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   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

    「QKMアクティブラーニング QMSのやる気スイッチ 開催!」


                      2016年 3月31日発行 第72号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第72号 目次 ≫

 ・はじめに
 ・QKMアクティブラーニング第三弾のご報告「QMSのやる気スイッチ」
 ・QMSサロンのご報告
  「ISO 9001改訂にともなうQMSの見直し要点について話し合う」
 ・QKM e-ラーニング QMS基礎講座(4プログラム)の刷新について
 ・JABマネジメントシステム シンポジウムのご報告
 ・ISO 9001関連の最新動向
 ・TL 9000コーナー
 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
 ・コラム「思考法」
 ・編集後記

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●はじめに
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明日から4月。そして,2016年度が始まります。
通勤の車窓から見える景色も遠くに見える浅間山の山頂も雪融けが進み,山肌
が見えるようになり,殺風景な景色から花々により彩られ始め,着々と進む春
の訪れを実感しています。

企業では,新入社員が入り,組織の変更が行われたりすると,フレッシュな空
気感が漂うとともに,年度末とは違った忙しさがあるものです。組織としての
年度計画も改められ,気分一新でやる気満々の方もおられるのではないでしょ
うか?

先日行われたQKMアクティブラーニングの受講者アンケートでは,3分の1の方
が2016年度にQMSの移行を計画しているとのことでした。

15年ぶりのISO 9001の大改正では,単に要求事項を満足させることに留まら
ずに,さらに良い会社にするためにチャレンジをしてもらいたいものです。

QMS委員会でもひと足早く小さな変更がありました。それは,QKM e-ラーニ
ング QMS基礎講座の全プログラムのリニューアルです。今回はコンテンツの
中身だけでなく,見栄えの改善をしています。受講の機会がある方は,そんな
ところも見ていただければと思います。

2016年度は,QMS委員会の総力と知見で,ISO 9001規格解釈コースのISO
 9001:2015対応に着手致します。少々長めのお時間をいただきますが,太鼓
判を押した内容でリリース致しますので,ご期待ください。

それでは,メルマガ72号をお楽しみください。


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●QKMアクティブラーニング第三弾のご報告
 「QMSのやる気スイッチ」
───────────────────────────────────

3月18日にQKMアクティブラーニング第三弾として,第一弾と同じく株式会社
イノベイション代表取締役 山上裕司 様をお招きし,「QMSのやる気スイッチ」
を開催しました。

今回は年度末の多用な時期ながら,25名の参加をいただきました。タイトルは
前回同様に,山上講師ならではのユニークなもので,テーマへの興味とともに,
組織のQMSを何とか変えたいという期待をもった方たちにお集まりいただきま
した。

講義では,まず「あなた会社のQMSはどこにありますか」との謎かけめいた問
いかけがありましたが,参加者の意見は一様ではなく,象徴(シンボル)-モ
ノ化が大切であることを再認識しました。そして,QMSは人の知覚・認識の中
にあるとしたうえで,「感覚(Sense)」「概念(Concept)」「象徴(Symbol)」
の基本的な部分を学びました。

QMSにおいてはモノ化言葉が無意識のうちに結構使われており,これらを理解
しながら,組織のQMSをモデリングすることに焦点をあてて,講義とグループ
ワークが行われました。特に,QMSのモデリングでは,2人一組でのインタビ
ュー形式という新たな手法で行われ,新鮮さのあるワークを体験できました。

今回のQKMアクティブラーニングでは,「あなた会社のQMSはどこにあります
か」という何気ない設問ながら,モデリングにおいては,「QMS規格(モデル)」
「組織の活動の写像(あるべき姿)」「組織の実際の活動」の3者を区別するこ
とが重要で,QMSの見直しにおいてもこのことが必要であり,非常に深い内容
であることを感じました。

受講者アンケートでは,受講しての収穫としてモデリングを掲げた方が18名,
モデリングを活用したいとされた方が12名と大きなインパクトがあったものと
思われます。是非,活用できるようになってもらいたいものです。

2015年度は,計3回のQKMアクティブラーニングを実施しました。これを機に
QKMアクティブラーニングが会員の皆様にとってどのような存在であるかを受
講者アンケートでお尋ねしました。

QKMアクティブラーニングの必要性については,否定的なご意見はなく,「実
践的な内容である」「考え方が学べる」「他社との意見交換ができる」等の評
価をいただき,学びの場として足りない部分については,「じっくりと時間を
かけて学びたい」という意見が多く見受けられました。

この貴重なご意見を踏まえて,次回以降の企画に反映して参ります。

今回の受講者アンケートの結果は,以下の会員専用サイトからご覧いただけま
す。是非,ご一読ください。

また,QKMアクティブラーニングへのご意見,ご要望がありましたらQMS委員
会宛にお知らせください。

 <会員専用サイト(ID,PWが必要です)>
 http://www.ciaj.or.jp/qms_m/pdf/160318.pdf


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●QMSサロンのご報告
 『ISO 9001改訂にともなうQMSの見直し要点について話し合う』
 ~現状のQMSを改訂内容に適合させ,より効果的にするためのヒントを探す~
───────────────────────────────────

