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━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

     「2015年度もQMS委員会は価値ある情報を発信し続けます!」


                      2015年 3月31日発行 第66号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第66号 目次 ≫

 ・はじめに
 ・《速報》QMS戦略セミナーのご報告
   『QMSにおけるコンテクストの意義を考える
                   〜組織の現状把握が変革の原点〜』
 ・異業種見学会のご報告
   『お客様と触れ合い個性を育む東京の酒蔵「小澤酒造株式会社」』
 ・QMSサロンの報告
   「リスクベースドシンキングのQMSへの具体的な応用と展開」
 ・JABマネジメントシステム シンポジウムの報告
   「2015年改訂に対応するマネジメントシステム」
 ・ISO 9001関連の最新動向
 ・TL 9000コーナー「東京BPCで,TL 9000WG活動を講演」
 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
 ・コラム「勉強法」
 ・編集後記

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●はじめに
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QMS委員会会員の皆様,こんにちは。

ぽかぽか陽気に誘われて,週末の土曜日に江の島まで出かけてきました。天気
にも恵まれたおかげで海風が気持ち良く,春の湘南を楽しんできました。

鉄道では,3月に開業した北陸新幹線に脚光があたっていますが,首都圏では
上野東京ラインが開業して,北関東と神奈川の電車アクセスが向上しました。
皆様も新しい路線を利用して,遠出をしてみてはいかかですか。

JRがまだ国鉄の頃,朝の池袋から新宿・渋谷が大混雑区間とされ,埼京線が
できて混雑緩和がはかられましたが,今は,上野から御徒町が大混雑区間で,
上野東京ラインはこの区間の混雑緩和という大きな使命があったようです。
交通インフラにおいてもこのように大規模な変化への対応をしているという
ことですね。

QMS委員会の関心事であるISO 9001は予定通りISが9月に発行の見通しとなった
ようです。各組織においても組織を取り巻くコンテクストや,利害関係者の
ニーズや期待からQMSを見直し,組織のパフォーマンスを向上させ,お客様に
新たな価値を創造できるようにしないといけませんね。

今後ともQMS委員会は,会員企業の皆様に役立つ情報を発信できるように
努力してまいります。

それでは,メルマガ66号をお届けいたします。


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●《速報》QMS戦略セミナーのご報告
   『QMSにおけるコンテクストの意義を考える
                   〜組織の現状把握が変革の原点〜』
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3月24日,株式会社イノベイション代表取締役 山上 裕司様をお招きし,
『QMSにおけるコンテクストの意義を考える〜組織の現状把握が変革の原点〜』
と題して,事務局の方々を対象に,QMS戦略セミナーを開催しました。

今回のQMS戦略セミナーは,予ねてより会員の皆様からもご要望のありました
ワークショップ形式のセミナーとなりQMS委員会初の開催となりました。

付属書SL(Annex SL)の共通構造を採用する次期ISO 9001では最初の要求事項と
して,組織がQMSを採用し導入する前提条件(すなわちコンテクスト:Context)
を理解し,決定することを要求しています。

ではQMSにおけるコンテクストとは何でしょうか。その意図するところは何で
しょうか。この疑問を解き明かし,次期改正に相応しいQMSを再設計し推進す
る事務局の方々にイメージを掴んでもらうことが,今回のQMS戦略セミナーの
狙いでした。

山上様からは,地域に根ざした小さなパン屋さんを題材に,コンテクストが事
業に与える影響を分りやすく説明して戴き,QMSでコンテクストを積極的に活
用することの意義を解説して戴きました。

ワークショップでは,事前に編成された4〜5名のグループ単位で,同じくパン
屋さんを題材に,「プロセス描写表」を使ってコンテクストからの影響を考察
し,組織の課題を洗い出す思考訓練が行われました。

「プロセス描写表」は,「個々のプロセスの意図する結果」,そのプロセスに
「必要な能力や知識」,「意図する結果と能力に影響する要因」,「コンテ
クスト分類と考察」,「組織の課題」の順で分析していくもので,それをもと
に「リスク・機会への対応」,「必要プロセス特定」まで結び付けていく手法
であり思考法です。

各グループとも活発な意見交換がなされ,コンテクストを理解し決定していく
ことの意義を体感できたようです。

アンケートからは,参加者の殆どの方から,「QMSにおけるコンテクストへの
理解が増した」「プロセス描写表の考え方が役に立つ」「今後もワークショッ
プ形式のセミナーを期待する」などの多数の意見が寄せられ,大好評のうちに
今回のQMS戦略セミナーを終えることができました。

QMS委員会では,今回のアンケート結果を踏まえ,今後の事務局向けワーク
ショップの企画について検討してまいります。

今回の受講者アンケートの結果は,以下の会員専用サイトからご覧戴けます。
是非,ご一読ください。

 <会員専用サイト(ID,PWが必要です)>
 http://www.ciaj.or.jp/qms_m/pdf/150324.pdf


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●異業種見学会のご報告
  『お客様と触れ合い個性を育む東京の酒蔵「小澤酒造株式会社」』
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2月27日,春めいた好天の中で20名の会員の方に参加戴き,東京都下の青梅市
沢井にある小澤酒造株式会社にお伺いして異業種見学会を行いました。

