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   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

  「勉強の秋到来! 一緒にQMSを学んでみませんか」

                       2016年9月30日発行 第75号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第75号 目次 ≫

 ・はじめに

 ・今後のQKMアクティブラーニングのご案内予告
   〜基礎的な学びへのチャレンジで実践力を高めてみませんか!?〜

 ・ISO 9001関連の最新動向

 ・TL 9000コーナー「TL 9000 セミナーのご案内」

 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」

 ・編集後記

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●はじめに
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今年は,台風1号が7月の発生と遅かったのですが,その後,次々と台風が発生
して,今週末からは台風18号の影響がありそうです。9月は秋雨前線の影響も
あって,東京都心の日照時間は例年の3分の1で,あまり太陽が見られない月と
なりました。10月は秋らしい爽やかな日が多いことを期待したいですね。

早いもので,ISO 9001:2015は発行から1年が経過し,移行期間はあと2年と
なりました。今のところ,国内では500を超える組織が2015年版で認証を取得
しているようですが,規格の意図でもあるより身の丈にあったQMSをめざして
いただきたいと思っております。

QMS委員会では,各種イベントを秋から冬にかけて企画しておりますので,
ご活用いただければ幸いです。

それでは,メルマガ75号をお届けいたします。


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●今後のQKMアクティブラーニングのご案内予告
    〜基礎的な学びへのチャレンジで実践力を高めてみませんか!?〜
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QMS委員会では,昨年立ち上げたQKMアクティブラーニングの会員の皆様へ
の学びの場としての定着・浸透を今年度の大きな取り組みに掲げております。

毎回のQKMアクティブラーニングでは,実施結果や受講者アンケートの分析や
意見交換を行いながら,講師とのミーティングも交えて,企画や内容の見直し
を行ってまいりました。今後の予定については以下の通りとなっております。

<今後の予定>
・2016年11月29日(火) QKMアクティブラーニング(第五弾)
  講師: (株)イノベイション 山上裕司様
  テーマ:『組織の成長に貢献する潜在原因分析アプローチ』

・2017年 1月24日(火)〜25日(水) QKMアクティブラーニング(第六弾)
  講師: 横浜国立大学大学院 吉川武男様
  テーマ:『バランススコアカード(BSC)の基礎から構築まで』
       (定員制2日間コース)

QKMアクティブラーニングでは,様々な基礎的な学びにチャレンジしていくこ
とで,実践的で柔軟な思考ができるようになることを目指しています。

山上講師からは,現場・現実・現象を重視したなかでモデリングを行うことを
山上流のワークショップを通じた形のアプローチをしていくことにしており,
次回は,現場では重要な改善系のテーマを選びました。

吉川講師からは,2003年から実施のバランススコアカードの構築を行うもので
全体の7割を演習としており,戦略策定とチーム内コミュニケーションにより
BSCの構築のみならず,ビジネスリテラシーを体得する機会にもなります。

いずれも,ISO 9001:2015で求められている主体性・自律性のあるQMSで結果を
出していくための必要な内容と考えます。

詳細のご案内は,開催日の概ね1カ月前くらいに整い次第メールにてご連絡を
させていただきます。
ご期待いただくとともに,参加のご検討をお願いいたします。


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●ISO 9001関連の最新動向
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8月末に,品質マネジメントシステム国内委員会の会合がありました。
当月は,このうち,DTS 9002とISO 9004について概要を報告します。

<TS 9002について>
 ■4月のメキシコ・グワダラハラで行われたISO/TC176/SC2/WG24/TG6
  会議では,DTS 9002の議論だけが行われ,SMEハンドブックのコメント
  の検討時間がなく,7月にイギリス・ロンドン会議で議論されることとな
  りました。
  また,英語を母国語としない国には,TS 9002だけを翻訳して利用,SME
  ハンドブックだけを翻訳して利用,両方を翻訳して利用という三通りの対
  応があることが分かりました。
  そのため,ISO 9001の理解を助ける文書が公平に提供されるようにする
  ため,両文書は同時発行が基本となることが確認されました。
  
  ■7月のイギリス・ロンドン会議では,グアダラハラ会議で議論できなかっ
  たSMEハンドブックに対するコメント処理でしたが,一部,DTS 9002の
  未検討コメント及びグアダラハラの欠席者から追加されたコメントの処理
  も含めて行われました。SMEハンドブックは,TS 9002の記述と差異が生
  じないよう,TS 9002の記述をそのまま使用し,そこに中小企業向けの具
  体的な事例が追加した体裁で整えられました。