3月30日に第18回「QMSサロン」を開催致しました。

QMS委員会フェロー 山本 正 様(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え,
2015年11月20日に発行された,ISO 9001:2015の改訂にかかわる本質と課題を
話し合いました。

今回のサロンでは,(公財)日本適合性認定協会(JAB)が主催した
“第4回マネジメントシステム シンポジウム”の資料を引用しながら,規格制
定および審査側の視点を入れ,企業の自律性を重視し“身の丈に合ったQMS”
にて運用するためのポイントについて議論を交わしました。

ISO 9001:2015は,組織の目的とその状況に応じQMSを適切に示せるように要求
事項も見直されていますので,正しく使えば,逐条型運用での形骸化や,効果
が見えないなどに陥っていたQMSも良い方向に向かうだろうと感じました。

上記の通り,改訂の意図として,逐条型QMSを脱却しなさい,事業と一体化さ
せなさいと言われても,急に自律型QMSに切り替えるのは難しい話であり,
QMS事務局だけの理解ではQMS運用が上手くいかず,組織全体で取り組むことが
大切であることが,今回のQMSサロンに参加してよく理解できました。

ISO 9001:2015で,自律性重視で見直された主なポイントは以下の通りで,
それぞれ簡単な解説がされました。
 ・事業戦略および事業内容とQMSの一体化
 ・トップマネジメントのリーダーシップと説明責任
 ・事業状況の認識
 ・多様な利害関係者の認識
 ・リスクに基づく考え方
 ・パフォーマンス評価
 ・文書化した情報の自由度

上記の中で,今回のQMSサロンのテーマであるQMSの見直しの要点を深く理解
するために下記の3つについて掘り下げました。
 ・自律性あるQMSとは
 ・リスクに基づく考え方
 ・パフォーマンスの改善

まず「自律性あるQMSとは」です。

これは,意図した目的を達成するためには自律性のあるQMS構築にしないとい
けないということですが,従来の逐条型QMSで認証制度とともに,QMSの目的が
進んできたので,QMSの意図する目的が,企業の目的,経営の目的と別々にな
ってしまい,経営とのリンケージが取れていない状態でのQMSが運用されてい
たため,自律性のあるQMSの構築の議論が起こってきたとのことです。

QMS原則の解説では,それぞれの原則がつながり関係性を持っていることがと
ても分かりやすく,単に原則が並んでいるだけではなく背景にある意味を理解
し,規格を読むときに原則を念頭に置くことの大切さを感じました。

「プロセスアプローチ」,「客観的事実に基づく意思決定」,「改善」この
3つでPDCAを回していて,PDCAを回すときのバイアスとして,「顧客重視」,
「リーダーシップ」,「人々の積極的参画」があるということでした。

外部の因子がないとPDCAは回らないので,PDCAサイクルが空回りしないように
リンケージをしっかり取ることが大事というお話はとても理解できました。

プロセスアプローチをするときには,QMSが置かれている内部・外部状況を把
握すること,すなわち「関係性管理」が関係しており,規格要求では,組織の
コンテキストという文言で箇条4に入っているとお話がありました。

「リスクに基づく考え方」は原則ではありませんが 7原則に深く関わっている
ことを学びました。

次に,「リスクに基づく考え方」です。

QMSに適用されるリスクの概念は限定的であることを理解すること,リスクと
記載がある部分を「不確かさの影響」と置き換えて読むと良いと教えていただき
ました。置き換えて規格を読んでみた方が要求事項が理解しやすいようです。
読者の皆様も試してみてください。規格がより頭に入りやすい気がします。

改善とリスクに基づく考え方の関係は以下のようになっているとことでした。

 意図した結果 → 直結するプロセス → 主体的規格の利用 → 可視化
 → 一貫性 → 合理的管理

すなわち,「意図した結果を実現する」これがQMSの目的であり,その結果を
実現するためにプロセスがあり,規格を鏡みたいに使い照らし合わせなさい,
見えるようにしなさい,一貫性を持たせないということです。

リスクへの取り組みとして,ISO 9001:2015 付属書A.4では,計画と実施の段
階で,リスクに基づいて考えてくださいと書かれています。

上記の一連の活動の中にリスクに基づく考え方を入れていくということです。
“リスクに基づく考え方”が,なぜ原則とせず概念であるかは,原則とすると,
要求事項に展開しないといけないので概念と捉えているとのことでした。

最後に「パフォーマンスの改善」です。

プロセスアプローチとPDCAサイクルの観点から,QMSで求めているパフォーマ
ンスとは,計画などで示した“意図した結果”に対するパフォーマンスである
とのことです。