今回の見学会では,小澤社長のご講話,酒蔵の見学,意見交換に利き酒という
盛りだくさんの内容でありました。

特に,小澤社長のご講話では,(1)創業の秘話,(2)日本酒業界の構図,(3)嗜
好品としての日本酒の品質,(4)日本酒と酒(縄文から平成まで),(5)日本酒の
分類,(6)飲める人,飲めない人(犠牲者を出さないために),(7)日本酒と健康
(醸造酒はアルコール入り発酵食品)といったテーマで,事業〜業界〜品質〜食
と文化〜日本酒〜健康について1時間半にわたりお話し戴き,すっかりと小澤
社長の世界に引き込まれてしまいました。

QMSという点では,一見,関係がないようにも思われがちですが,様々な事業
環境の中で,新たな発想や意思決定により,チャレンジをされてきた話のひと
つひとつに「変化への対応」という点で我々にとっても大きな気付きがありま
した。

酒蔵の見学でも小澤社長直々のご案内で,各工程の説明に様々なエピソードを
加えた形でご説明戴きました。特に,発酵の工程では勢いよく発酵している様
には歓声が上がるほどの感動がありました。

意見交換と利き酒では,小澤酒造で扱っているすべてのお酒の利き酒ができる
という小澤社長の格別なお計らいで,お酒を楽しませて戴くと共に,小澤社長
や会員相互で,日本酒にまつわる文化・歴史・嗜み方を中心にこの場でしか聞
くことのできないような意見交換をすることができました。とりわけ,小澤社
長には,初めから終わりまでご同行戴き,よい機会と時間を与えて戴き感謝す
る次第です。

今回の異業種見学会では,お酒を飲めない方,お酒に興味のない方もおられま
したが,全員の方にアンケート回答を戴きました。アンケート結果では,社長
講話,酒蔵見学,意見交換,利き酒について,事前の関心度に対して実施後の
評価がいずれも上回っているという大きな傾向が見られました。

見学会全体の満足度評価は平均91%でした。理由を見ると盛りだくさんの内容,
全体的な内容の濃さ,聞いたり見たりすることで興味が湧いてきた,利き酒が
よかった(話を聞いたうえで味わうことで奥深さを感じた)というコメントが
上位を占めておりました。

今回の異業種見学会では,異業種である小澤酒造様から多くの気付きともに,
優れたものや素晴らしさをたくさん感じることができました。異業種見学会を
実施する価値はこういう部分にあることを再認識いたしました。

また,利き酒については,小澤社長のご配慮の中で,小澤酒造の酒造りの素晴
らしさも評価されたということになると思います。

今回の受講者アンケートの結果は,以下の会員専用サイトからご覧戴けます。
是非,ご一読ください。

 <会員専用サイト(ID,PWが必要です)>
 http://www.ciaj.or.jp/qms_m/pdf/150227.pdf


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●QMSサロンの報告
  「リスクベースドシンキングのQMSへの具体的な応用と展開」
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第15回「QMSサロン」を 3月13日に開催いたしました。

QMS委員会フェロー 山本 正 様(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え,
「リスクベースドシンキングのQMSへの具体的な応用と展開」をテーマに意見
交換が行われました。

今回は,ISO 9001:2015年版(予定)要求事項に組み込まれる,リスクベース
の思考に着目して,様々な切り口から意見を出し合いました。

開催にあたり,ファシリテーターの山本氏からは,「QMSを運用して行くため
に,QMSが置かれている内部の状況だけでなく,外部の状況も考えないといけ
ない。」というコメントを戴きました。

まずは,頭の柔軟体操で,「飛行機の安全運航を支える人々」で誰が一番大事
な人かという問いに対し,参加者は,“運行計画者,管制官,パイロット,管
理監督者,機体整備士,航空会社の社長”など,様々な意見と理由が述べられ
ました。

これに対し,山本氏は,「回答はどれも正解で,どこを重点に置くか視点で違
ってくる。」ということで,「現場でとっさの対応をするのはパイロットであ
るが,一番大事なのは,下記の理由により,飛行機の設計者」との解説があり
ました。

パイロットは,飛行機の安全運航の当事者として最も重要な役割を果たしてい
ますが,いかなるパイロットも,安全な飛行機(システム)がなければ,いか
に操縦しようとも安全運航に限界があります。

私たちは,ともすると飛行機を操縦・運用するところに(すなわち現場に)焦
点を合わせ問題やリスクを想定しやすいので,その現場がよって立つ最も本質
的な基盤(システム)に思いを寄せることはめったにありません。

すなわち,運用上のリスクは至るところにあるのですが,全体のリスクを軽減
させるには,システム上のリスクを軽減することであるということを理解する
ことが大切だということに気が付きました。

そして,参加者の理解を共通化するためのにリスクの定義を明確にしました。

用語の定義「3.09 risk」では,「影響とは,期待されていることから,好ま
しい方向又は好ましくない方向にかい(乖)離すること」となっています。

これは,誰にとって好ましいのか,好ましくないのかを考える必要があります。
ある人(会社)にとってはリスクかもしれませんが,別なある人(会社)では
オポチュニティ(機会)である場合もあるということです。