  ■TS 9002の国内の対応は,当初,TS 9002はISO 9001:2015が発行された
  後に,すぐに発行される予定であったため,JIS/TSを作ることのメリット
  があると考えていましたが,「 2015年版への移行期間が半分過ぎた後に,
  ISO 9001の登録組織や認証機関がJIS/TS 9002をどれだけ必要とするかは
  疑問がある。規格ユーザのことを考えれば,よりスピーディーに発行でき
  るJSAの対訳版で十分ではないか」との意見が出されました。また,
  JIS/TSは最長で6年しか存続できず,メンテナンスコスト等を考えた上
  で,JIS/TS化するか否かの議論が必要であるとの経済産業省からの説明が
  あり,このことについての議論を行いました。
  これに関して,委員から次のような意見がありました。

   ・認定機関の立場からはJISであっても,対訳版であっても構わない
    が,日本語で読めるTS 9002のニーズはあるように思う。
   ・認証機関としては,JIS/TS化を望んでいる。研修等の教材にも使い勝
    手が悪く,せっかくTS 9002を作ったのだから,広く日本のユーザに
    使ってもらうためにも,JIS/TS化は意味があるように思う。
       ・研修機関としては, JISにならない限り,国内の普及は難しいと感じ
         ている。ISO 9001だけでは,同規格の理解は進まない。ISO 9001の正
         しい理解のために,9000,9001,9002がセットで普及されていくこと
         が望ましい。
       ・企業としても,自分達が主体的にQMSを有効に運用していくために,
    企業内で普及させやすいJIS/TS化を望んでいる。
   ・ISO 9000,9001,9002をセットでという考え方には賛成するが,経済
    産業省の意見のとおり,タイミングが遅い。多くの企業が来年度には
    2015年版への移行を終えてしまう。とにかく国際的なTS 9002の発行
    を急いでもらうと共に,スピーディーな対訳版の発行が,ユーザには
    最も有益ではないか。
       ・2015年版への移行ばかりが論点になっているが,他のMSを有効に展開
    させていくためにも,QMSを正しく理解することは非常に重要であ
    る。例え時間がかかったとしても,TS 9002をJIS化することを望む。
   ・別の観点だが,9001の移行期間中に,JIS/TS 9002が発行され,解釈
    の違いが生じてしまうことを懸念している。そのような問題をはらん
    でいることを考慮して,議論する必要がある。
   ・TC176はTS 9002をISにする意向はないように思う。つまり,ISO 9001
    が生きている限り,TSのまま9002を存続させるはずである。JIS/TSが
    テンポラリーな性質であることを考えると,JIS/TSではなく,JIS規
    格にして発行することが最も望ましい形ではないか。
   ・国際的にTSだからといって,国内もTSにしなければならないというこ
    とはない。議論の余地なく, JIS Q 9002とするべきである。
 
  以上の議論の後で,品質マネジメントシステム規格国内委員会としては,
  長期的な観点でユーザの利用しやすさを考えた結果,TS 9002はJIS/TSで
  はなく,JIS規格として開発すべきであると結論付けました。今後はその
  方向で,経済産業省と調整していくようです。

  なお,その後の状況として,JSAより,TS 9002が国際的に発行され次第,
  速やかに翻訳会社へ翻訳を依頼して対訳版を作成すること。その後,同対
  訳版をベースにして,JIS化の検討を進めていきたい旨の説明がありまし
  た。

<ISO 9004の改訂について>
 ■すでに香港会議より大変更が行われる旨の報告をしていますが,5月のメ
  キシコ・イスタパで行われたたISO/TC176/SC2/WG25会議ついて報告があ
  り,以下の内容を含み大きな議論がある状況でした。

