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   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

 「プロセス改善などの学びの場としてQMS委員会のイベントを是非ご活用ください」

                      2019年10月4日発行 第91号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第91号 目次 ≫

・はじめに

・会員企業への訪問・懇談による説明会の実施について

・QMSサロン(第27回)報告(7月26日)
 『QMSのプロセス改善を考える』
   〜変化に対するプロセスの順応性を最適化するには〜

・QKMアクティブラーニング(第15回)報告

・QKMアクティブラーニング(第16回)予告

・ISO 9001関連の最新動向

・TL 9000コーナー TL 9000説明会予告(11月25日)

・知識活用型企業への道
   『QMSにおける知的資産運用への取り組み』

・CIAJ事務所移転のお知らせ
   
・編集後記

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●はじめに ─────────────────────────────────── 台風15号は首都圏に多大な被害をもたらし千葉県内の停電は,ピーク時に 約64万軒にも及びました。 今回の台風は関東に来るまで勢力が衰えなかったため,最大瞬間風速が50mを 超えたところもありました。関東では,これほどの風の強い台風が直撃する など考えられなかったですが,これが地球温暖化の影響ならば,今後もこの ような台風が来ることもめずらしくなくなるのかもしれませんので想定を 超えた台風に備える必要があるかもせん。 過去の経験により最適なQMSだと判断していたものでも,外部環境の変化に よっては見直しが必要になると考えております。 QMS委員会では会員企業の皆様に役立つ企画を提供してまいります。 ご期待ください。 それでは,メルマガ91号をお届けいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●会員企業への訪問・懇談による説明会の実施について ─────────────────────────────────── 第90号のメールマガジン『●はじめに』の中で, 「会員企業の皆様と個々にコミュニケーションの機会を設け,意見交換 (ニーズや課題等,運営委員としての参画等)を実施させていただきたいと 考えております。是非とも,ご協力をお願いいたします。」 と書かせていただきました。 現在,一部の会員企業の皆様には既にQMS委員会より, 以下のメールタイトルにてメールを送付させていただいております。 【依頼事項:CIAJ QMS委員会】会員企業の皆様への訪問のお願いについて 10月より順次,訪問・懇談を始めさせていただきますので,その際は ご理解・ご協力の程,よろしくお願いいたします。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMSサロン(第27回)報告(7月26日)  『QMSのプロセス改善を考える』    〜変化に対するプロセスの順応性を最適化するには〜 ─────────────────────────────────── 7月26日に第27回「QMSサロン」を開催しました。 今回のQMSサロンは,今年度の運営方針「QMSのプロセスを改善する」に あわせ,「QMSのプロセス改善を考える」をテーマに,「プロセスの順応性, システム的認知,QMSをより理解する手法,変化に順応する」について, 山本正 QMS委員会特別委員(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え,話し 合いました。 第一部として,「プロセスの順応性」について考察しました。 まず最初に,QMSとプロセスについての再確認のお話しがありました。 QMSでは,プロセスは業務活動を行う基盤的要素であり,手順化,基準化など により明示し,プロセスを確実に実行することで業務の質が安定するように 努めており,求められる業務の質は,ビジネス環境の変化に適宜順応すること により担保されるということと,QMSのスタートは,再発防止,PDCAを回す ことにより改善するという基本を踏まえたうえで,今まで正しいことは,今後 とも正しいか分からない。