“リスクに基づく考え方”とは,「品質マネジメントシステム並びにそれを構
成するプロセス及び活動を計画し,管理するために必要な形式の厳密さ及び程
度を定義するに当たって,リスクを定性的に(及び組織の状況によっては定量
的に)考慮することを意味している。」ここが本質です。

これは,何を意図しているのかについて解説がありました。

リスクベースドシンキングの概念がISO 9001:2015に提示されたことにより,
従来の出来事を起点とするPDCAサイクルによる改善だけでなく,意思決定する
というマネジメント領域が組み込まれることになったとのことです。

私たちは従来,QMSの中で文書化による知識や経験の蓄積とルール化を進めて
きましたが,それをもう一つ踏み込むことになるとのことです。

すなわち,下記の2つの意思決定ルートが出来るという考え方です。

(1)従来の意思決定によるルール化(文書類は意思決定の結果)

(2)どのように意思決定するかのルール化
  (どのような事態になったら意思決定するのかをあらかじめ考えておく。
   すなわち,リスクベースドシンキング)

そして,システム上のリスクは,なぜ出現するのかについてお話がありました。

QMSは,さまざまなプロセスの相互作用,相互依存により機能しており,ひと
つのシステムで,フィードバック・プロセスを持っているのですが,
ISO 9001には,フィードバック・プロセスを明文化していないということで,
本来あるフィードバック・プロセスを考慮しないことにより,リスクになって
しまうこともあるということでした。

フィードバックは,正(自己強化型)と負(バランス型)の2種類の形を持ち,
プロセスはお互いに作用しあうという関係性があるので,それを理解している
のといないのでは,QMSの運用の結果が変わってくるとのことでした。

リスク評価の難しさは,評価する時点のインパクトが1でも,3年後には3にな
り,5年後には9になるかもしれません。リスクは定常的にリニアに変化すると
は限りません。システムとしてフィードバックがかかることも考えないとなり
ません。フィードバックも,そのタイミングや内容の不適切性でも結果が変わ
ります。もし,フィードバックがかからない場合は,これもリスクとなります。

意思決定のためのルール化では,どのような事態になったら,意思決定するの
かをあらかじめ考えておくことが,リスクベースドシンキングであり,対応す
る方法論を考えておくことが大切だと分かりました。

私たちは,会社で何気なく,リスクという言葉を使っていますが,実は,これ
ほどにも奥深い意味を持つということを改めて気が付かされました。

今回のサロンに参加して,思考が固着化することが最大の企業のリスクである
ように思いました。

今回は,リスクベースドシンキングがテーマということもあり,3名の方が新
規参加して下さりました。そして,皆が自由討議するサロン形式の進行も
大変好評な感想を戴きました。

毎回勉強になり,参加することが楽しみな「QMSサロン」です。

次回,第16回は,2015年7月に開催予定です。

「QMSサロン」は,会員間コミュニケーションを取ったり,リレーションを築
くにも最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。

皆様のご参加をお待ちしております。


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●JABマネジメントシステム シンポジウムの報告
  「2015年改訂に対応するマネジメントシステム」
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3月19日に有楽町朝日ホールで開催された「第3回 JABマネジメントシステムシ
ンポジウム」に参加しましたので,概要を報告いたします。

今回のテーマは「2015年改訂に対応するマネジメントシステム(以降MS)」で,
品質や環境のほか,さまざまな分野を扱うMS規格が開発・発行されている昨今
の状況下において,複数のMSをいかに効果的に活用し信頼性を確保するかです。

今年は2015年版のISO 9001及びISO 14001の改正を控えており,規格の改正が
組織のMSに与える影響について3つのWGから,製造業の視点によるもの,サー
ビス業の視点によるもの,またISO 14001への具体的対応例などの検討結果発
表がありました。その後,第1回「JABアワード」の表彰が行われました。

1. 基調講演「ISO 9001, 14001改定の要点」:
           筑波大学ビジネスサイエンス系 教授  山田 秀 氏

 今回のISO 9001,ISO 14001は,用語の統一などを意識して,共通規格書
 (付属書SL)に従い開発された。インパクトとしては大きく4点ある。
  (1) 戦略的な目標の強化
  (2) 事業プロセス統合
  (3) 品質パフォーマンスを見る
  (4) 顧客重視
 ”リスクと機会”の捉え方としては,基本は「起こりうる事態に適切にあら
 かじめ取組み,好ましくない事態を取り除くこと」である。

2. JAB MS研究会の報告:
 WGメンバーは,組織,認証機関,認定機関及び学識経験者で構成され,以下
 の報告がありました。

 WG1:「2015年の改正が製造業のQMSに与える影響・インパクトを考える」で
   は,ISO/DIS 9001が与える影響をビール製造会社をモデルにし,リスク
   及び機会への取り組みを煮沸工程での危害分析による管理や,パフォー
   マンス評価を営業や商品開発,製造部門などの部門,期待される成果を
   評価指標とした分析例の報告がありました。