   ・Scopeについての議論において,QMPという言葉をあまり表に出す必要
    はないのではないかとの意見があり,“This guidance is 
    consistent with the fundamentals of the quality management 
          principles.”の文言が加わった。
   ・全体の雰囲気として,TQMの指針に近いものを作ろうとしているとい
    う実感がある。具体的には,経営環境が変化していく中で,組織が持
    続的に成功を治めていくためには,どのようなことをしていかなけれ
    ばならないかということをまとめた指針になるのではないかと思われ
    る。
   ・用語と定義は,ISO 9000との整合を図ることになり,9004としての定
    義はしないこととなった。
   ・規格のユーザは誰なのかが議論となり,Senior managementが主な対
    象ということで,参加者の認識は一致した。
   ・strategies, policies, objectivesの関係について,日米とヨーロッ
    パで意見が分かれ,保留となった。
   ・規格のタイトルについても,大きな議論があり,qualityという言葉
    は含めたいが,かといって,あまり狭い意味でのqualityとは取られ
    たくないとの理由から,
    “Organizational quality ? Guidelines to achieve sustained 
     success of an organization”となった。
    なお,Organizational qualityという言葉が誤解を生まないよう,箇
    条を設けて説明を記すこととなった。
   ・規格の構造は,HLSやISO 9001と整合を取る必要はないとWG内では結
    論付けた。
   ・Self-assessment toolはそのまま残し,五段階の尺度を作ることにな
    った。
   ・今回CDを読んで感じた問題点は,まず,リスクの概念がないこと。マ
    ネジメント層が読む規格と位置付けておきながら,リスクの言及がな
    いことは問題ではないか。また,resourceについても,財務・会計の
    言及がなく,一体誰が何を目的として読む規格なのか疑問を感じる。

  これらは,11月にオランダ・ロッテルダムで開催されISO/TC176総会にお
  いて議論がなされることになります。


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●TL 9000コーナー「TL 9000 セミナーのご案内」
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1. TL 9000 セミナーのご案内

来る11月21日に恒例となっています「TL 9000 セミナー」をクエストフォーラ
ム日本ハブ様とQMS委員会 TL 9000WGで共同開催いたします。

今回は,7月11日に発刊されましたTL 9000要求事項ハンドブックR6.0の内容を
中心に説明する予定です。R6.0の内容をいち早く知るチャンスです。奮ってご
参加いただければと思います。

詳細は,10月中旬を目処に準備が整い次第,募集案内にてご案内の予定です。

2.TL 9000要求事項ハンドブックR6.0 英和対訳版(翻訳作業中)

TL 9000要求事項ハンドブックがR5.5からR6.0に改版となりましたが,現在日
本語版への翻訳作業中です。

翻訳委員会には,QMS委員会から TL 9000WGのメンバも加わり,2016年11月
中旬頃に発刊の見込みです。
邦訳版が発刊されましたら本メルマガにて紹介いたします。 


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●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
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今年の夏は,例年に比べ異常な気象です。特に台風10号は八丈島東の海上で誕
生し,一旦南に下りその後Uターンし北上するという過去に例のない軌跡を描
いて岩手県に上陸しました。
また,東北地方に台風が直接上陸するのは観測史上初めてと報じられ,その原
因が特異な気圧配置によると解説されておりました。地球規模の異常気象を身
近に感じる出来事でした。

さて,ご案内のように台風の進路は気圧配置により必然的に決まる物理的現象
ですから,今回の台風南下の第一の原因は気圧配置ということになります。
しかし,その気圧配置を決める原因を考えると,例えば海面温度の上昇や海流
など気圧配置を決定する因子がいくつかあり,これら因子の相互作用により,
結果として気圧配置が決まると考えることができるでしょう。そして,これら
の話題は最終的に地球温暖化現象に帰着します。

地球温暖化の原因として,フロンガス,メタンガスおよび二酸化炭素などの温
室ガスが,よく例としてあげられています。特に二酸化炭素は産業革命以降の
エネルギー消費の増加に比例し増え続けているとされ,温暖化の一因と見なさ
れています。
一方,経済活動にはどうしてもエネルギーが必要なので,やみくもに削減する
事もできず,省エネ技術の開発と無駄使いを省く日々の努力が積み重ねられて
きました。

一方,地球規模の温暖化となると実際のところその対策がどの程度の効果があ
るか諸説あり,いま一つ明確ではありません。しかし,手持ちの解決手段が限
られている以上,それが微々たる効果であったとしても長期にわたり取り組ん
でいかなければならない課題だと言えます。

さて,このように観測された出来事の本当の原因が特定できない場合,何らか
の結果を通し間接的に原因を想定し対応する事態が企業活動にも少なからず起
きるものです。
その背景には,ビジネス環境のめまぐるしい変化や,アウトソーシングおよび
他の関連プロセスとの微妙な相互作用の変化などが考えられます。

これらの変化が急激に起きればだれしもその異変に気がつくのですが,徐々に
進行する場合また直接目に見えない場合,意外と気がつきにくいものです。

この徐々に進行する全体的変化は,企業活動でもおこります。プロセスに所属
している人々はその立場に応じた範囲内でしか出来事を認識できないため全体
的な変化を直接把握することができません。それゆえ,何らかの適切なフレー
ムワークとモニタリングシステムおよび評価のための指標があれば,把握しや
すくなるでしょう。