QMSの活動の結果,答えがひとつとは限らない。 社長から見るQMS,従業員から見るQMS,お客様から見るQMSなど,立場により 見方・見え方が違うことを理解する必要があるとのお話がありました。 そして,事例研究として,「無人運転システムで営業している某市の新交通が ,始発駅で逆走し,車止めに衝突し負傷者を出した事故」を取り上げて,事故 を発生させた本質を品質マネジメント上の課題から考えました。 活発な意見(安全サイドに倒れるシーケンスが出来ていない,手順があるが 無視されていたなど)が参加者間で交わされ,まとめとして,事故の原因が, 設計問題か,人的ミスかなど特定の原因に結論付けることが重要ではなく, プロセスが変化すべき内容を認知し,意識する必要があるという提起がされ ました。すなわち,問題の認知,問題意識,何で変化するのか「変化対応の 必要性を認知する」ということです。 どのように認知するかは,現状および現場視点だけでなく,システム的な 視点で眺める必要があり,リスクや機会を視座におきシステム的に認知する アプローチが必要とのことでした。 第二部では,「システム的認知」について意見が交わされました。 第一部で,「システム的に認知する」というアプローチの必要性を受けて, ここでは,QMSの演繹的および帰納的アプローチという考えが示されました。 これは,”プロセスの基盤的要素は,演繹的に導くとともに,理解可能な状況 を保つことが必要” とのことですが,例えば,教育・訓練システムでは, 研修後の試験で演繹的に評価するが,実際の効果は時間が経過したのち,必要 な場面において帰納的に確認されるものであるという解説がありました。 修了試験に合格すれば教育の効果ありなど,演繹的に評価するだけではパフォ ーマンス評価的には不足であり,QMSの効果を発揮するには,帰納的思考で, QMSのプロセスを改善する余地があるところを探すことも必要だと感じました。 ここで事例研究を行い,「某市営地下鉄が,保守点検装置を線路に置き忘れ, それに電車が乗り上げ脱線した」ことを取り上げ,手順視点,手順の逸脱, 仕組みから逸れても誰も気付かない,システムとして防止するなど積極的な 意見が変わされました。 第三部では,「QMSをより理解する手法」がテーマでした。 今までの話しの流れで,QMS内の評価と指標が紹介され,経済指標の用語で ”先行指標” と ”遅行指標” があるが,QMSの中にもそのような指標がある とのことでした。 QMSにおいて,変化を知るために,先行指標,遅行指標の概念が入っており, 演繹的に知る:  先行指標を使う,例えば,出来事を起点とした「事実に基づくアプローチ」  などで,是正処置,再発防止などがある 帰納的に知る:  遅行指標を使う,例えば,予測を起点とした「リスクに基づく考え方」など  で,予防処置などがある このように考えると,QMS規格の中にも多くの演繹性と帰納性が存在するとの ことで,例として,「9.2内部監査」の演繹的評価では,組織自体が規定した 要求事項,ISO 9001の要求事項への適合,有効的実施と維持があり, 評価すべき内容が明確であることが前提となっている。この内部監査の結果を 帰納的評価としてみると「9.3 マネジメントレビュー」へのインプットとして ,QMSが引き続き,適切,妥当かつ有効でさらに組織の戦略的な方向と一致し ていることを確実にするという結論へと帰納的に導いているという説明はとて も納得が得られました。 以上より,プロセスの変化順応能力を考えるには,まず将来の出来事を帰納的 に予測し,システムとして各プロセスの何を変化させ,何を強化し,何を捨て るか考えてみるということでした。 第四部では,「変化に順応する」という方向性を示しました。 ここまで学んできて最後に,QMSは変化に順応できるかの問いがされました。 QMSの本質として,規定,ルールなどを文書類に明記し行動する,規範的な 行動を基盤としている。しかし,全ての内容を文書化することは出来ない。 文書化できないことに価値がある。書いていることだけで対応しようとする と無理がある。文書化できないものは人の力量・能力に依存する。 という性質があるとのことで,人に関連する問題への対処例として,地域福祉 活動が紹介されました。 福祉内容は極めて個人的な問題で,複雑,多様な世界で,システムで一括して 対応することができないことが多いので,自助,共助,公助の3つの枠組みで 取り組み必要があるとのことでした。 