 WG2:「DIS 9001に基づくQMS構築のポイント〜サービス業におけるQMSを改め
   て考える〜」では,小規模のサービス業でMSを適用する場合の具体例を
   提示しながら(焼肉店をモデルとして研究)お客様の満足を得るための
   要素,リスク及び機会への取り組み,必要な業務プロセスをタートルダ
   イヤグラムで抽出整理した事例の報告がありました。

 WG3:「ISO 14001(2015年版)への具体的な対応例」では,6項目の具体的な
   アクションを取り上げ,事業プロセスへの統合,パフォーマンスの向上
   (指標を用いて評価),ライフサイクル思考,脅威及び機会に関するリ
   スクなど具体的な報告がありました。

3. 第1回「JABアワード」表彰:
 今回,ISO MS有効活用事例の表彰として「品質MS部門」と「環境MS部門」で
 計5件の企業が表彰されました。これらの受賞企業の事例報告会が6月2日に
 開催されます。(参加費無料)

今回のシンポジウムは,小規模サービス業でMSを適用・構築する際に気づきが
多く得られるように工夫されているだけではなく,”顧客要求事項の明確化”
や”データの分析・評価”など事業規模の大小に関係なく新鮮な気づきが得ら
れる良いものであったと思います。


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●ISO 9001関連の最新動向 
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前号では2月にリトアニアのヴィリニュスでTC176/SC2/WG24の会合が行われる
旨の報告をしましたが,現時点で詳細の情報は掴めておりません。

しかしながら,ISO 9000,ISO 9001ともにひと通りの検討を終了し,これまで
の予定通り,7月にFDISが発行されてから2か月間のFDIS投票が行われたのち,
ISが9月に発行の見込みとなったようです。次号のメルマガではもう少し詳細
な情報をお届けできるよう情報収集を致します。

また,これに伴い,日本規格協会ではJIS発行を12月としたうえで,関連する
書籍ならびに説明会について以下のスケジュールを公開しております。

  <書籍関連>
  ・FDIS対訳版発行           : 7月
  ・『効果の上がる実践のポイント』発行 : 8月
  ・IS対訳版発行            :10月
  ・JIS発行               :12月
  ・『要求事項の解説』発行       :12月
  ・『新旧規格の対照と解説』発行    :12月
  ・『やさしいISO 9000入門』発行    :12月
  ・ポケット版発行           :2016年 2月

  <説明会関連>
  ・FDIS説明会 : 7月 (東京・大阪)
  ・IS説明会  : 9月 (東京・名古屋・大阪・福岡)
  ・JIS説明会  : 9月 (東京・名古屋・大阪・福岡)


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●TL 9000コーナー「東京BPCで,TL 9000WG活動を講演」
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4月14日〜16日に,TL 9000に関連して「2015 APAC 東京ベストプラクティス会
議」が開催されます。

14日〜15日は,基調講演,招待講演,ベストプラクティス事例講演など行われ,
16日午前にワークショップ「TL 9000 Q&A」を行い,閉幕します。

CIAJからは,14日の午後にTL 9000ワークグループ活動の紹介を行います。内
容は,ワークグループについて(ワークグループ設立の背景,ワークグループ
の主な活動内容,今までの活動成果など)発表します。

日本でのTL 9000の国際的会議としては,2000年6月に「クエストフォーラム東
京国際会議」(横浜パンパシフィック・ホテル)を開催して以来,15年ぶりと
なります。皆様が在職中に再度有るか無いかの希少なチャンスです。

皆様のご参加をお待ちしております。

 <QuEST FORUM>
 http://www.questforum.org/


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●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
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寒さの峠も越えたようで,日々暖かくなってきております。桜の開花予想も発
表され少し浮きうきとした気分になるのは私だけではないでしょう。

一方で,当委員会の中ではISO 9001:2015のリスクベースドシンキングに関心
が高まりつつあり,リスク管理,リスク対応,リスクと機会への取り組みなど
さまざまな関心事が取り上げられています。リスクも花盛りのようです。

そこで,リスクへの取り組みを行う前にリスクとはどのようなことなのかを知
らなければならないでしょう。桜のシーズンは短いものですから,QMS内のリ
スクへの関心もその様にならなければよいなと思っています。

さて,冒頭のご挨拶で示した“暖かくなった”という意見は主観なので,人に
よってはまだ寒いと感じる人もおります。その時の気分次第ということでしょ
うか。主観による主張(意見)は個人的な生活では多くの場面でつかわれてい
ますが,企業の組織活動では根拠性の問題もありあまり使われません。

組織活動のなかでは,主にデータなど信憑性が高そうな客観的主張が中心とな
ります。しかし,組織は人々が動かすものですからその活動の根底には主観的
主張が流れているものです。

一般的に,人は自分の意見を強化するデータを収集する傾向をもち,自分の見
解と異なるデータは無視するものです。それゆえ,一見すると客観的データの
ように見えるものでも,何らかの主観的なバイアスが影響している可能性が高
いのです。

例えば,“経験的にそれは危険である”とか,“できそうもない”とか,“あ
の人は信用できない”とか言葉に出さないとしても主観的な感覚をベースに何
らかの判断をくだすことがあります。