一方,パフォーマンスは,環境変化,QMSの活動の質などから,不確かさの影
響を受けるため,適切なパフォーマンス指標が必要となります。

そして,KPIは夢ばかり描いていても仕方が無く,少し頑張れば達成できそう
な目標設定,すなわち,ワンフィンガーストレッチも考慮すると良いというこ
とでした。

逆に,QMSの範囲を超えたパフォーマンスは注意してくださいとのことで,
例えば,QMSに財務系がないのにその部分の経営的なパフォーマンス指標につ
いて議論することはQMSで扱える範囲を超えているということでした。

以上,2015年版改訂のポイントの意見を交わし,全体のまとめとしては,
逐条型QMSで構築されたQMSでは,QMSの目的に照らし体系的に整理する必要が
あるということで,不確かさの影響を議論する場合は,過去の結果から導いた
現在最適だけでなく予想される将来最適も目指すことが必要とのことでした。

最後に参加者の感想として,以下が挙げられました。

・各社の工夫している事例が参考になった。
・リスクひとつにしてもQMSとしてどうやって捉えていくか考えないと,
 みんなが理解して取り組むQMSにしないといけない。
・既に経営との一体化で,業務マニュアルなど全てを見直している活動が
 方向性はあっていることを認識できて良かった。
・会社が良くなっていかないといけない,業績に貢献できることが必要。
・熱い議論に参加できて楽しかった。自社の中で先陣を切って2015年版で
 認証取得をする予定である。
・理解して腑に落ちているか,正しいかどうかではなく本気かどうかである。

今回は,規格の改訂というトリガーで意見が交わされましたので,参加者も
各社の取り組み,熱い議論などを展開し,中身の濃いQMSサロンとなりました。

次回,第19回は,2016年7月に開催予定です。

「QMSサロン」は,自身の勉強目的だけではなく,会員間コミュニケーション,
リレーションを築くにも最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。

皆様のご参加をお待ちしております。


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●QKM e-ラーニング QMS基礎講座(4プログラム)の刷新について
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すでにご案内しましたとおり,QMS委員会では,昨年のISO 9001/JIS Q 9001
改正など,昨今の品質を取り巻く環境の変化を鑑み,QMS基礎講座(4プログラム)
を刷新し,3月15日より新コンテンツを提供しております。

QMS基礎講座の主な変更点は次のとおりです。

・JIS Q 9000:2015/JIS Q 9001:2015への対応
  昨年11月20日のJIS改訂に伴い,引用しているコースを見直ししました。
   ・QMS基礎講座 品質管理概論
   ・QMS基礎講座 検査の進め方

・JIS Z 8101-1:2015/JIS Z 8101-2:2015への対応
  昨年10月20日のJIS改訂に伴い,引用しているコースを見直ししました。
   ・QMS基礎講座 統計的方法

・品質を取り巻く環境変化への対応
  上記の規格改訂に加え,品質に対する社会の関心の変化,企業の品質への
  取り組み領域の拡大などを背景にリニューアルしました。
   ・QMS基礎講座 品質管理概論

・使用フォントの見直し
  従来は「MSゴシック」を基調とするフォントを利用していましたが,今回
    の見直しで「メイリオ」を基調とするフォントに変更しさらに読みやすく
    なりました。
   ・QMS基礎講座 全4プログラム

・スライド(画像)の拡大と軽量化
  画像圧縮方式を見直し,従来比で,スライド(画像)の大きさを約10%
  アップしつつ,データ量は約3分の1に軽量化することができました。
  これにより,より見やすく,かつ,よりネットワーク環境にやさしい軽快
  なレスポンスを同時に実現できました。
   ・QMS基礎講座 全4プログラム

さらに見やすく,使いやすくなったQKM e-ラーニング。社内教育カリキュラム
の一つとして,是非,引き続きご利用いただきますようお願いいたします。

各コースの概要,受講申し込み要領,受講申込書は以下のWEBサイトに掲載して
おります。

  
 http://www.ciaj.or.jp/qms/7.html


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●JABマネジメントシステム シンポジウムのご報告
  「2015年改訂に対応するマネジメントシステム構築」
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3月3日に有楽町朝日ホールで開催された「第4回 JABマネジメントシステムシ
ンポジウム」に参加しましたので,概要を報告いたします。

テーマは「2015年改訂に対応するマネジメントシステム(以降MS)構築」で,
品質や環境のほか,さまざまな分野を扱うMS規格が開発・発行されている昨今
の状況下において,複数のMSをいかに効果的に活用し信頼性を確保するかです。

今年は,ISO 9001及び ISO 14001の2015年版の改訂を受け,組織がどう対応す
べきかを, 3つのワーキンググループ(WG)から,リスクに着目したプロセスア
プローチ,EMS規格改訂における製造業の対応,ISO 9001:2015改訂に対応する
認証価値の向上について,検討結果の発表がありました。