この福祉的アプローチで,QMSを見てみると, 自分ごととして変化を感じる(自助):  ・関心を持つ,・話しを聴く,・自分で帰納的に理解する,  ・自分の主張を提案する,・結果として業務に活かす機会を持つ 支え合う(共助):  ・立場の違う人々の意見を知る,・自分の立場を他者視点で見直す,  ・共通点相違点を明らかにする,・すり合わせすべき要素を浮き彫りにする,  ・取り込む部分と捨てる部分を識別する,・納得性を確保する 支援をえる(公助):  ・企業目的を達成するための自分たちの役割を知る,  ・自分たちが実現できる範囲を見極める,  ・実現するために関連する要素を理解する,  ・自分たちができる範囲外の事柄を明らかにする,  ・企業全体としての支援を依頼する これらを取り組んでいくことで,QMSのプロセスの改善の糸口がつかめる だろうという確信が得られました。 参加者からは,以下のような感想が上げられました。 ・チームワークは,個人の能力があってこそ初めてチームワークが生まれる ・自助的な人でないとチームワークは作れない ・自分で感度を意図的に変えていかないといけない ・プロセスの改善で,自分でどう自助できるか考えたい,共助・公助を考える ・システムで見て,帰納的な考えで,予防的な処置,システムで捉える ・ボトムアップで見ると限界があると思う ・学習水平線,認知限界を超える,自助・公助,演繹的・帰納的を理解した ・QMSはPDCAをまわすだけではなく,リスクや機会をみながらシステム的に  認知することが分かった ・昔の事例に学ぶことは演繹的。過去を学ぶことで将来を予測することが  できる 今回は,「QMSのプロセス改善を考える」というテーマであったので,基盤を 強化するために維持するのか,将来に備えてどう変化させるのか,どうしたら パフォーマンス向上につながるか,参加者の活発な意見交換がありました。 毎回メルマガで,内容のダイジェストをお伝えしていますが,参加するから こそ味わえる一体感,場の共有の素晴らしさをお伝えできないのが残念です。 QMSを軸に置いたサロンですが,事業プロセス全体を考えた幅広い情報を得る ことができる特別な場です。 参加者の中には,QMSサロンに参加して,自分が進化していることを実感する との感想をお持ちの方もいます。 一度参加いただければ,QMSサロンの良さをお分かりいただけるでしょう。 敷居が高くて躊躇するとの声も聴かれますが,そんなことはありません! 一度参加すると,きっと自身のプラスになります。 是非,メルマガ読者の皆様にも,“場に参加するからこそ腑に落ちる” 感覚を直接味わい,自身の知識として持ち帰っていたがきたいです。 次回,第28回は,2020年2月に開催予定です。 QMSサロンは,自身の勉強目的のみならず,会員間コミュニケーション, リレーションを築くことにも最適な場です。 新たな参加者を大歓迎します。 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QKMアクティブラーニング(第15回)『品質管理と信頼性』の報告 (2019/9/3実施) ─────────────────────────────────── 第15回(9/3)『品質管理と信頼性』に多数エントリ頂きありがとうござい ました。ご都合が合わず参加出来なかった方もいらっしゃるかと思いますので, 今後も会員企業の期待に応える機会を提供してまいります。 当日は当QMS委員会の副委員長でもある(株)日立製作所の青木誠氏により 金融分野の情報システムの開発を例にソフトウェアに関する品質管理と システムの信頼性についての取り組みについて講義をしていただきました。 講義では基本的な品質管理についての説明の後,システムの重要度等に基づく 各工程での品質管理に関する取り組み,品質保証部門の関わり方等を実務経験 に基づき説明いただき,参加者との質疑応答を交えて進めました。 質疑応答では,品質保証部門のスキルと人財育成,上流工程から品質保証部門 が参画する仕組み,設計書を検査対象としていることに関する質問や,設計 部門の品質見解の見極め,設計部門のプロジェクトマネジメントが人依存と なっている実態などについての経験談を踏まえてお話いただきました。 講師/参加者とも自社文化との比較をしつつ,活発なやり取りが行われました。 また,受講された皆様のアンケートの回答を拝見しますと,私たちがこの企画 に期待しておりましたソフトウェアの考え方をハードウェアに活かすこと, 自社・自組織のプロセスの改善のための気付きのきっかけとなることに近い 感想を持たれており,安心いたしました。 