参加をお待ちしております。
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●異業種見学会『ANA機体工場』見学の報告(中止に関して)
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2020年3月5日に開催を予定しておりました異業種見学会『ANA機体工場』は,多くの会員企業の皆様より
ご参加の申し込みをいただきましたが,新型コロナウイルスにおける国内の感染拡大を受け,QMS委員会
としてのイベント・企画の延期・中止の検討を実施していたところ,2020年2月25日にCIAJ本体より
各委員会に示された「新型コロナウイルスへの対応方針」を受け,感染予防ならびに感染拡大防止に努め
る必要性があることを重要視し,中止させていただきました。
お忙しい中,業務のご都合をつけられ,楽しみにお待ちいただいた会員企業の皆様にあらためて深くお詫
び申し上げます。
今年度(2020年度)の異業種見学会は新型コロナウィルスに関する社会状況を踏まえつつ,検討を行い,
実行してまいります。
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●ISO 9001関連の最新動向
『サービス継続性管理の重要性』
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新型コロナウイルスのパンデミックで,特にいま「サービス継続性管理」について着眼がされています。
医療従事者の方々の献身的な努力に最大限の感謝の気持ちを表すとともに,エアライン,船会社,ロジス
ティクス関係者の方々も,必死になって国内で必要なモノの輸入に努力していただいていることを身近に
聴き,サービスマネジメントはHWやSWなどシステム的な領域だけでは対処できない人に属する領域が多分
にあることをあらためて感じます。
今回はISO 9001関連の周辺情報として,サービスマネジメントにおけるデファクトスタンダードである
「ISO20000-1:2018(2018年9月15日発行)」を基に, サービス可用性とサービス継続性の違いについて少
しご紹介したいと思います。DX&AI時代は,モノづくり+コトづくり(サービス)の一体化が進むと言わ
れています。貴組織のQMSをモノづくりだけではなくコトづくり(サービス)の視点からも,ぜひ見直す
契機となれば幸甚です。
〇サービス可用性
あらかじめ合意された時点又は期間にわたって,要求された機能を実行するサービス又はサービスコン
ポーネント
→防御力(例えば,プログラムのバグによって引き起こされるシステム障害によるサービス中断の脅威
の影響を低減),必要とされた時に合意された機能を実行できる力を示します。
〇サービス継続
サービスを中断なしに,又は合意した可用性を一貫して提供する能力→回復力(中断されたサービスを
速やかに再開する力),新型コロナウイルスの様な回避する事が不可能な不測の事態が発生した時に,
如何に即座に合意されたレベルまで復旧できるかの度合いを示します。
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●TL 9000コーナー TL 9000説明会の予告
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1.TL 9000説明会の予告
2020年夏(7月初旬頃)に恒例のTL 9000説明会を,TIAクエストフォーラムとQMS 委員会の共催で実施する
予定です。コロナウィルスが治まっていることが前提です。
今回も,TL 9000の基礎知識を中心に「TL 9000要求事項ハンドブック,TL 9000測定法ハンドブック」
及び,「TL 9000に関するWEB等の情報の見方」を中心に説明を行う予定です。
更に,ISO 9001:2015年版をベースとした電気通信業界向けのセクタ規格であるTL 9000の最新の内容を知
る絶好の機会です。奮ってご参加戴ければと思います。
2020年6月頃に,CIAJ「えくすぱーと・のれっじ・セミナー」のHPに正式案内を掲載予定です。
2.新型コロナウィルス問題に対するTL 9000認証の暫定対策
TIAは,新型コロナウィルス問題に対処するために,TL 9000再認証審査に関する一時的なプロセスを設定
しました。
1)認証機関は,現在の認証期限を延期する要求を提出することができる。
2)現時点では,登録証の有効期限が2020年7月1日より前である組織に対する要求のみが考慮される。
3)6か月間の延期が状況に応じて認められる。
TIA:Telecommunications Industry Association:米国電気通信工業会
米国を本拠とする通信業界のグローバルな団体で,TL 9000品質規格や通信分野の技術基準の制定,
技術研究, 米国政府対応を行なっています。CIAJとグローバルパートナーシップを結んでいます。
クエストフォーラム:
TL 9000の推進,普及を行なう団体で,現在はTIAの組織の一部として活動しています。
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●編集後記
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緊急事態宣言からすでに,3週間がたち今後少しでも状況が落ち着いてくることを願う毎日です。
普段の仕事についてもテレワークやマスク着用などかなりストレスのかかる状態ですが,こういう時こそ
普段できない本などからの知識習得をされてはいかがでしょうか?
過去にも,スペイン風邪という未曽有のパンデミックがあり,推定5億人のかたが感染したとの記録があ
るようです。このパンデミックでも世界は乗り越えてきているのですから,今回の新型コロナについても
皆様で協力して乗り越えていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」──
* 配信追加は下記にお知らせください。
mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp
* 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
QMS委員会メルマガ編集部
https://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ)
* 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(勝田 秀樹)
* 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!
qmsmelg@ciaj.or.jp
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Copyright(C)2004-2020 CIAJ QMS committee All rights reserved.
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