1. 基調講演「ISO 9001:2015改訂の意図,主旨,こころ」:
           筑波大学ビジネスサイエンス系 教授  山田 秀 氏

 今回のISO 9001:2015改訂の意図は,「認証制度の信頼性向上」であり,
 要求水準は明らかに向上していて,自組織の立ち位置を再認識し,認証取得
 が目的だった組織は,改訂を契機に組織に役立つQMSの再構築が必要である。

2. JAB MS研究会の報告:
 WGメンバーは,組織,認証機関,認定機関及び学識経験者で構成され,以下
 の報告がありました。

 WG1:「リスクに着目したプロセスアプローチを実現する」では,QMSを整理
   する3つの観点について,7つの事例の報告がありました。
   ・組織の「内外の課題」とQMS対応のモデルと事例
   ・QMSで「好ましくないリスク」を考慮するモデルと事例
   ・リスクと機会に着目したQMSのPDCA活動による継続的改善のモデル

 WG2:「EMS規格改訂における製造業の対応」では,具体的なモデル組織を事
   例に,ISO 14001:2015改訂のポイント(新規・強化)について,組織の視
   点と審査の視点で,具体的対応の報告がありました。

 WG3:「ISO 9001:2015改訂に対応する~認証の価値向上~」では,2008年版
   からの主な変更点の改訂が意味する「社会の側面」「組織の側面」の有
   用性の説明から,改訂による価値を活かす QMSの再構築について,改善
   すべき点,補う強化する点,留意点の報告がありました。

今回のシンポジウムは,具体的な事例をもとにした報告が多く,各組織のQMS
を再構築する際の気づきが得られた一方で,まだ2015改訂のポイント(リスク
及び機会への取組み 等)の議論が十分し尽されていない感もあり,各組織で
の取り組みが重要であると感じました。


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●ISO 9001関連の最新動向 
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今回は,前号で報告できなかった,昨年11月に実施されたTC176の香港総会での
関連する事項の報告と,ISO本部のHPで見つけた内部監査関連のガイダンスにつ
いて報告します。

1. 香港総会の報告と,TS 9002及びSMBハンドブックのその後

 昨年9月にISO 9000:2015,ISO 9001:2015が発行され,その時点でTC176とし
 ての大きなタスクは終わり,副議長やコンビナーなどの交代,ISO 9000:2015
 のプロジェクトレビュー結果報告書のドラフト版作成報告など,一段落を迎
 えた時期ならではの雰囲気が漂う総会であったようです。

 この中で,残作業として,ISO 9001のガイド(TS 9002)と中小企業向けの
 ハンドブック(SMEハンドブック)があります。

 いずれも,現状は以下の通りドラフト版の段階です。

 ・ISO/DTS 9002 
  Quality management systems 
           - Guidelines for the application of ISO 9001:2015
      品質マネジメントシステム
   -ISO 9001:2015の適用に関する指針(仮題)

 ・(Draft)ISO handbook:
         "ISO 9001:2015 for small Enterprises
            -What to do? Advice from ISO/TC176"

 内容的には,各々の記述内容の充実が必要であるとともに,両者の整合を
 とる必要があり,日本からも双方に対して多数のコメント提出しています。

 最終的に,日本では,TS 9002はJIS化をする予定で,SMEハンドブックは
 日本規格協会から翻訳された書籍として発行する予定です。日程的には,
 いずれも2016年の年末頃の発効を予定をしていますが不透明な状況です。

 なお,最新の情報では,TS 9002について各国の投票結果は,賛成:21
 (うち,21がコメント付き),反対:9,棄権:13で,TSとすることが承認
 されました。

 この結果,4月のSC2/WG24グアダラハアラ会議(メキシコ)で検討される
 予定です。

 その他では,11月に報告のISO 9000:2015の改訂に伴うISO 19011の改訂につ
 いてですが,TC176を離れ,新たに設立されたPC302で審議されることとなり
 ました。

 同じく,11月に報告したISO 9004の改訂については,既に設計仕様書
 (Design Specification)のドラフト版が出されていますが,香港総会でも
 WG25で議論され,当初は小変更を想定されていたようですが,全く新しい規
 格として改訂される方向性にあるとのことのようです。

2. ISO本部HPの内部監査関連情報の整備と充実化について 

 2014年の秋に,ISO本部が実施したISO/DIS 9001:2014に対する妥当性確認で
 は,監査への適用への指摘が多く出されました。

 ISO本部では,その対応として,ISO 9001 Auditing Practices Groupから内
 部監査に関する各種ガイダンスが整備されHPに掲載されています。いずれも
 英語版となりますが,参考に紹介しますので活用いただきたいと思います。

<ISO 9001 Auditing Practices GroupのHP>
 http://isotc.iso.org/livelink/livelink?func=ll&objId=3541460&objAction=browse&sort=name