このように見ると,リスクや機会といった未来予想は根拠性が乏しい主観なの
で,何かしら客観化することが求められます。例えば,天気予報のように過去
のデータが豊富にあり因果関係もある程度明確に分かっている場合,リアルタ
イムで各地の天気の状況が分かればかなりの精度で近未来の天気は推測できる
わけです。

しかし,人々が介在する活動は主観的な要素がどうしても含まれ,企業の外部
・内部の影響に左右されるためさまざまに変化します。それゆえ,ちょっとし
た個人間の意見や感情のもつれでも,その未来予測は大いに変化する可能性が
あるものです。

このような主観性と客観性の対比は企業だけでなく社会の中でもあります。そ
れは,文化と文明の違いに似ています。文化は“これが文化です”と具体的に
特定することはむずかしいのですが,皆が何となく共有している風土のような
ものです。

しかし,意識するかどうかは別として人々の行動や思考に見えない形で影響を
与えているように見えます。例えば,日本では落し物が戻る率が非常に高いの
ですが,多くの国々では落し物はまず帰ってこないのが当たり前のようです。
これは,文化的要素が多いに影響している例だと思います。

一方,文明は物事を客観化する努力の中からはじまります。科学的進歩や工業
的進歩などは,客観化からはじまるように見えます。それゆえ,曖昧さを取り
除き精度を高める努力が常に行われます。文明の方が,例えば車とか携帯電話
のように人々の行動に直接影響を与えるものを生み出すので実感しやすいもの
です。しかし,文化も文明と同じく人々の行動様式に影響を与えていると感じ
ています。

さて,企業活動の中にも明示化されていなくとも企業文化(風土)みたいなも
のを何かしら感じることがあります。例えば,大きな冒険はしないけれども着
実に仕事をこなす企業風土もあれば,冒険はあるもののユニークな製品を出し
続ける企業もあります。それゆえ,その企業の風土が社員個人の思考方法や行
動様式に投影されていると感じるときがあります。これは文化的な影響なので
しょうか。

このように見ていくと,企業文化(風土)などの主観要素は企業の経営層から
社員まで,そのメンタルモデルに影響し思考や行動に影響を与えます。場合に
よっては,トヨタさんのように関連業者さんたちのメンタルモデルまでにも影
響する場合もあります。一方,文明的な客観性は主観的要素を排除し合理的で
あろうとします。客観化は皆が具体的に理解でき,評価できる良さがあります。

さて,目を転じてISO 9001ベースのQMSを見てみますと,企業風土のような文
化の香りを感じることは少なくむしろ機械的なオイルの臭いを個人的には感じ
ます。かみ合わせの悪い歯車にオイルをさしながら何とかまわしているような
臭いです。(これは,あくまでの私個人の主観です。)

QMSでは,基本的に手順,データなど客観的な主張をもとに活動することを求
められています。これは,もともと“事実に基づくアプローチ”を採用した段
階でこれらの要件は形づけられたものでしょうから,一見すると面倒ですが比
較的見通しの良いある意味公平なアプローチだといえます。またレビューが可
能なアプローチでもありフィードバックしやすい仕組みです。

一方で実際には,形骸化や生産性が上がらないとの指摘にみるように,現場に
しっくりこない部分が残ってしまいました。その原因の一つに文書化と記録に
よる弊害が挙げられています。

すなわち,文書類の網羅性や精度の課題とともに現実との対応性が問題視され
ているようです。これは,文書化(客観化)できることの限界だけでなく人間
系がもつ主観性をうまく組み込めていないことから起きているかと見えます。

客観化できる要素(監査可能なもの)だけでQMSを構築すると人間系の要素は
除外される傾向にあるでしょう。それゆえ,仕事は決められたことだけをやっ
ていればよいのだと考えるメンタルモデルをもつ人々が増え,業務が形骸化し
思わぬ結果となってしまったのではないでしょうか。

しかし,与えた仕事すら完全にこなすことができない私には,与えられた仕事
をきちんとこなすことが形骸化を招いたとは思っていません。要は人間系を含
め与え方の問題だと思っています。

その様な議論の中,今回のISO 9001改正では,“リスクに基づくアプローチ”
という不思議なアプローチが導入されましたので,ひも解かなければならなく
なりました。なぜなら,リスク概念を投入するとは,これまでの“事実に基づ
くアプローチ”と相反するもののように見えるからです。

これまでリスク要素は,PDCAサイクルでは計画の段階でリスクをコンテンツ
(内容)として盛り込み実現可能性をレビューし,さらに,レビューなどチェ
ック過程でそこまでの出来事と結果を評価し新たなリスクについて検討してい
るはずだからです。それなのに,なぜ今さら声高に“リスクベースドシンキン
グ”などと騒ぐのか不思議な気がしたからです。

一般的にPDCAサイクルは製品実現のプロセスの中で行われますので,それゆえ
外部・内部のコンテキスト(状況)の変化はQMSのインプットとしてシステム
に投入される要素です。昨今のように企業の内部および取り巻く外部のコンテ
キスト(状況)が激しく変化する場合,リスクとしてそちらに目を向けさせる
必要性は理解できますが,それをQMSの新たな原則とすべきなのかは疑問を感
じます。