他社の文化に触れ,皆様の業務と比較して何か業務改善のきっかけになること を期待しております。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QKMアクティブラーニング(第16回)『内部監査のプロセスを改善する』予告 ─────────────────────────────────── さて,今後の企画ですが,2019年度の運営方針である『QMSのプロセスを改善 する』に沿ったテーマとして『内部監査のプロセスを改善する』を計画して おります。 内容としては,前半は内部監査についての講義,後半は内部監査を見直したい 事務局の方の悩みを持ち寄り,出席者全員で相互に議論し,その改善のための ヒントを得るワークショップとしたいと思っております。 受け身ではなく,それぞれの経験/手法を持ち寄り互いにヒントを与え合う 学びの場としたいと考えております。 故に,今回は参加対象者をQMS事務局に限定して行いたいと思います。 今回も新企画となりますが,皆さんの意見を伺いながら試行錯誤の上,活動 して行きたいと思います。 詳細は,後日開催案内通知を発信させていただきます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●ISO 9001関連の最新動向   『2019日本IE協会年次大会〜IEが奏でる未来響創〜』  ─────────────────────────────────── 今号では,TC176関連で報告する案件はありませんが,会員企業の皆様にとって も関心事となってるであろうDX(デジタルトランスフォーメーション)やAI がらみのご報告をさせていただきます。 QMSを運用する組織を取り巻く外部環境変化の動向把握を軸に,2019年9月9(月) および10日(火)に開催された『2019日本IE協会年次大会』を聴講しましたの で,概要をご紹介いたします。 ◆日本インダストリアル・エンジニアリング協会会長   (株)東芝 取締役 代表取締役社長COO 綱川 智 氏 ・これからの時代は,AI,ロボット,RPAを活用したリソース・資源の最大活用  が求められ,モノづくり+非定型活動の設計やスムーズに繋ぐ全体最適が  必要となり,IEが企業活動全体に広がる。 ◆基調講演 『技術を社会へ 〜豊かな未来を迎えるために〜』   国立研究開発法人 産業技術総合研究所 理事長 中鉢 良治 氏  ・効率化重視で,技術も人も必要なものだけ取る。日本式経営の大幅な見直し  を行った。それはグローバリゼーションではなく米国の考え方だった。  いままでの資産がある内は良かったが,スペックが高度化→技術の複雑化・  高度化・多様化で共同と連携の必要性が出てきた  (オープンイノベーション)。  選択をやり過ぎるとダメ。多様化はイノベーションの源(いま結果を  ださない多様性は排除されやすく,捨てたり探したりを繰り返す)。 ・AIで日本が勝つには,分散した良質のデータをいかに集めるかが鍵。  日本の強みはセンシング+良質な現場データを保有(GAFAにはない)。  そのためには出る杭は打たない多様性が大事。 ◆リフレッシュ講演 『脳と体と組織のアンチ・エイジング〜明るい未来のために〜』    精神科医/国際医療福祉大学大学院教授 和田 秀樹 氏: ・感情の老化が組織を老化させる。  ①創造性の低下 ②守りに入る(前例踏襲思考に繋がる) ③冒険心を奪う  思考の多様化が,感情の老化を防ぎ,組織を活性化させる。答えはひとつで  ないと常に考える。  見えないアレルギーをみる(組織は若返っているか?)。 ◆デジタルトランスフォーメーションに関するP2Mの展開  〜3Sモデルを用いたDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現する  組織構造の考察〜    名古屋工業大学大学院 ながれ領域研究員 加藤 智之 氏: ・DXは現象。一つのプロジェクトで完了できるような代物ではない。  プロジェクトマネジメントに変わるマネジメントフレームワークが必要。  プロジェクトでは,DXのようなパラダイムシフトに対応できない(プロ  ジェクトの限界を超えるためプログラムマネジメントの導入が求められる)。 ◆製造業におけるデジタルトランスフォーメーション最前線〜AI/IoTを  活用した先進事例〜   富士通㈱理事 首席エバンジェリスト 兼 エバンジェリスト推進室長   兼 未来共創センター長 中山 五輪男 氏 ・未来に備えたデータドリブン経営の準備が大切。