ISO 9001:2015関連のガイダンスのラインナップ
 ・Competence
 ・Context
 ・Customer Communications
 ・Customer Complaints
 ・Customer Feedback
 ・Design and Development Process
 ・External providers
 ・Improvement
 ・Internal audit
 ・Internal communication
 ・Measurement traceability
 ・Monitoring and measuring resources
 ・Organizational Knowledge
 ・Policy, objectives and management review
 ・Processes
 ・Resources
 ・Risk Based Thinking
 ・Service organizations
 ・Statutory and Regulatory requirements
 ・Top management


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●TL 9000コーナー
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当面の行事日程をお知らせします。

・4/11am~13am APAC Regional Conference(中国・深セン)
 テーマ:“Collaboration and Innovation for a Better ICT Industry”
 参加費:会員=$200,非会員=$275

・6/20~22 EMEA Regional Conference(スペイン・バルセロナ)

・6月末   TL 9000要求事項ハンドブックR6.0(ISO 9001:2015対応)
       英語版 発行

・7月頃   TL 9000セミナー(入門コース)
        ・TL 9000導入検討中,既取得企業のTL 9000新任者を対象
        ・TL 9000最新情報の紹介

・7月初旬 TL 9000要求事項ハンドブックR6.0(ISO 9001:2015対応)
           翻訳委員会キックオフ

・12月頃  TL 9000セミナー(アドバンスコース)
        ・要求事項ハンドブックR6.0の紹介


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●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
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先頃,囲碁でコンピューターと著名なプロとが対決しコンピューターが4勝1敗
で勝ちました。大変な話題になっているようです。

今回勝利したコンピューターは,その詳細は分かりませんがディープラーニン
グ(深層学習)という手法を使った人工知能(AI; Artificial Intelligence)
であると報じられています。

ゲーム世界で人間とAIが対戦した歴史は長く,最初は選択肢が比較的少ないチ
ェスから始まり,より複雑な将棋の世界へと広がり,その中でコンピューター
が人間を次々と打ち負かしてきました。

一方,囲碁は選択肢が非常に多いため,コンピューターが人間に勝利するには
当面時間がかかるであろうと予想されていましたが,今回ここでもコンピュー
ターが勝利したことで,その優位性がさらに明らかになりました。AIの進歩の
速さに驚かされます。

その報道の数日後,人間がかなり関与したらしいのですが,AIが作成した小説
がある文学賞の一次選考を通過したと報じられました。これまた話題になりま
した。

さらにその後,米国で対話するAIをネット上に公開し会話させたところ,次第
にコンピューターが差別的な発言をするようになり急きょ公開が中止されたと
報じられました。

この人工知能に関する一連の話題は,AIの得意分野と苦手分野がほぼ同時に報
じられたため大変興味深いものでした。

最初の囲碁の例は,限定されたゲーム空間と明確なルールが確立している世界
であり,論理的に思考アルゴリズムが構築しやすいためAIの優位性が明らかに
なりました。

その一方,文学の世界ではルールがないので,人間がかなり関与し補助しなけ
れば小説は書きあげられない状態だそうです。まだ人間の補助的な道具という
観があります。

最後のコミュニケーションへの応用例は,人間との対話をとおし人工知能が自
己学習することを目指したものなのでしょう。

会話するルールや話題の範囲が限定されないまま行われたのか,対話する相手
が偏っていたせいかは分かりませんが,予想もしていない差別的発言を連発し
始めたことは囲碁の事例よりも,よりインパクトがありました。

なぜなら,教育と学習という観点である種の問題提起をしてくれたからです。
人工知能の自己学習能力の限界が分かるだけでなく,組織的な学習やルール化
の必要性など,考えるべき点を示唆してくれたような気がします。

ご案内のようにコンピューターは計算式や手続きでロジック化できる分野では,
人間に対し圧倒的な処理能力をすでに持っております。その一方,ロジック化
できない分野はなかなか対応できないという課題があります。

そこで,それを補うため学習アルゴリズムを組み込んだ人工知能が研究され,
ゲームなど固定された空間とルールのもとで実証研究されてきました。

このような環境であれば,刻々と展開する場面でもかなり正確に将来を予測し,
意思決定できることが今回も実証されました。

最近の一連のAIの実験は,活動空間の限定と活動ルールの組合せが,学習と知
識獲得とに綿密に結びついていることを暗示しているように思えます。良い事
例でした。

将来,人工知能に適切な学習ルールを与えることができれば,カオス的な複雑
な事象でもビックデータと組み合わせて,因果関係をより正確に読み解くこと
ができるようになることが期待できます。楽しみです。