なぜなら,企業内外のコンテクストはビジネス全体に関わる案件なので経営戦
略や事業計画などの段階で検討されるべき要素であり,経営層による意思決定
に関わるものです。その結果,組織変更,資源分配,ビジネス計画と戦略が練
られてきています。それゆえQMSレベルの話題ではないような気がします。

また,これまでもマネジメントレビューとして経営層にフィードバックをかけ
指示を受けているので,この案件はフィードバックコンテンツ(内容)のレベ
ルと質の問題ではないでしょうか。

また他の見方をすれば,リスクとはそもそもどのように精度を上げても所詮は
確率的なものであり不安定です。仮に100万年に1度の確率でも,明日起きるか
もしれませんから,神様でもない私たちが発生確率を想定しインパクト評価し,
重要度を決定したとしても所詮は推測です。

実際ビジネスを行った方であれば,予想もしていないことが突如大きなリスク
として出現することを多かれ少なかれ体験しているのではないでしょうか。そ
の意味において,予想はあくまでも予想であり限界があるということを前提と
しなければなりません。だいたい事実に基づくアプローチもむずかしいのに,
予測に基づき行動できるとは思えないのです。それこそ本当のリスクを招き入
れるようなものではないでしょうか。

また,さまざまな分析手法を使い客観的にリスクにアプローチしていると思っ
ていても,実際は多くの主観的な予測が入り込むものです。自分が期待してい
る結果が出るように評価する主観的バイアスは当然のように発生し,分析に使
うデータの網羅性や信憑性にも影響を与えています。このように見ると,リス
クや機会の予想は“生もの”という感覚を私は抱きます。

それゆえ分析結果を無批判に信じることは危険です。仮にリスク一覧表を精度
よく作って評価したとしても,内部・外部の環境の一部が少し変化しただけで
リスク評価は直ちに変化しますから,過去の評価を放置すると実態に合わない
リスクに注目し続けることになり,新たなリスクの発生に気がつかないなどの
愚行を招くかもしれません。要は,常に目を開いて先を見ることが肝要です。

車の安全運転には危険予知能力とハンドルを切る意思決定応力が必要だと思い
ますが,手もとのリスクマップを眺めてばかりいると崖から落ちるかもしれま
せん。精神的にはリスク一覧表を作って何となく安心感は高まりますが,必要
に応じて見直しをしないとすれば極めて形骸的な活動となり,変に安心感を与
えるがゆえに罪が重くなります。

また,リスクや機会はタイミングにも依存するので,あらゆる個所,あらゆる
時点で存在するものなのでしょう。これらを洗い出し評価・対応を考えるとな
ると大変なことになることは目に見えています。重要性を考えて,ほどほどが
よろしいかと思います。

むしろ,リスクや機会はこれまでのQMSのPDCAサイクルの計画段階やレビュー
段階で定期的に見直した方が実態に沿った対応ができるのではないでしょうか。
そして,日々のマネジメントの中で新たなリスクが生じないかを注目していく
ことが実際的でしょう。

さて,今回のISO 9001:2015のドラフトには,「次の事項のために取り組む必
要があるリスク及び機会を決定しなければならない」(6.1.1項)という記述
があります。その対象事項として例えば,「品質マネジメントシステムが,そ
の意図した結果を達成できることを確実にする」とあります。

しかし,達成することに努力することは当然として,どの程度確実にするのか
は疑問が残ります。当たり前ですがビジネスの世界では競合他社もあり,技術
的進歩も激しく,また人的資源をはじめ使える資源の質や量にも限界がありま
す。それゆえ意図した結果を達成すること自体に大変な努力が要ります。

ISOに言われるまでもなく顧客要求や法的要求事項を満たすことは当然として
も(そうでなければビジネス自体がなくなるので),目標は企業力とのバラン
スで決まるものです。

仮に,リスクが発生しないように安全な目標を設定すれば,目標は達成できて
も競争力がなくなり企業自体が衰退しますし,一方で,挑戦すれば失敗のリス
クが大きくなります。しかし,成功した時の報酬は大きくなります。それゆえ,
リスクとは悪いものではなく取り組み方次第で機会にもなります。

リスクや機会はそれ自体に“リスク”や“機会”といったラベルが貼られて存
在するわけではなく,リスクにするのか機会にするかは企業の取り組み方で変
わるものです。それゆえ,リスクベースドシンキングだからといってリスク一
覧表を作ってラベルを貼り終わりといった幼稚化を促進しないように願うばか
りです。

この要求事項の本心は,“目標に対しできる限り合理的にリスクや機会を想定
し,常に環境の変化に注意しつつ,目標達成に努力しろ”と言っていると個人
的には理解しているのですが,“確実にする”という主観的主張に対しどの程
度を確実といえるのかは半信半疑です。

話は少しそれますが,写経によくつかわれている「般若心経」という経典があ
ります。それは過去・現在・将来の全てを見通せる観自在菩薩(かんじざいぼ
さつ)さんが,仏陀の智慧第一のお弟子さんである舎利子(しゃりし)さんに
話しかけているものです。