DX(デジタルトランス  フォーメーション)は世界で日本が遅れている。日本は後進国(30位)。  自社のDXレベルを常に問う必要がある。 ◆カシオのスマート工場への取り組み〜IoT&AIの企画立案から導入まで〜  カシオ計算機㈱ 生産本部 生産技術部技術戦略室アドバイザリーエンジニア   鈴木 隆司 氏: ・AIと人の棲み分け:斬新的な進化にAIは向く。小さな変化の連続はAI化へ。  激変の変化には人間の対応がまだ必要。 ・AI導入のスモールスタート:小さく始めて効果を確認しながら進める。IoT  やAIを目標にしてはダメ。スモールトライは技術構築の進め方。AI企画は,  経営目標とリンク(例:早期立ち上げ安定生産→IoTとAI導入)。  技術チーム+現場+理論:①自分でできる技術チーム ②隣に現場がある   ③理論の指導者をつくる。AIはマウスイヤーの分野。WATCHし続けるのは   困難。  ブラックスBOXにせず自分たちで小さくトライ。人の問題は自動化できない。  人は育てていくしかない。 ◆ICTの力で中小企業を変革する「陣屋コネクト」〜宿泊業での取り組み  事例紹介〜   ㈱陣屋/陣屋コネクト 代表取締役社長 宮﨑 知子 氏: <業種を越えたICT活用の拡がり,意外と多い宿泊業と製造業の共通課題> ・情報は持つだけではなく活用させる文化に。 ・資料作りが終わってから,仕事が始まる(ずっと資料作成=資料中毒!)。 ・マルチタスク化:様々な業務を自分で即座に対応すると人材育成のスピード  が高まる,また意識レベルも向上する。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●TL 9000コーナー TL 9000説明会予告(11月25日) ─────────────────────────────────── 2019年11月25日(月)に恒例のTL 9000説明会を,TIA日本ハブとQMS 委員会の 共催で開催いたします。 今回は,「TL 9000要求事項ハンドブック,TL 9000測定法ハンドブック」 及び,「TL 9000に関するWEB等の情報の見方」を中心に説明を行う予定です。 ISO 9001:2015をベースとした情報通信分野のセクタ規格である TL 9000の最新の内容を知る絶好の機会です。ふるってご参加ください。 内容(予定)   1.TIA日本ハブの紹介   2.TL 9000要求事項の基礎(R6.0/R6.1)   3.TL 9000測定法の基礎(R5.6)   4.TL 9000に関するWEB等の情報の見方, TL 9000認証取得プロセス   5.質疑応答 10月中旬に,CIAJ「えくすぱーと・のれっじ・セミナー」のHPに正式案内を 掲載予定です。 TIA:Telecommunications Industry Association:米国電気通信工業会   米国を本拠とする通信業界のグローバルな団体で,TL 9000品質規格や   通信分野の技術基準の制定,技術研究, 米国政府対応を行なっています。   CIAJとグローバルパートナーシップを結んでいます。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●【連載】知識活用型企業への道    『QMSにおける知的資産運用への取り組み』 ─────────────────────────────────── 前号では無人運転している横浜市の新交通シーサイドラインの逆走・衝突事故 をはじめシステムがうまく機能しなかった例を示し,その脆弱性に目を向けて みました。 そこで今回は,システムの脆弱性がどのようにして生じるのかを,少し考えて みたいと思います。 私たちが馴染んでいるQMS(品質マネジメントシステム)では,さまざまな 業務実行の曖昧さ,人々によるバラツキを軽減するため,行動や判断基準を 明確にし,文書化し,それを基盤にシステムを構築・運用および改善してき ました。 一方,手続きや作業を忠実に実行するマニュアルワーキングと異なり知識創造 型業務では,本質的に活動が曖昧であり,また個々人の資質が大きく影響する ため,必然的に揺らぎやバラツキが出ます。 このような業務は,マニュアル化できない部分に本質があるため,個人の経験 ・知識および技能など,いわゆる力量や知恵が必要であり,マニュアル化とい うよりはコミュニケーションや人材育成することがシステムの基盤となります。 