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━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会 「今年度は『柔軟なQMSへのシフト』をテーマにQMSを探求します」 2018年7月31日発行 第86号 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━ ≪ 第86号 目次 ≫ ・はじめに ・QMS委員会総会/2018年度体制について ・QKMアクティブラーニング(第12回)予告(8月31日) 『あなたの組織のMSマニュアルを大きく変える』 ・QMS委員会総会/特別講演会報告(6月29日) 『過酷な環境下でのマネジメント体験』 〜南極観測隊参加で得られる事〜 ・QMSサロン(第25回)報告(7月12日) 『企業活動の総合パフォーマンスの向上を考える』 〜トータル的なマネジメントシステムとは何か〜 ・TL 9000コーナー TL 9000説明会報告(7月2日) ・【連載】知識活用型企業への道 『QMSにおける知的資産運用への取り組み』 ・編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●はじめに ─────────────────────────────────── 2018年度 QMS委員会委員長を拝命しました山本 博行です。 就任にあたり今年度のQMS委員会の活動についてお話しいたします。 まず,今年度の運営方針は「QMSの探求」,活動テーマは「柔軟なQMS へのシフト」といたしました。 これは2015年度版のISO 9001が,あらゆる環境やその変化に対応することを 前提としていることを受けています。昨今,気象や環境においては「これま での経験が適用されない」といった過去になかったものが常態化するような 状況があり,我々のビジネスの領域においても同様に,AI(人工知能)や デジタルソリューションなどへの対応が必要になってきていることを鑑みて のものです。 これらの対応には,組織のマネジメントの高度化も必要ですが,組織が変化 への対応力を備えておくことや,組織の活動に合った柔軟な対応をすること が重要となります。これには,かねてよりQMS委員会が提唱している知識 の活用が不可欠と考えます。具体的には「組織の知識」がどうあるべきかな どについても考えてみたいと思います。 今年度はそんなこんなを含めた研究活動でQMSの探求をしていくとともに 各イベント企画には,この方針を加味して進めてまいります。 また,会員企業の声として各企業の課題への対応ができないかというご要望 があります。委員長としては,QKMアクティブラーニングのワークショッ プ形式という特性をいかして,会員企業の課題解決の場として役立ててまい ります。これぞというテーマの時には,是非ご参加いただき課題を共有し, いっしょに解決をしていきませんか。 その他にも会員企業の皆様に役立つ企画を提供してまいりますので,乞うご 期待ください。 それでは,メルマガ86号をお届けいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMS委員会総会/2018年度体制について ─────────────────────────────────── 6月29日の「2017年度QMS委員会総会」でご承認いただきました,2018年度の 体制は以下の通りです。よろしくお願いいたします。 委員長 沖電気工業 山本 博行 副委員長 日本電気 川津 一郎(ELE技術担当) 運営委員 沖電気工業 青柳 礼子 日本電気 北村 弘 特別委員 (元)ソニー 山本 正 フェロー (元)日立製作所 相澤 滋(TC176国内委員会委員) 会計監事 日立製作所 青木 誠(新任)(兼)運営委員 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QKMアクティブラーニング(第12回)予告(8月31日) 『あなたの組織のMSマニュアルを大きく変える』 ─────────────────────────────────── QMS委員会では,様々な形で会員企業の皆様に学びの場を提供していますが, QKMアクティブラーニングでは,日常業務やQMSについてベーシックなところか ら理解を深めて,現場感覚をもって活躍ができる人財を育成することを意図し て,ワークショップと会員間の意見交換も交えて学習していく参加型の学びの 場を提供しています。 2018年度は,来月(開催日 2018年8月31日 時間 14:00〜17:00)に第12回の 開催を予定しています。