この状況は前述の気象の例と類似しているように思えます。企業が置かれてい
る状況は,グローバル化の進展に伴い企業の思惑を超え進行するので,業界で
も活動に勢いあるところと,無いところに自然と分かれてしまいます。この状
況は一企業ではどうにもなりませんので,いかに勢いの高低差に対応していく
かが問題となります。

さて話を品質マネジメントシステム(QMS)に戻しますが,企業が目指してい
る方針や目標に照らし,個別プロセス内容とともにプロセス間の関連を気圧配
置図のように把握できれば便利です。

その点QMSは,プロセスを軸に企業活動全体を俯瞰しマネジメントする働きが
期待できますから役に立ちそうです。
気圧配置図を作るには,まず企業内にあるプロセス類を秩序化し,次にプロセ
スを連携させ体系的に機能させるためにシステム化することにより,具体的に
見えてくるものがありそうです。

そしてQMSとして業務の気圧配置図ができれば,気象予報と同様に台風の発生
および予想進路をある程度は想定できるかもしれませんから,被害や影響が出
そうな地域にあらかじめ警報をだし,対応準備を行わせることも可能となりま
す。これにより従来の改善によるプロセスの熟成とともに,ある程度リスクに
基づき予防的行動をもシステムとして導くことが期待できます。

また,QMSによる状況は経営層に企業内の状況を俯瞰していただく貴重な情報
を提供するものとなり,また現場のマネジメントの認知限界を広げる働きも期
待できます。

さて,これを品質マネジメントシステム規格であるISO 9001:2015では,「品
質マネジメントシステムの採用は,パフォーマンス全体を改善し,持続可能な
発展への取組みのための安定した基盤を提供するのに役立ち得る,組織の戦略
上の決定である。」と,QMSを導入する意図をその序文に示しています。

これまで,ともすると現場の不具合処置や短期的な事柄に関心が集中しがちで
したが,企業活動全体のパフォーマンスの改善と持続的発展の基盤を構築する
ところにQMSの狙いがありますから,システムとして改善を継続し,またリス
クを軽減することが重要となります。

一般的に,個別出来事の処置や改善は,システムがあろうが無かろうが,現場
で放置されることはまずありません。なぜなら,それができなければ業務が進
められなくなるからです。

一方,QMSでは対処療法を求めるのではなく企業の目的達成を妨げる根本的な
原因にアプローチをするものであり,意図した結果を一貫して導くところにね
らいがあります。
しかし,現場ではしばしば対処療法の話が重視され,それを引き起こしたマネ
ジメントやシステムの話は軽視され,無視される傾向があります。これらをよ
り注意しながら見ていく必要があります。

ご案内のようにQMSを構築するには,まずプロセス活動を文書化し皆が理解で
きるものにするところから始まります。次に個々のプロセス活動を組合せ体系
化することによりシステムとして秩序を与えることになります。それにより企
業活動の因果関係を整えるというところにQMS構築の本質と価値があります。

一旦,プロセス連鎖の因果関係が整えば,次にそれを使いプロセスを観測し,
改善すべき内容の検出と処置を施すとともに,ある程度の予防的な対応も可能
となるでしょう。

さて,因果関係を整えるとき,物理学のように極めて合理的なアプローチを行
っている世界でも二つの見方があります。

ひとつは“物理システムの全ての状態は現在の状態から導きだされる”という
ニュートン力学的な考え方です。これは物理的な世界は完全に予測可能である
とする見方で,近代科学は主にこの主張を前提に発展してきたとも言えます。
これをアンシュタインは“物理学の世界における我々の正確な観測能力の欠如
が未来の正確な予測を不可能にしている。”と述べ,未来を正確に見据えるに
は正確な観測が不可欠であることを主張しています。いわゆる西洋哲学に則し
た見方です。

これを因果関係があやふやなQMSの世界に戻せば,QMSの中で起きているさまざ
まな事象を正確に観測できるようになれば,因果関係が明確になり,不都合な
出来事を事前に防止できるようになるという主張になるでしょう。

しかし,現実は物理学の世界と異なり,そこで働く人々の立場,欲望,利害関
係,能力および情緒などさまざまな不安定要素の上に成り立ちますから,仮に
正確に観測したからと言って未来を見通せるかどうかは個人的には極めて疑問
です。
また,そもそも観測能力に限界がありますから正確な観測をすること自体が非
常に困難だとも見えます。