さて,適切な学習ルールが不可欠な人工知能(AI)の世界から,ルールの塊とも
見える品質マネジメントシステム(QMS)の世界に話を戻します。

昨今のように事業状況が刻々と変化し,それに対応することが求められる時代
では,文書化したことだけで全てに対応することが難しくなってきております。

そこで“ものごとはやってみなければ分からない”という,少し気楽そうに見
えるお話から展開してみたいと思います。

人生には実現してみたいことが多くありますが,実際のところ何をどのように
したらよいか分からず棚上げしてしまった結果,何も実現していないことが良
くあります。

また,子供のころは無謀と思えることでも平気でやってしまうものですが,さ
まざまな経験と学習を重ねると先が見えるだけに変に賢くなり,はじめから行
動しないこともあります。

行動しなければ失敗しないので損失が出ないと思うかもしれませんが,実際に
は何かが失われるわけです。

これを経済学的に見れば,“選択すれば得られたであろう利益を逃した損失”,
「機会損失」(opportunity loss)となります。

また逆に,“ある行動を選択したことにより,他の選択肢を選んだ場合に得ら
れた利益を失うこと”を費用とし,「機会費用」(opportunity cost)という言
葉で示しています。

実際の行動や意思決定には直接的な利益と経費だけでなく,その裏側にある機
会損失と機会費用のバランスを加味し判断されるものです。

このような考えにもとづき,今回のISO 9001改訂への対応を考えてみます。

見直しにともない業務に使える時間を割かなければなりませんから,なにがし
らの機会費用が生じます。

逆に,機会費用を惜しんで適切に見直を行わなかった場合,見直せば得られた
であろう何らかの便益を失うことになりますから機会損失が発生します。

どちらを重視するかはその企業の選択ですが,我が社には我が社のやり方があ
るという主張は大変結構なことと思いますが,機会費用が許されるのであれば,
一度は改訂された規格に照らし現状をレビューしてみると良いでしょう。やっ
てみなければ分からないことが多々あります。

さて,その見直しの中心になるのが,まずはルールや基準を示している文書類
でしょう。

今回の改訂では,文書化を“文書化した情報”と書き直し,企業の主体性をよ
り尊重する姿勢がうかがえます。

時々QMSの形骸化の要因のひとつとして文書化をあげる人がいますが,ルール
化と文書化とは目的と手段の関係ですから同一視しては間違いを起こします。
組織活動する以上は,何らかのルールは不可欠ですから,形骸化とは次元が違
うものです。

またルール化と固定化とを同一視する人もいます。ゲームの世界と違い実世界
ではルールは状況変化に合わせ変更できるので,固定化の概念とは違うもので
す。むしろ役立たないルールを放置する方が形骸化を導く要因になり得ます。

ルール化の必要性は不確かさの影響を軽減することにあります。今回の改訂で
も旧版にある予防処置と改善を,“リスクに基づく考え方”とお化粧しなおし,
再度デビューさせています。

その内容を,少しのぞいてみましょう

「ISO 9000:2015-基本及び用語」では,“リスク”を「3.7.9 リスク(risk)
 不確かさの影響」と定義しています。一般的にはリスクとは,損害を被る
“危険”(広辞苑)と理解されていますから,今回のリスクの定義は一般的な
リスクへの理解とは異なるので注意が必要です。

実際,この程度の定義文字数であれば,規格自体に“リスク”と書くかわりに,
“不確かさの影響”と直接書き込んだ方が分かりやすいのではないでしょうか。

試しに,“リスクに基づく考え方”を定義で書き直せば,“不確かさの影響に
基づく考え方”となり,すんなりと理解できます。

逆に,一般概念である“危険”を代入すると,“危険に基づく考え方”となり,
QMSの世界とは少し違う世界観になります。混同しない方がよいでしょう。

また,“リスクと機会”という表現に定義を代入すると,“不確かさの影響と
機会”となります。不確かさの影響はマイナス面だけでなくプラス面にも作用
するものですから,“機会”と対語にすると妙な感覚を受けます。

またさらに,このリスク概念の適用範囲を見てみますと,「ISO 9001:2015 付
属書A.4 リスクに基づく考え方」では,「・・・計画策定及び実施に適用す
ることを示しており(4.4参照),文書化した情報の程度を決定する際に役立
つ」と,具体的にリスク概念の応用範囲と目的をガイドしています。

これを見ると,やはりQMSのリスク概念は限定された範囲で使用されるものと
考えた方がよさそうです。

次に付属書では,“計画や実施の範囲で文書化した情報の程度の決定に役立つ”
と述べられていますので,実務に照らしてみたいと思います。

個人的経験で恐縮ですが設計・開発を担当していた時,設計・開発の計画書に
は,要求項目や日程,コストなど必要項目とともに,想定される問題を記載す
ることが当たり前でした。

計画書の段階で想定される問題,すなわち予想される不確かさの影響を書きだ
すことは,業務遂行上極めて自然ですから,あえて戦略的な用語である“リス
クと機会”を使い混乱させなくとも良いのではないでしょうか。