講師である山上様は,ファシリテータとしての第一人 者であり,当たり前に運用されている部分にスポットをあて,考察し,モデル 化などをする中で,認識や気付きを容易化するための独特のモデリング質問ツ ールも使い,“ハウツー”ではない自然体な対応を体感していくワークを少人 数で行う形で進めていきます。 「2017年度QMS委員会総会」での意見交換や総会アンケートで,マネジメントと は,どう考えどう行動するのか?自社の事業プロセスにフィットするQMSにする ために,2015年版の意図を正しく理解する手助けをして欲しいなどの意見が寄 せられました。 QKMアクティブラーニングは,現場の課題へのマネジメントにも役立つ,柔軟か つ多様なQMSに向けた見方,考え方ができ,最終的には行動を変えられるような 学びの場の提供も可能な内容であることから,今回は,『あなたの組織のMSマ ニュアルを大きく変える』というタイトルで,組織のMSマニュアルのあり方と して,QMSを担っている,私達が,実はQMS媒体そのものという視点で,改めて 理解を深めていきたいと思っています。 組織のMSマニュアルが,抽象的な表現や作業手順としての可視化が主体の記述 に留まっていないか。その様なことを踏まえ,「誰のため」「何のため」を軸 にQMS要素をどのように描写し,組織のMSマニュアルに組み見込んでいくのが 良いのかを一緒に考えていきたいと思います。 2015年版へのQMSの移行後の振り返りとして,改めて,組織のMSマニュアルの あり方を学ぶことで新たな発見をしてみては如何ですか。現場力をつけたい会 員企業の皆様の多数のご参加をお待ち申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMS委員会総会/特別講演会報告 『過酷な環境下でのマネジメント体験』 〜南極観測隊参加で得られる事〜 ─────────────────────────────────── 6月29日に開催しました総会特別講演会では,今年度の運営方針「QMSの探求」 へのヒントを得る機会として,南極観測隊として越冬経験のある釘光信一郎様 をお招きし,南極という特異な現場での問題に対応するためのリーダーシップ, コミュニケーション等の体験談をお話いただきました。 テーマ:「過酷な環境下でのマネジメント体験」 〜南極観測隊参加で得られる事〜 講師:釘光信一郎様 NECネッツエスアイ株式会社 社会インフラソリューション事業本部 電波・宇宙システム事業部 電波・宇宙統括マネージャー (1)南極観測と現地の業務 南極は,地球・生命・環境・宇宙に関する絶好の観測地です。その理由は,人 工的なノイズが少ない上に,清浄であるという希少な地域だからです。 観測隊は,越冬隊と夏隊という2つのチームから構成されます。越冬隊は別名 「一泊」,夏隊は別名「日帰り」というそうですが,この理由は後半で説明し ます。 隊員の編成は,気象・地圏・宙空・生物などを担当する観測部門と,通信・建 設・医療・調理などを担当する設営部門から構成されます。 このように,様々な観測内容を様々な専門家が集結して活動することから, 南極観測は「壮大な国家プロジェクト」という位置づけになっているのです。 この壮大な国家プロジェクトは,中期計画に基づいて毎年決められたミッショ ンを遂行していきます。そのため,前年の作業の遅れは翌年の作業に影響する ので,各ミッションの工程計画の立案は非常に重要になります。ちなみに, NECネッツエスアイの観測隊員は,衛星受信システムのプロジェクトマネー ジャーとしてミッションの遂行責任を担っています。 そして,これらのミッションの計画段階で非常に重要となるのが,「想定と異 なった場合の対応策の明確化」です。 計画段階でのリスクの洗い出しとリスクを盛り込んだ作業計画が,ミッション の成功を大きく左右しますが,釘光様はリスクへの考え方として,以下の3点 をポイントとして説明されました。 1)リスクの想定は網羅性が大事 2)しかし,全てのリスクを想定できないので,諦めることも重要 …優先度を予め決めておき,「あきらめポイント」設定する 3)また,リスク対策は,工期とリソースに対して妥当であることも必要 このように計画段階でリスク対策を明確化しても,いざ南極に到着してみる と,計画の変更は日常茶飯事で,リスク管理の重要性を再認識する日々の連 続だったそうです。この辺りは,南極観測でも私達の日常業務でもあまり変 わりないみたいですね。 釘光様は,リスクへの対応で重要なこととして以下のように語っていました。 「想定外の事態が起きた時,事態に対応する・しないという1か0かで線を引く ことも重要だが,皆で知恵を出し合って出来るところまで対応する,即ち想 定外のことが起きたらリスクを認識しつつどこ迄できるのかを考え,実行す ることも重要です。」 