さらに開発などは,過去の経験や知識だけでは対応できない要素を多く含む 業務は,さまざまな情報を収集し,それらを組み合わせ,新たな理解を付与し 知識化する知識循環もシステムの基盤となるでしょう。 実際のところ既存の何らかのシステムには,マニュアルワーキングと知識や 知恵の活用が求められる業務とが混在するため,効果的にそのシステム全体が 機能する基盤要素を認識しておく必要がありそうです。 そこでシステムの基盤要素について,直近の話題である千葉市付近に上陸した 台風15号の被害拡大を例に考えてみたいと思います。 ご存知のように,この台風は記録的瞬間風速を持って上陸し,千葉県を中心に 広範囲にわたり停電を発生させました。過去の経験では電力復旧は概ね2〜3日 間であり,電力会社からの復旧見込みも同じでした。 しかしその期間が過ぎても大規模停電が続き,地域によっては復旧まで数週間 もかかると報道され驚かされました。 なぜなら,千葉県は東京に近く物流も容易ですし,電車も高速道路も概ね動い ておりますから,すぐに復旧するものと誰しもが考えていたからだと思います。 しかし,数日間が過ぎても大規模停電が回復する気配はなく,何かがおかしい と騒ぎ出しました。その後情報が集まるにつれ,送電線や電柱が折れただけで なく大量の倒木が電力網をズタズタにしていたことが判明しました。 さらに,ご存知のように電力が停電することによりポンプが動かず断水し, 道路の信号機は停止するなどライフラインや社会インフラも動きが取れなく なっていたことがわかってきました。 その上,インターネット,携帯電話,公衆回線などの通信網も電力遮断により 機能しなくなり広範囲の情報遮断が起き,被害の状況を行政が十分に把握でき ず初動対応が後手に回ってしまいました。 しかし,災害時への備えがなかったかといえばそうではなく,過去の災害経験 から非常用電源は48時間から72時間に変更され準備が進んでおりますし, 同時に自家発電機も相当数千葉県内に備蓄されていたと報道されていました。 また,「非常災害時における非常通信手段の確保について」(総務省,2016) によれば,防災用無線システム,非常災害時における非常通信手段の確保に など,いくつもバックアップシステムが準備されていることがわかります。 これだけ,さまざまなバックアップが準備されているにも関わらず,うまく 機能しなかった現実をみて,すぐに思い浮かんだのが福島原発の非常用電源が 津波で浸水し原子炉に冷却水を送り込むポンプが機能せず,結果的に歴史的な 大惨事になった例です。 非常用電源を津波にやられるところに設置したことは,そのシステムは発電所 からの送電停止を想定し準備されものであり,何千年に一度の防波堤を超える 津波については視野の外にあり,それとは別のところでは防波堤の高さだけが 議論されてきたため,原発の総合安全システムの基盤要素としての配慮がなか ったようにみています。 このように,個々のシステムの堅牢性だけに目を向けていても,全体システム の基盤要素への配慮が足りなければ何もなりません。個々のシステムが机上で はうまく機能しても,基盤要素の考察と配慮が欠ければ,実際の場面ではうま く機能しないシステムが生まれる可能性を示唆しています。 前述の新交通シーサイドラインの事故例では,配線が断線しただけで事故と なり基本システムの甘さが顕著で,机上でも再現できるいわゆる個別レベルの 問題だったとみえます。 一方,今回の台風の件は,社会インフラの基盤要素である電力網と通信網が 予想を超えて被害を受け,事前に準備してきた行政やさまざまな支援システム が機能する基盤が崩れさり引き起こされたので,システム全体の基盤的要素 をあらためて見直す必要性を感じる次第です。 これらは一般的なリスクマネジメントや危機が起きた後にどうするかを考える クライシスマネジメント以前の課題だとも思います。 さて話を戻しますが,QMSが成立する基盤要素は何なのでしょうか。例えば, 文書化された内容が最新の情報であり,また漏れがないこと。さらに,人々 がそれらを理解でき,確実に行えるだけの知識と力量があるなどが,QMSが 機能するための基盤要素が,例としてすぐに思い浮かびます。 この基盤要素が十分に整っていない状況で,QMSが役に立たないなどと軽々に 言っても意味がありませんし,また知識活用業務はマニュアル化には不向き だと考える方もいますが,知識活用業務を支えるさまざまな活動はマニュアル ワーキングを軸にした基盤活動で支えられており,切り離して考えるわけには いきません。 