戦略は品質方針や目標展開の中でQMSとすでにリンクしていますから,むやみ
に話題の範囲を広げないことです。

さて,計画書の中にはやりたいことだけを記載したものが散見できます。

その場合どの程度の範囲と深さで計画されたものか当事者以外は分かりません
から,その計画の妥当性と信憑性を判断することは,第三者にはできません。
これは見直しさせた方が無難です。

なぜなら,計画とは実現するために行うものであり夢や希望を書くものではあ
りませんから,チャレンジする部分,確実に達成するべき部分など,その不確
かさの影響を想定し実現案を具体化することが計画の本質です。これを抜きに
した計画書は単なる読み物でしかありません。

これはベテランの世界では当たり前だと思いますが,新人など経験が浅い人た
ちには,不確かさの影響を想定すること自体が容易ではありません。

それゆえ,ベテランの助言と文書化した過去の情報など組織的な知識をひも解
き,不確かさの影響であるリスクを想定しなければなりません。これもまた当
たり前なので今さら規格で言われたくないものです。

一方,昨今のようにビジネス環境が大きく変化する時代では,組織外部および
内部の状況も急速に変化しますので計画時と違った不確かさの影響も発生しま
す。それゆえ,定期的にQMSもアップデートしておく必要が出てきます。

コンピューターのOSアップデートと同じように,QMSも適切にアップデートし
ておかないと思わぬところからウィルスが侵入し,最悪の場合他のプロセスに
も伝搬し重大な不都合を招く危険があります。

QMSのアップデートでは,ゼロから再構築するわけではないので,変化した内
容を“しなやか”に受け入れていく工夫が必要となります。そこで次の話題と
して“しなやかさ”という観点でお話を進めます。

最近その点で気になっていた言葉があります。それは“レジリエンス”
(resilience ;復元力,回復力,弾力)という言葉です。
ご紹介したいと思います。

この言葉は,震災対応のなかで最近聞かれるようになりました。
大震災の事例を見ても防災対策には限界があり,想定外の状況になると対策が
一挙に無能化してしまう問題です。

人命が関係する場合,想定外の状況に至ったから仕方がないという論法にはな
りませんから準備した事前の施策が無能化した時でも,最優先項目である人命
の損害を最小限に抑える弾力的対応が必要となります。

これが“レジリエンス”です。これは緊急対応計画であるコンテンジェンシー
プランとも違う考え方です。

例えば,過去の事例から津波を15メートルと想定し防波堤の高さを何メートル
にすべきかなどの議論を重ね基準値を設けても,想定外のことが起きます。

そこで防波堤の高さの妥当性を議論するだけでなく,津波が防波堤を乗り越え
たとしても,人命被害だけは防止するという,しなやかで弾力ある考え方が必
要になります。

実際,東日本大震災の際,過去の津波の経験から防波堤の高さを決め設置した
のですが実際には超えられてしまいました。

しかし,人家の密集場所に津波が来ないように防災林や海水を誘導する水路を
あらかじめ確保しておいたことにより,津波の侵入は許したものの防波堤が津
波のインパクトを軽減し,同時にその他の対策がうまく機能したため,その地
域の死亡者がゼロだった事例が報道されていました。

QMSの中で不確かさの影響を少なくしようと,手順化,標準化などある種の
ハードフレームを相当数準備しますが,業務の中では想定外のことが起きるも
のです。

それゆえ,その際はしなやかにQMSも対応していかなければなりません。手順
書を守れというのと同時に,手順書にないことでも行わなければならないこと
もあるものです。

手順を逸脱した場合,または手順類がない場合,それらをしなやかにQMSの中
で受け入れ,かつQMSの秩序を無能化させないための,しなやかで弾力ある対
応がいるものです。

文書類や標準書類などのハードフレームだけを軸としたQMSは,環境変化とと
もに無能力化することが考えられます。一方,状況が変わるたびにQMSを見直
すことも現実的ではありません。

それゆえ,多少の変動によりQMS自体が無能化しないようにある種のレジリエ
ンスを持たせることを考えていかなければなりません。

個人的にはレビューまたは妥当性確認が,その役割を担えるかもしれないと考
えていますがQMSの今後の研究テーマだと思います。やってみなければ分かり
ません。

しなやかで弾力性があり,かつ合理的なアプローチを実現するには,最終的に
は組織IQの話題に触れなければなりませんが,それ以前に企業文化や風土と強
く関連するものだと思います。

業務がうまく行うには,他の人々と協働することへの繊細な感覚と共感が基盤
になければいけませんから,あまり機械的な対応はしたくないものです。

さて,話が長くなりましたので,ひとつ余談を述べ終わりにしたいと思います。

最近テニスクラブで一緒にプレーさせていただく方と休憩中に何の気なしに雑
談していたところ,彼が大型タンカーの船長だったことを初めて知りました。

興味があったので,大型タンカーは旋回するだけでも何キロも必要なので操船
がむずかしいでしょうと尋ねたところ,舵を切っても効きだすまでかなりの時
間がかかるので先を見て舵を切らなければ間に合わないとのことでした。