このように、皆で知恵を出し合うためにも、プロジェクトメンバーでのコミュ ニケーションをとっておくことが重要。夏期間(約60日間)という限られた 時間,限られた人員(新しい人を追加できない),想定外の気候など予定通り いかないことばかりとなっています。これを解決するためにも,リスク管理と 人間同士のコミュニケーションが重要になってきます。 (2)南極の紹介 後半は,物が一瞬で凍る様子,見ているだけで楽しくなる南極の動物達,激し く輝きながら形を変えるオーロラ,いつまでも日が沈まない白夜などを,迫力 ある写真・映像・サウンドで楽しみました。 また,過酷な環境ということで,ブリザードが来ているときの話しもありまし た。晴れの時には問題なく外を移動できるのですが,一旦ブリザードが来ると 自分の手すら見えなくなるようで,外はわずかな距離も移動することができな くなるとのことでした。実際、外を歩いてみたときは、全く違った方向に歩く こととなり,直ぐに引き返して事なきを得たようです。このように、過酷な環 境で作業は,一歩間違えると命の危険に関わるようです。 ところで,前半で越冬隊は「一泊」,夏隊は「日帰り」と説明しましたが,皆 様はこの理由をお判りになったでしょうか? 正解は,太陽に関係があります。南極では夏は何日も日が沈まない白夜,冬は 日が昇らない極夜の状態が続きます。そのため,極夜の間滞在して夏に日本へ 帰る越冬隊は南極に「一泊」,日が沈まない夏だけ滞在した夏隊は「日帰り」 したことになるそうです。 当日は午前中に気象庁から梅雨明けが宣言されましたが,たっぷり2時間,私 たちの日常とはかけ離れた南極の様子を知ることができました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMSサロン(第25回)報告(7月12日) 『企業活動の総合パフォーマンスの向上を考える』 〜トータル的なマネジメントシステムとは何か〜 ─────────────────────────────────── 7月12日に第25回「QMSサロン」を開催しました。 山本正 QMS委員会特別委員(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え, 上記テーマについて話し合いました。 今回のQMSサロンでは,2015年版の改訂で,個々のプロセスパフォーマンスの 向上とともに,QMS全体のパフォーマンス向上を目指す方向性が示されたとの お話しとともに,企業全体のパフォーマンスを向上させるための,トータル マネジメントの基盤的要素について考えるテーマを三部構成で行われました。 第一部として,活動全体を支える要素についてお話しがありました。 まず,働くことに対する歴史的流れで,作業の標準化&分業,集団内の規範, モチベーションについて説明があり,人はモチベーションがないと働かない とのことでした。 モチベーションには,自律性・他律性があること,働き方の様相の変化があり, マニュアル・ワーカー,ノンマニュアル・ワーカーに分かれるとのの説明が ありました。 マニュアル・ワーカー(工程作業者など); 手順を守ることが大切になるので,他律的,情報による行動,訓練が中心。 ノンマニュアル・ワーカー(設計・開発者など); 知識を手続き化できないので,自律的,知識による行動,学習が中心。 マニュアル・ワーカーでも,技量の発揮などは,ノンマニュアル・ワーカーの 部分も存在し,ノンマニュアル・ワーカーも,7割はマニュアル・ワーカーの 部分(図面の書き方,記号を決めるなど)があるということでした。 とても理解できる概念でした。 働き方の違いをトリガーにして,何が組織のパフォーマンスを上げているのか とのお話しになりました。 以下のような見えない要素が加味されて会社の中で動いているということでした。 データ,情報,知識,知恵 + 教育・訓練,リテラシー,学習能力,思考力,探求力,問題認知能力,解決能力 これは,リーダーを変えても変わらない,手順も同じ,設備も同じ,しかし, 結果が異なる。この現実は,上記の通り,「データ,情報,知識,知恵」だけで はなく,組織の能力,個人の能力が加わってはじめてパフォーマンスを上げる ことを示唆しているようでした。 ここで,SECIモデルの説明があり,知識獲得循環(知識スパイラル)の簡単な お話しがありました。 SECIモデルだけでは,知識を活用した企業としてパフォーマンスはあがらない ので,データから知恵への変換モデル(DIKWピラミッド)にて,知恵の形成に ついて学びました。 