さて,もうひとつの物理学上の主張はボーアやハイゼンベルグの主張です。
“物理的な世界は,その最も根本的なところで予測することができない”とい
う主張です。あることが確実に起きるということは主張できす,せいぜい高い
確率で起きる可能性があるとしか言えないと述べています。

ここで注目したい点は,前者の完全因果の主張ではなく,全ての出来事がそれ
以前の出来事によって決定されるわけではないと主張しているところです。少
しホッとする主張です。
なおボーアは,量子力学上の粒子と波,位置と速度の不確定性の世界と東洋哲
学との類似性に関心を示していますが,面白い着眼点であるとともになるほど
と思わせてくれます。

QMSの世界もこの主張に似ており,出来事の因果関係はある確率で起こり得る
としか言いようがありません。いかに業務内容を精緻に記述しオペレーション
したとしても,同じような業務がなされることはあくまでも確率的であり,そ
の成果も確率的な期待だと言えます。
この確率的な因果関係の主張に対し,アンシュタインは“神はサイコロを振ら
ないと”と反論しているところが,いかにも西洋哲学的な主張であり興味深い
ところです。

さて,企業活動では,往々にして神はサイコロをよく振るものではないでしょ
うか。同じような製品を出したにもかかわらず,ほんの些細な違いにより他社
に比べ市場ではあまり売れなかったり,逆にバカ売れしたりしますから,神様
もサイコロを振る場合がありそうです。

一方,企業活動を博打と同じようにサイコロ任せというわけにはいきませんの
で,QMSなど体系的なフレームワークを通し意図した結果を導くための確率を
高めていく努力が常に求められるわけです。

さて,これら物理学上の二つの主張は,相対性理論と量子力学による,この世
の中の見方の違いなのでしょうが,素人の私にはそれ以上の理解はむずかしい
話になります。

しかし,あえてこのお話を出したのはQMSの中でも,この二つの主張,すなわ
ち未来は現在の延長線上にあり改善し予防的処置をとることができる。それに
は正確な手順化と測定・分析・評価と言った観測手段が重要だという主張と,
一方で,未来の出来事は高い確率で現状の延長線上にあるかもしれないが,必
ずしもそうなるとは言い切れないとする確率的見方の両面が併存しているとよ
うに思えるからです。

未来は過去だけで決定するのであれば人々はあまり努力しなくなりますが,未
来が確率的なものととらえれば未来に立ち向かう姿勢と努力が重視されるから
です。

ISO 9001:2015以前は,どちらかといえば過去の延長線上に未来があり,PDCA
サイクルを使い,過去の出来事を起点に未来を切り開くとするプロセスアプ
ローチが重視されてきたと見ています。

一方,今回の改訂では,それに加えリスクに基づく考え方をより明確に主張し
ております。すなわち未来の不確実さに関心を向けたプロセスアプローチであ
り,これらを併用する必要性を示しています。

このように見ていきますとQMSは,業務にまつわる不確かさを出来る限り縮減
しつつ,未来に対し神様がサイコロをふる場面を少なくするところに意味があ
ると理解できそうです。
そこで皆さんも,企業活動のなかで神様がどこでサイコロをふりそうなのか,
時間があれば是非考えて見てください。


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●編集後記
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秋風が心地よい季節となってきました。

連日の台風により全国的な規模で水害が発生し,今後,日本の夏はどうなって
しまうのか考えさせられることがあります。皆さんのお住まいの地域は大丈夫
でしたか?早め早めの準備が災害防止に繋がりますので,アンテナを高く情報
収集をしましょう。

台風といえば,”知識活用型企業への道”では,台風10号に端を発してQMS
委員会ならではの切り口の記事としましたが如何でしたか?
ご意見・ご感想があれば,お知らせください。

話は変わりますが,最近はバッテリーの発火事故による報道がいろいろ出てま
すね。
某社の携帯電話のバッテリーについては,世界規模のリコールにより多くのお
客様にご迷惑をおかけしている状況であり,我々企業側も他人事とは思えない
と考えます。

技術の進歩に伴い様々なリスクを考えなければならない状況にありますが,お
客様の品質に対する考え方は昔も今も変わらないと思います。
お客様が安心・安全に使えるよう企業努力は怠らないという事を振り返る機会
になったと私は考えます。

最後までお読みいただき,ありがとうございました。


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──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」──

* 配信追加は下記にお知らせください。
 mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp
* 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
    QMS委員会メルマガ編集部
 http://www.ciaj.or.jp/top.html
 http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ)
* 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(菅野 清裕)
* 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!
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