観自在菩薩とは世の中の全てを見通せる力を持っているのですが,それでも菩
薩という修業の身です(すごい!)。そこでさらに業を深く積んで,何となく
分かったような気がすると(悟り),舎利子さんに話しかけています。

この世の中は「色即是空 空即是色」だよと語られています。この言葉は意味
が深いので私のような俗人が本当の意味を理解するのはむずかしいのですが,
個人的には形(色)あるものは実態ではなく(空),その逆も真であるとおっ
しゃっているようです。

これをリスクに置き換えますと,“リスクと思っているものはすでにリスクで
なく,リスクがないと思っているところにリスクがある”と置き換えてみまし
た。般若心経にはそれ以外にも気になるフレーズが多いのでご興味がある方は
一読するとよいでしょう。

ここで何を示したいかというと,仮に万能の観自在菩薩さんでも“確実にする”
ということは難しい事だということです。まして,全てを見通せない私たちに
はさらに困難なことです。それゆえ,私たちのできることはリスクや機会の範
囲を限定し,その中で自分たちができることで対応することが“確実にする”
事なのだと思っています。

具体的には,まずシステム内で働く人々が利用できる何らかのルールが必要に
なります。良くできたルールは業務の不安定さを軽減し,さまざまなエラーを
防止してくれます。それゆえ日常的なリスクをうまく回避させてくれるでしょ
う。

また,システム全体としてルールをうまく組み合わせれば無駄な重複や混乱を
避けられるので,業務品質の安定性と生産性も向上するでしょう。これは,文
書化を通して示す組織の意思決定事項であり,QMSの基本ですよね。

一方,意図してルール化しないことも重要です。これは人間系への対応です。
創発性や主体性を求める活動では,ルール化することにより逆に業務の質を低
下させるリスクが生じます。しかし,ルールを定めない仕事にだれしもが付け
るわけではありません(遊びと仕事が区別できなくなるので)。

その個人の主体性,力量,知識,やる気,積極性,モラルそして実績などさま
ざまな事柄を勘案し従事させることになるでしょう。それゆえ,ごく限られた
人々だけに与えられるものです。貴重な人的資源ですから,奇妙なルールで縛
らない方が良いはずです。

また,ルールを定めた時に想定していた範囲を超えて,意図しない出来事や課
題が出てくるときに生じるリスクがあります。そんなことが起きるのかと思う
ようなことです。

規格付属書(参考)のA.5 適用可能性には「・・・組織が遭遇するリスク及び
機会の性質・・・」と記載されていますが,“遭遇”(encounters)とは“思
いがけない出会い”などとも訳されますが,リスクや機会の特質をうまく表現
しています。

だいたい皆がリスクと思う事柄はその時点でリスクではなく,すでにマネジメ
ント対象なのです。例えば,為替変動をリスクととらえている企業があります
が,為替を一企業でどうすることもできるはずもなく,できることは単にそれ
に対し企業としてどのように対応するかだけですから,マネジメント領域の意
思決定の問題です。

これは偶発的に遭遇するリスクとは違います。予想を超えて偶発的に遭遇する
リスクは,事前に想定範囲内の事柄であればシステムとしてうまく対応できる
のですが,企業のコントロールが及ばないリスクや想定外のリスクに遭遇して
しまった場合,いかに優れたシステムといえども対応できなくなります。すな
わちそのリスクに対しては能力的に無能力化するか,サチュレーションするわ
けです。

このようにシステムは決められた方程式は素早くとけるのですが,方程式がな
い想定外の応用問題を解くことはできないのです。このような場合への対応は,
どのようにして意思を決定するかを決めることからはじめなければなりません。

災害時のコンテンジェンシと似ていますが,遭遇するリスクの種類により対応
がかわるので実際には意思決定の方法論しか準備できないでしょう。例えば,
その様な状況になった場合,経営会議にかけ経営層の指示を受けるぐらいしか
決められないでしょう。一番困るのは,自分たちの組織では手に負えないので
無意識に隠ぺいしてしまうことです。これはリスキーですね。

また,システム化されているがゆえに,迅速に変更することができない場合も
あります。そもそもシステムはある条件下で安定化を目指す仕組みなので,内
部・外部環境が急速に変化した場合,対応できず機能不全を起こす可能性があ
ります。その点,小規模事業はシステムも複雑でない場合があり,また人間系
を基盤とし,あえてルール化していないので,社長の一言で動けるのなど対応
力としては優れている部分がありそうです。

また,プロセス化できない技能など身体知や知識,メンタルモデルに影響する
リスクは,教育訓練などで間接的に対応することになります。しかし,ここで
の問題は教育訓練と業務成果との因果関係が定量的に把握できないことです。
また結果が見えるまで長期の時間がかかるため,効果が見えづらいく軽視され
る傾向にあります。

ここまで,いくつかのリスクのあり方と対応を見てきましたが,実際のところ
はルールとして取り込むことができる要素はシステム的に管理できます。それ
以外の事柄はマネジメントの皆さんが,日々カバーしながら対応していくこと
です。