DIKWピラミッドは,今回初めて知りました。 簡単に説明しますと,下記の動きでピラミッドを下から上へ登っていきます。 ・Data(データ)に「誰,どこ,何,いつ」を入れると情報になる。 ・Information(情報)に「どのように」を入れると知識になる。 ・Knowledge(知識)に「なぜ」を入れると知恵になる。 ・Wisdom(知恵)とKnowledge(知識)は,個人の暗黙知になる。 Data(データ)の状態では,事実を映しているだけですが,Wisdom(知恵)に なると,創造という領域に入ってくるという考えが良くわかる概念でした。 第二部では,パフォーマンス向上のための知識活用について意見が交わされ ました。 まず,パフォーマンス向上の行為として下記を上げ,これらの行為の基盤は, 知識であるという仮説を立てました。 ・仕事への向き合い方 ・情報・知識を扱う技術 ・問題を認知する能力 ・改善,改良など問題解決能力 ・評価能力 ・フィードバック能力 特に,参加者の中で意見が交わされた要素は,以下の2つでした。 ・問題を認知する能力; 問題として認知できるかどうか,村社会ではおかしくても疑問を持たない, 認知とは認識して理解すること知覚として行動に結びつけることという 説明と意見がありました。 ・フィードバック能力; システムの議論では,どこにフィードバックするかが大事であり,フィード バックの掛け方の違いで,何回も繰り返すことにより,大きな差が出るとの 説明がありました。 これについては,QMS事務局業務を担う参加者から,この能力がとても大事で 果たしで自分は出来ていたのかと考えさせられるとの意見がありました。 ここでの総括として,QMSを有効に機能させるには,認知能力が必要であること, QMSはフィードバックループであることの説明がありました。 また,情報を使う技術(クリティカルシンキング)として, 1)情報をふるい分ける技術 2)情報をうのみにせず,良く吟味する技術 3)筋道を考える技術 これらがあり,特に2)に関しては,ノイズを情報だと思っている人がいるが, リジェクションする必要があるということと,情報は価値観でフィルタリング されるということを理解しました。情報を発信する側は自分の価値観を乗せる ので,これを取り除いておかないと危ない(裏にある気持ち)とのことでした。 第三部では,「知識に向き合う」がテーマでした。 ここでは,知識による行動のための循環として, 収集(Collection)→分析(Analysis)→広報(Dissemination)→実行(Action) を学びました。 知識への行為(収集); 知識を収集するにも,知識がなければできない。 知識への行為(分析); 切り分ける。表面下の世界(下のレイヤー)に目を向ける。 QMSでいうと,その中で起きる表層的な出来事に対応するのではなく, そのようなことが起きる構造(複合的原因)に目を向けなければなら ないということを言っている。 知識を広める(広報); 知識普及の3つの問題がある 1.知識をだれに伝えるか 文化的距離感の違いを意識する 2.知識の伝搬,普及の過程 知識にフィルターをかける存在が必要(知識の仲介者) 3.増え続ける情報を,どのように扱うのか 対面対話は,情報を伝搬するうえで非常に重要 知識を使う(実行); 知識は単独で出来るものはない。 人の知識を使いまわして,知識を使いまわして成長する。 皆が有能にならないといけない。 以上のまとめとして,総合的パフォーマンスを向上させるには, ・プロセス改善とともに,関連知識をどのように活用するかが総合パフォー マンス向上を図る場合は重要である。 ・総合的パフォーマンスは,単なるプロセスパフォーマンスの集まりでなく, 知識という媒介を通じ調和された結果である。 ・知識獲得は,仕事に向き合う姿勢,情報を扱う技術,問題認知能力,評価 能力など,さまざまな要素が含めたものとなる。 とのお話しがありました。 参加者からは,以下のような感想が上げられました。 ・知識としてこんなに深く考えたことがなかった。 ・対面対話の重要さを知ることが出来た。 ・QMSにおいて,知識の伝搬・普及の仲介者にならないという自覚ができた。 ・もう一度復習して,自分の知識として獲得して関係者に広めていきたい。 ・知識を使いまわすという観点では,自分が何かを表現するときに,使える 表現がないかなど本を読みながら見ている。プロファイリングする。 ・忘れていたことを思い出させてもらった。 ・マニュアル・ワーカー,ノンマニュアル・ワーカーがいることを再認識した。 ・パフォーマンス向上のための知識活用を自分の組織でしっかりやらないと いけない。分かりやすくやっていかないといけないと考えさせられた。 ・QMSの問題を仲介者として認知できているのか,パフォーマンス向上のための フィードバックのかけ方が良いのか,戻す場所が良いのか考えさせられた。 ・江戸時代が続くと思っている人(構築したQMSを変わらず守る)に,変わら ないといけないことをどう伝えていくかを考えさせられる。 ・チェックリストを作ることが知識の継承だと思っていた。知識の伝え方を どうするか,パフォーマンスをどう評価するか考えたい。 ・問題を認識する能力,パフォーマンスなど言われているがその辺の認知が 出来ていない。 ・現場では情報は持っていて分析し情報にはなっているが認知までは至って いないのが現状だと思った。 ・認知が次のアクションに結びつく。 今回は,企業活動の総合パフォーマンスの向上を考えるというテーマであった ことで,どうしたらパフォーマンス向上につながるか,知識の循環の観点から 参加者の活発な意見交換がありました。 毎回メルマガで,内容のダイジェストをお伝えしていますが,参加するから こそ味わえる素晴らしさをお伝えできないのが残念です。 QMSを軸に置いたサロンですが,事業プロセス全体を考えた幅広い情報を得る ことができる特別な場です。 参加者の中には,QMSサロンに参加して,自分が進化していることを実感する との感想をお持ちの方もいます。 一度参加いただければ,QMSサロンの良さをお分かりいただけるでしょう。 是非,メルマガ読者の皆様にも,“場に参加するからこそ腑に落ちる” 感覚を直接味わい,自身の知識として持ち帰っていたがきたいです。 次回,第26回は,2019年2月に開催予定です。 QMSサロンは,自身の勉強目的のみならず,会員間コミュニケーション, リレーションを築くことにも最適な場です。 新たな参加者を大歓迎します。 皆様のご参加をお待ちしております。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●TL 9000コーナー TL 9000説明会報告(7月2日) ─────────────────────────────────── 恒例になりました「TL 9000 説明会」を, 7月2日にクエストフォーラム日本 ハブ様とCIAJ QMS委員会で共同開催致しました。 当日は,13社40名の参加があり,QMS委員会内部に留まらず,CIAJ会員とクエス トフォーラム日本ハブ会員から幅広く参加がありました。初参加の方が22名と 過半数で,国内の電気通信業界関係各位に,TL 9000 をご理解戴く機会となりま した。 セミナー内容 1. クエストフォーラム日本ハブの紹介 2.TL 9000要求事項の基礎(R6.0) 3.TL 9000測定法の基礎(R5.5) 4.TL 9000に関するWEB等の情報の見方, TL 9000認証取得プロセス 5.質疑応答 講師:川津一郎氏:クエストフォーラム承認TL 9000トレーニングコース修了 小林 真一氏,吉崎 久博 氏: クエストフォーラム公認研修機関(株)テクノファ講師 今回のアンケートの結果からは, 「TL 9000とISO 9001の関係性が分かった」 「測定法の仕組みが分かった」「役立つ情報の得方が分かった」等 好評を博し 「今後も継続して欲しい。」の要望がありました。 次回開催は, 2018年下期を予定しています。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●【連載】知識活用型企業への道 『QMSにおける知的資産運用への取り組み』 ─────────────────────────────────── 最近開催されたサッカーワールドカップロシア大会(Wカップ)では,日本も 決勝トーナメントに進出しました。しかし,ベスト8をかけたベルギー戦では 最後に逆転負けし,残念な結果となったことはご存じのとおりです。 この最後のゲームは未明の午前3時からの放映でしたが,なんと平均視聴率が 約31%,瞬間最高視聴率が午前4時ごろ約43%であったと報じられ,その関心 の高さがわかります。 どれほど多くの皆さんが寝不足になったか容易に想像できます。 ご存知の通り,Wカップ前の日本チームは極めて不調で,試合直前に監督が 電撃解任されコーチが新監督に就任しました。しかし,その後の親善試合でも 勝利がなく,まったく盛り上がりに欠けた状態での出場でした。 しかし,大会が始まり第1戦で勝利すると国内の雰囲気は一変し,第2戦の 引き分けにより決勝トーナメントへの進出が見え始めると,ご存知のように 国内は大変な盛り上がりになりました。 また,決勝トーナメント進出が決まる第3戦ではゲームは,負けていましたが イエローカードの枚数差で決勝トーナメントに進めるかもしれない状況になり ました。 