そこで,知識活動と基盤要素に関連し話題を少し変えて考えてみたいと思い ます。 最近AI(人工知能)の品質保証について,あるメーカの品質推進本部および 国立研究法人 産業技術研究所の二か所を訪問し,それぞれ専門家から実情 と研究の方向について,お話をうかがう機会をいただきました。 ご存知のようにAIが導く結果は,与えるデータの量と質および網羅性により 変化するといわれています。 事前の個人的なAIに関する知識といえば,囲碁・将棋のように勝負が明確に 分かるものは,その勝負結果と打った手のデータを与え続ければ,勝つ パターンを合理的に導くことができ,また精度も上がるものだとみています。 また,勝負が明確なため演繹的な評価が可能です。 一方,最近話題となった就職情報サイト「リクナビ」は,登録した学生の個人 情報をAIで分析し,学生の内定辞退の傾向を分析しサービスするビジネスを 始めました。しかし,学生の同意なしに情報を使った部分があるとして個人 情報保護法など法律上の問題があるとして是正勧告をうけ関心を引きました。 実際のところ大卒・高卒ともに3年以内の離職率が3割を超えると報じられて いる状況では,新人採用に関心が高まることは当然です。 しかし,企業の将来を支える貴重な人材を,AIが何らかの方法で導いた内定 辞退傾向を使い選択するとした,どうなるのでしょうか。 なぜなら,人材採用の本質は内定辞退率の問題ではなく,採用した学生が, 例えば10年後に,その企業にどの程度貢献してくれるかが重要な関心事だから です。 実際には10年たってからレビューするわけにはいかないので,結果が明らかで ある手短な内定辞退というデータを使いAIが導いた内容で選考するとなると おかしな話になります。 学生がその企業の採用を辞退する背景理由に目を向けず,内定辞退対策など 本質でない部分にお金を支払い,活用しようと考える企業体質が,そもそも おかしいのではと疑います。なるほど学生が,そのような企業の内定を辞退 するわけだと思ってしまいます。 人事は優秀な人材を企業に確保する入り口であり,企業の将来に大きな影響を 与える部署ですから,この判断を一部にせよ外部に頼ってしまうとなると, その企業の本質と実態が透けて見えてきます。 会社自身の基盤要素を振り返らず,小手先で処置しようとする人事の方々が いるとすれば,自ら学生に代わりAI判定を受けてみたらいかがでしょうか。 さて事前のAIに関する考えはこの程度のものでした。話を戻しますが,多くの 場合AIが導いた事柄の質は,何らかの客観的評価基準をもって判定できるもの ではなく,従来の品質保証体制のように演繹的に保証できるものではないと 思います。 それゆえ,AIから導き出された結果は,その妥当性を帰納的に考察し,データ の網羅性やインプットデータのノイズを考慮し,調整を繰り返しつつ,妥当性 を常に評価し続けることにあるのだろうと,素人ながら考えた次第です。 今回の訪問で,AIの導いた結果に対する品質保証は,暫定的な目標に対し, その都度何が正しいのかを常に問いかけ評価することであり,評価者の知識や 地頭の良さが必要であるとの指摘が印象に残りました。 また,与えるデータによりAIが導き出した結果が揺らぐため,万が一の場合 でも被害が出ないようなAIシステムの上位に何らかの管理システムを設けて おく必要があるとの指摘も納得いくものでした。 さらに,データ自体にバイアスがかかっており,それをそのまま活用すること により,AIの導いた結果自体にバイアスを内包されてしまい,社会的なバイ アスや偏見を助長させてしまう危険性を危惧しているなど,参考になるお話が 多々ありました。 ご存知のようにAI分野は,画像処理,音声認識,文書処理など,正解率が把握 できるものは,試行錯誤を繰り返すことにより保証できる範囲がある程度 明らかにできるかと思います。 一方,社会や人間系がシステムの基盤要素となる場合,何が正解か容易に判断 できないためAIの導いた結果の評価はむずかしく,AIの品質保証は倫理的側面 も含め今後も研究を重ねることが必要だといえます。 さて,QMSに話を戻しますと,QMSの要求事項(ISO 9001)の「人々」,「組織 の知識」,「認識」および「コミュニケーション」などの項目が文書化だけで なくQMSの基盤要素となるでしょう。 AI分野と似て人々の行動は,コミュニケーションの善し悪しや,知識量,仕事 相手などにより変わりバラツキます。それゆえ,基盤要素を常に認識しQMSで 対応していく必要がありそうです。 