ここまでは分かり切ったことでしたが,その際衝突を避けようとしてスピード
を落とすと舵の効きが悪くなるのでかえって危険であり,最低限のスピードは
保たなければならないそうです。納得です。

これをアナロジー(analogy;相似)とした場合,全体活動であるQMSでも,
先を見て舵をきり,舵が効きはじめるまである程度の時間がかかることを覚悟
しておかなければなりません。また,舵をきるときにはある程度のスピードが
必要であり,QMS改訂への対応スピードをむやみに落とすと舵が効かなくこと
が脳裏に浮かびました。

次の話題として,パナマ運河では大型船は海面の高低差を克服するため区間を
区切って水位を調整するのですが,その間を電気機関車が船を引いて狭い水路
を通すことが知られています。

その件につきお尋ねしたところ,機関車で引いてもらうのは別の理由があると
のことでした。大型船は狭く区切られた場所では水が逃げないためスクリュー
を回しても船が前進しないそうです。これまた新たな知識をいただきました。

これをアナロジーとするならば,担当するプロセスなど限定された狭い空間で
いかに推進スクリューを回転させても何かしらの抵抗が生じ前進しないかもし
れないことに思いが至ります。

それゆえ,関連するプロセスも含めてQMS全体を視野に入れた広い空間で推進
スクリューを回さないといけないのではと思えてきました。

またその際,トップマネジメントの皆さんが機関車となって船を安全に狭い水
路から大きな水路に導いていただきたいものだというイメージも同時に膨らん
でしまいました。

さて皆さんは,この話から何を思いうかべるのでしょうか。


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●コラム 「思考法」
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この 3月, 囲碁の人工知能(AI)「アルファ碁」は韓国のトッププロである
イ・セドル九段に 4勝 1敗で勝利し, 世界に衝撃を与えました。チェス, 将棋
に続き, 遂に囲碁においてもコンピュータが最強棋士との対局で勝利しました。

アルファ碁の思考方法はディープラーニングという, 可能な次の手を単純に計
算する方法ではなく, 人間のように膨大なデータを学習して判断能力を高める
手法です。(1)

一方, 人間の思考はデータ処理ではなく発想, 発案など創造性に強みがあると
見ます。

昔, 中国では,「鞍上, 枕上, 厠上」で良い発想ができると言われています。
「鞍上」は馬の上で, 現代で通勤電車の中, 「枕上」は床の中,「厠上」は
トイレの中です。アイデアは直ぐに消えてしまうので, メモや手帳を携行する
ことを薦めています。(2)

考えるだけで結論が出てしまう場面があります。例えば, 物理で, 同じ重さの
重りを天秤に乗せたとき, 片方に傾くのはありえないと分かります。実際に試
さないので思考実験と呼びますが興味が尽きない実験方法です。

数学は実験ではなく思考の連続となります。二次元, 三次元, 四次元, 五次元
・・・と思考実験で形を想像してゆくとどうなるかと。これは考え過ぎなので
奇怪な空想を欲しいままにする必要はないと教科書では優しくたしなめてくれ
ます。(3)

人工知能の活用は, ロボット,自動運転などで始まっています。今後も人間の
発想と人間の作った道具としての人工知能の有効活用が進んでゆくでしょう。

 QMSの分野でも将来, 人工知能が活躍する日が来るかも知れません。対象範囲
を限定することで, 顧客の要望や予想されるリスクを推定しPDCAを何百万回も
シミュレーションすることが可能になるのではないでしょうか。
もちろん,最終的にQMSの価値を判断するのは人間であると思います。

(1)「ネイチャー」電子版論文 Mastering the game of Go with deep neural 
                             networks and tree search 
(2)「思考の整理学」外山慈比古 著
(3)「解析概論」高木貞治 著
 

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●編集後記
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東京では桜の開花が発表されましたが,例年に比べ,寒さのせいか一気に満開
とはいかずスローな開花となっています。この週末は見頃になりそうです。
気分転換にお花見スポットへ出掛けてみてはいかがでしょうか。

桜は代表品種の染井吉野を含めて400種類くらいの品種があるそうです。各地
の桜の名所に出向いて,いろいろな桜を楽しむようなゆとりをもちたいもので
す。

3月26日には,北海道新幹線,新青森~新函館北斗間が開業しました。
東京と新函館北斗が最速4時間2分で結ばれ,津軽海峡を越え北海道から本州,
九州まで初めて新幹線でつながりました。1964年の東海道新幹線開業から約
半世紀,日本の高速鉄道網に新たな歴史が刻まれました。

あと1か月もすればゴールデンウィーク。今年は2日休めば10連休だそうです。
函館・五稜郭の桜を北海道新幹線で見に行くのもよいかもしれませんね。

この週末は散歩がてらに近くの公園に桜の様子を見に行こうと思います。

最後までお読みいただき,ありがとうございました。


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