ここで,監督は積極的な試合を避ける指示を出し,試合は負けたものの, 結果的に次の決勝トーナメントへの切符を手に入れました。 その采配には賛否両論の議論が沸き上がりましたが,なんといっても決勝 トーナメントに進出できたので,さらに関心が高まりました。 このような展開のWカップでしたが,なぜあれほど不振であった日本チームが 本番で急に覚醒したのか不思議です。報道などの情報を参考に考えてみたいと 思います。 今回の好成績を導いた要因として言われているのが,新監督になってから選手 同士のコミュニケーションが良くなったという主張です。選手同士が積極的に 意見交換をはじめたといわれています。 もともとこのクラスの選手は技術的には最高レベルですから,個の能力を チーム全体の能力としてうまく引き出せるかが勝敗を分けることは,容易に 想像できます。 元コーチの新監督は,本番までに体制を再整備する時間はありませんから, 必然的に選手の皆さんに任せる部分が多くなったことは推察できます。 それゆえ,現場に“任せるリーダーシップ”を結果的に選択せざるを得な かったとも言えます。 サッカーはチームプレーをしなければ得点がとれません。選手同士が現場で 瞬時に状況を判断し,相互にコミュニケーションしながら連携プレーを しなければ得点の機会は,ほとんどありません。 また,プレー中は言語によるコミュニケーションをする余裕はあまりないので, ジェスチャや仕草または雰囲気で意思疎通する,いわゆる非言語コミュニ ケーションを選手同士ができるかどうかが連携プレーができるかどうかの 重要な要素となります。 非言語コミュニケーションが成立するためには,選手同士の信頼感とともに, ゲーム全体の流れに対するゲーム感などが一致している必要もあります。 そのためには,チーム全体が共有する何らかの行動基盤が,あらかじめチーム に形成されていることが求められます。 日本の場合は,なにかと個人プレーをしたがる選手がいる海外チームと違い, クレバーなチームプレーに勝利の可能性を見出す選択をしたわけです。 それゆえ,新監督になったことをきっかけに,プレーイメージを再度吟味し, 選手同士もコミュニケーションしたことが,良い結果を導いたとように推察 できます。 このように見ますと,今回のWカップの日本チームはコミュニケーションが 事前にうまく取れていたようで,新監督は概ね任せるリーダーシップでした。 しかし,決勝トーナメントへの進出をかけた予選最後の試合だけは,後日批判 が出ることを覚悟したうえで,試合の最後に“待ち”という統率のリーダー シップを発揮したといえます。勇気がいることです。 攻めるにしても守るにしても,プレイヤーとリーダー,プレイヤー同士の コミュニケーションが重要な役割を果たしたと考えます。 ここでようやく本題に入りますが,“コミュニケーション”とは何かということ です。 “コミュニケーション”は,通信,(情報)伝達,交流,意思疎通と訳されます が,その意味は「社会生活を営む人間の間に行われる知覚,感情,思考の伝達, 言語・文字その他の感覚に訴える各種のものを媒介する」(広辞苑)と紹介され ています。 愛層が良いとか,人当たりが良いとかいった表層的なコミュニケーションでは ないことを,最初にお断りさせてもらいます。 動物も鳴き声や仕草,さらには匂いなどでコミュニケーションしますが,人間 間のコミュニケーションは情動的な共感の醸成や相手の行動を制御することも 含まれていると言われています。 最近メールで,絵文字(ピクトグラム,アイコンなども含む)を文書中に挿入 する文化が日本から世界中に広がっていますが,これは文字だけでは伝える ことが難しい感情面までも伝えたいと思う,人間が持つコミュニケーション への原始的欲求が背景にあるように見えます。 (コミュニケーションとは,動物として身体的に弱者である人間が共同する ことにより生き延び,繁栄するために進化過程で獲得した人間の本質的能力 だと見えますが,紙面の関係で詳細の言及を避けます。) さて,英語“communication”の語源は,ラテン語の“共通の,交わり,通行 可能とする”などの言葉が結合したものと説明されています。 単なる情報伝達と異なりコミュニケーションには,伝達したい情報とともに, それに付随した心の交わり・交流などにより,仲間的としての存在を確認する 手段のように思えます。 また直感的に,組織やチーム,社会やコミュニティでは情動的なものも含めた 暗黙的な知識が,コミュニケーションをとおし共有されていることが必要だと 感じます。 それゆえ,あえて情報共有ではなく“知識”の共有という概念を使いました。 