私はこれをPDCAサイクルの“学習フィードバック”に比し“マネジメントフィ
ードバック”領域と呼んでいます。当たり前ですがマネジメントの皆さんがプ
ロセスにいかなるフィードバックをかけるかが重要となりますので,マネジメ
ントの皆さん自身の資質自体がリスクと機会を生み出す原点となります。

ここまで,システムとして起こるかもしれないリスクと機会について見てきま
したとおり,PDCAサイクルに見る出来事を起点とした学習サイクルと,それに
よる改善対応だけではうまく対応できないところがありました。

また,未然防止のサイクルはリスクと機会を予測することから起動しますが,
予想能力の質が課題となります。これには例えば,知識,情報,メンタルモデ
ル,組織的防衛反応,因果律の想定など,さまざまな要因が含まれるため,
PDCAサイクルとは別次元の能力が必要になります。

また,QMSもシステムなのでシステムダイナミックスがあり,“一つの結果は
一つの原因からなる”という安易な想定は役立にたず,複合した原因を見極め
る能力も求められます。相当な経験と知識が必要になりそうです。

さて,今回は短く書こうと頑張ったのですが話題が話題でしたので長々と書い
てしまいました。お許しください。リスクベースドシンキングを私自身がよく
理解していないかもしれませんので,読者のみなさんご自身でご判断ください。

また,今回の改訂要点を見ると,一般的に言われている経営論や戦略論のつま
み食いみたいな印象を受けるのは私の勉強不足なのだと思います。それゆえ,
今後専門家の先生方からさらなる情報が必要だと思います。それも参考にしな
ければなりませんね。

なお,システムが本質的に持つリスクについては,たまたまですが今月開催さ
れた定期QMSサロンでご紹介しました。このメルマガのQMSサロンのコーナにて
一部紹介されていますので参照していただければ幸いです。


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●コラム「勉強法」
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このコーナーを初めて執筆いたします。最近読んだ書籍から「勉強法」につい
て感じたことを紹介させていただきます。

やるべき仕事は常に「一つ」と定め「ココ!」という一点を見つけそこに力を
集中すればドミノ倒しのように目覚ましい成果がもたらされると「ワン・シン
グ」で解説しています。即ち,健康さえ損なわなければ,否,健康を気にしな
い位の気概と突進にこそ意味があるという説で,全く同感です。勉強において
も効果が大いに期待できる集中方式と言えます。・・・(1)

一方,規則正しい生活,バランス良い知識習得がオーソドックスな勉強法で,
例えば,グローバルに活躍することを目指すのであれば,英語は必要最低限の
道具として,日本人としての教養もコミュニケーションの基礎として身に着け
ておくべきと「君たちは何のために学ぶのか」では述べており,これも納得で
きます。基本をしっかりと身に着けるバランス方式といえるでしょう。・・・(2)

この集中とバランスの二つの方法は一度には両立しないのですが,両者共通に
活用できるのは積み上げることです。方法に係らず,勉強の成果や研究結果を
知識として,ノウハウとして,データとして累積してゆけば,その後いつでも
活用できます。

例えば 3世紀に渡る20ケ国の経済データの積み上げを丹念に行った成果として
発表されたのが「21世紀の資本」です。数値の裏付けがあるだけに説得力があ
り世界的ベストセラーとなっています。資本による収益率が経済成長率を上回
るときに格差が拡大していき,格差是正には累進課税や資本税を課すことが有
効ではないかという学説です。・・・(3)

積み上げた結果が個人の頭の中に保管されれば知識となり,暗黙知,インタン
ジブルズとも呼ばれ,物理的な保存であれば文書や記録となり形式知のベース
となります。

そして,勉強や研究の積み上げた成果をどう活かしていくかを考察することも
新たな勉強の出発点になります。集中型でもバランス型でも積み上げることで
知識の引き出しが増えてゆくことは間違いありません。

新年度へ向けて,集中とバランスを意識し,効果的な積み上げを実践してゆき,
成長への糧としていきたいと思います。

参考図書
(1)「ワン・シング」 ゲアリー・ケラー著
 (2)「君たちは何のために学ぶのか」榊原 英資著 
(3)「21世紀の資本」トマ・ピケティ著


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●編集後記
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東京では桜が満開を迎えました。今では桜といえばソメイヨシノが主流となっ
ていますが,ソメイヨシノは日本原産のエドヒガンザクラとオオシマザクラの
交配で生まれたと考えられ,ソメイヨシノのほぼ全てがクローンのようです。

先日上野公園に現存する1本の桜がソメイヨシノの原木であり,それが全国に
拡がった可能性があるというニュースがありました。今ではそれが国内はもと
より海外でも拡がりをみせ,米国・ワシントンのポトマック河畔なども花見の
名所になっているのはよく知られた話です。

関東地方は今が桜の見ごろですが,桜前線も北上しゴールデンウィークの頃ま
では桜を楽しむことができます。たまには一息入れ,是非,ゆっくり桜を鑑賞
して見てはいかがですか。

最後までお読み戴き,ありがとうございました。


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──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」──

* 配信追加は下記にお知らせください。
 mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp
* 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
    QMS委員会メルマガ編集部
 http://www.ciaj.or.jp/top.html
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