マニュアルワーキングだけを基盤要素としたQMSは外部変化にもろく,利用 価値も限定的になります。場合によっては新たな価値創造にブレーキをかけ, 指示がなければ主体的に行動できない指示待ち社員を増産するなど,業務の 固着化と形骸化を促進させる可能性も感じてきました。 それゆえ,知識活用型企業のQMSでは,AI分野と同様にマニュアル化以外のQMS の基盤要素にさらに目を向け,新たな価値抽出に貢献する道具として活用して いきたいものだと考え始めた次第です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●CIAJ事務所移転のお知らせ ─────────────────────────────────── CIAJ事務所は浜松町より日本橋兜町に移転し,以下の住所にて9月17日より業 務を開始しました。 ・移転先:  〒103-0026  東京都中央区日本橋兜町21-7 兜町ユニ・スクエア6階  Tel.03-5962-3450(代表)  Fax.03-5962-3455 ・業務開始日  2019年9月17日(火) ・アクセス  東京メトロ日比谷線・東西線 茅場町駅 徒歩4分  東京メトロ銀座線,都営浅草線 日本橋駅 徒歩7分  JR・東京メトロ日比谷線 八丁堀駅 徒歩7分  JR 東京駅八重洲口 徒歩15分 ・関連情報(CIAJ HP) https://clicktime.symantec.com/3RmjAMZohyYyG4KFC4BFjXM7Vc?u=https%3A%2F%2Fwww.ciaj.or.jp%2Fnews%2Ftopics%2Ftopics_past_issue%2Ftopics2019%2F4781.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記 ─────────────────────────────────── 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催まで1年を切ったことで, テレビ等の報道においても話題に上がることが多くなり,なんとなく 皆さんの気持ちも盛り上がっていることでしょう。 過去に東京オリンピックが開催されたのが,1964年(昭和39年)という ことで,55年も前なので記憶にある方の方が少ないと思います。 当時のテレビといえば,白黒で小さいブラウン管でしたが, 最近のテレビは,大型で薄型になっています。 または,スマホの画面でテレビの映像を見る方もいると思います。 テレビ一つを取っても,半世紀の間に技術の進歩は飛躍的なものがあり ますが,テレビの映像を見るという本質部分は変わっていません。 QMSの本質は変わることはありませんが,そのやり方については変わって きています。 人生100年と言われている昨今,50年後の世界ではどんな技術が発展して いるのか想像するのも楽しみではないでしょうか。 QMSにおいても,AI等の導入により,大幅にやり方が変わるかも しれません。 最後までお読みいただき,ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」── * 配信追加は下記にお知らせください。  mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp * 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会     QMS委員会メルマガ編集部  https://clicktime.symantec.com/3iPASoJ1ydtu2vnGGtZ3HS7Vc?u=http%3A%2F%2Fwww.ciaj.or.jp%2Ftop.html  http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ) * 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(勝田 秀樹) * 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!  qmsmelg@ciaj.or.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C)2004-2019 CIAJ QMS committee All rights reserved.