一般的に知識といえば学校で学習する普遍的で明示的な知識を思い浮かべます が,実際には,コミュニケーションをとおし明示化できない暗黙的な知識をも 含めた知識交流による学習もあるわけです。そして,刺激を相互に与えながら 自己実現に向け励起するわけです。 知識創造の観点からも暗黙的な知識の存在が重要視されている時代ですから, 企業内でもコミュニケーションの在り方をしっかりと考えていく必要があり そうです。 換言すれば,企業活動とは共通の感情と共通の知識基盤の上で,専門的な固有 の知識が交流することによりアウトプットを産出する活動だと思えます。 そのように考えれば,企業活動において各プロセス,組織,階層および社外, お客様とのコミュニケーションが非常に重要な役割を担っていると主張しても おかしくないわけです。 この主張は,形骸化した“お客様第一”とか社内コミュニケーションが重要だ とし社内報をばらまくなどの表層的な行為とは次元が異なることを,まずは 認識していただきたいと思います。 コミュニケーションの本質とは,情報伝達とともに心情的なものをも含めた 知識の循環過程の中で生じるさまざまな作用も考慮したもののであり,その 中で生じるものにコミュニケーションの本質があると感じています。 それゆえ,企業の目的にそったコミュニケーションを確立するための伝える 技術を注意深く考えなければなりません。 伝える技術の入り口は,まず“知識をだれに伝えたいのか”,“だれと交流・共 有したいのか”という対象が明確になっていなければなりません。 なぜなら,相手の立場や状況によって,その人の背景にある情緒的および 知識基盤が異なるからです。 例えば,トップマネジメントに伝えたいのか,新入社員に伝えたいのか。 または,お客様に伝えたいのか,取引先に伝えたいのかにより,それにあった コミュニケーションへの技術と工夫が必要となるからです。 しかし,さまざまな背景を持つ相手とコミュニケーションをうまく行うには, それなりの知識と経験が必要であり,だれしもができるわけではありません。 そこで,コミュニケーションを通し知識を拡散(dissemination)し,交流・ 普及させるには,“知識の仲介者”が必要だという主張があります。 (参考;知識の社会史2,ピーター・バーク,新曜社,2015) この知識の仲介者の役は,経験や知識をすでに持っている組織のマネジメント の皆さんが行うことが適切だと考えています。 なぜなら,知識を仲介する行為自体がリーダーシップを確立することであり, マネジメントの基盤を提供してくれるものであると考えるからです。 もう皆さんはお気づきだと思いますが,リーダーシップとコミュニケーション 能力は裏腹の関係にあり,またコミュニケーション能力は暗黙的な知識も含め た知識循環能力に関連すると理解するものです。 特に,知識活用型企業におけるリーダーシップとは,役職などの権威による リーダーシップではなく,コミュニケーションによるリーダーシップが必要 だと思います。 さて,話がながくなりました。あまり期待していなかった今回のWカップも 国内は大変盛り上がり最後にフランスがクロアチアを破り,20年ぶりに優勝 しました。 そのフランスチームの監督は,グループを危険にする選手は呼ばないと宣言し, 実力や実績があっても招集しなかった一方で,失敗した選手をメディアから 守り,信頼と規律を得たと報道されていました。(読売新聞2018/07/17) この報道を見て,あらためてリーダーシップとチームワークの重要さを確認 するともに,チームワークの表面下にあるコミュニケーションに裏付けされた リーダーシップの重要性を再確認した次第です。 皆さんは,どのように思われるのでしょうか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記 ─────────────────────────────────── 6月12日に文部科学省から科学技術白書が発表されました。この白書によれば 日本の科学技術について日本の基盤的な力が急激に弱まってきているという 内容となっています。 日本の研究者による論文数は,2004年の6万8千本をピークに2015年には6万2千 本で主要国で減少しているのは日本のみで,中国は約5倍増の24万7千本。米国 は23%増の27万2千本となった。 また,研究の影響力を示す論文の引用回数は,上位1割に入る論文数で,日本は 2003〜2005年の5.5%(世界4位)から2013〜2015年は3.1%(世界9位)と後退 している。 今回の白書はSDGs(持続可能な開発目標)と科学技術イノベーションの推進 という特集で,基盤的な力の強化に向けて様々な考察がされているが,研究へ の十分な投資や,若手研究者が腰をすえて研究に取り組める「環境の整備」を 求めており,人材,知,資金が結集する産学官協働の「場」でもある好循環の システムの構築を強調されています。みなさんも読まれてはいかがですか。 平成30年版 科学技術白書 https://clicktime.symantec.com/a/1/dv-lHCil23J0cysIQkKe0TIe841DFPMVZzcAjZ6E2Nc=?d=Y7DOruCZz7nEFBNW6V3mPo2xJKrNgQTakNzaGItdnNeL9k0wYzNTkbqgi6JN_eXLpTr9lXmzzhobunXBh3nztwo61X2xKZTQy_vJugOoY2yEFkDgwMuVbSXtTPIsVOXQYXwmB3C291Rs_Tkor5zegZDnFaK5E8Fx21_em77EvU7C6f8eapnH94V-8NW3NHGmjzClCWc6RxdtPIkQufjhMkSuVClkOjUdw_R6Kly7ApXPWdO2TPFGo-egDpzy3yLm-YljMJXw2MuG7WXWt43JotelnUB1UO3pMcOacrQX5dJ1tDzikzW5Px_5I8RwQQH5M-FDxHsrARjPPiABZgktqc_H0R4x_8gs0qiA5tGRG3jKvvKbPm9XzUMxJ3yysBHQL-5Mc6tCnuRtdlNSFzyaqWSVzb0MgPtbAAi54PJrii5kQ37WbvWuPsTWjDdkrWIfCYKeHCZNXQ0%3D&u=http%3A%2F%2Fwww.mext.go.jp%2Fb_menu%2Fhakusho%2Fhtml%2Fhpaa201801%2F1398098.htm ところで,クロールのバタ足は速さと無関係!?という論文が話題になっている のをご存知ですか? これは,筑波大学の高木秀樹教授の論文で,「あるところまでは早く打つ足 (バタ足)が推進力に貢献しているが,ある程度を超えてくると抵抗ばかり 大きくなって速度の向上につながらない」というものです,実験では秒速1.3m を境にこの傾向がみられたようです。 もっとも,水泳選手のように足の付け根から行うしなやかなバタ足ではこのよ うなことにはならず,膝を曲げてバタバタするバタ足の場合であります。 この季節,水泳のタイム向上に頑張っているお子様がいたら,ちょっとバタ足 の具合を見てあげてみてはいかがですか? 最後までお読みいただき,ありがとうございました。 次回の発行は9月末を予定しております。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」── * 配信追加は下記にお知らせください。 mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp * 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会 QMS委員会メルマガ編集部 https://clicktime.symantec.com/a/1/TToiDMDpsBlf9z3aMmGhvwuwoKazYnCCQ7OCcx9Ohpo=?d=Y7DOruCZz7nEFBNW6V3mPo2xJKrNgQTakNzaGItdnNeL9k0wYzNTkbqgi6JN_eXLpTr9lXmzzhobunXBh3nztwo61X2xKZTQy_vJugOoY2yEFkDgwMuVbSXtTPIsVOXQYXwmB3C291Rs_Tkor5zegZDnFaK5E8Fx21_em77EvU7C6f8eapnH94V-8NW3NHGmjzClCWc6RxdtPIkQufjhMkSuVClkOjUdw_R6Kly7ApXPWdO2TPFGo-egDpzy3yLm-YljMJXw2MuG7WXWt43JotelnUB1UO3pMcOacrQX5dJ1tDzikzW5Px_5I8RwQQH5M-FDxHsrARjPPiABZgktqc_H0R4x_8gs0qiA5tGRG3jKvvKbPm9XzUMxJ3yysBHQL-5Mc6tCnuRtdlNSFzyaqWSVzb0MgPtbAAi54PJrii5kQ37WbvWuPsTWjDdkrWIfCYKeHCZNXQ0%3D&u=http%3A%2F%2Fwww.ciaj.or.jp%2Ftop.html http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ) * 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(勝田 秀樹) * 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