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━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会 「BSCセミナー,新年1月に開催いたします!」 2014年12月1日発行 第64号 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━ ≪ 第64号 目次 ≫ ・はじめに ・吉川先生によるBSCセミナーの開講日程が決定しました ・<予告>今年度第2弾の異業種見学会は“東京の酒蔵”です ・QMSサロン 『システムの個人的考えの隙間を埋める』報告 ・ISO 9001関連の最新動向 ・TL 9000コーナー「TL 9000説明会報告,APAC-BPC情報 他」 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」 ・編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●はじめに ─────────────────────────────────── QMS委員会会員の皆様,こんにちは。 東京では今週の雨のあと,すっかり雪化粧した富士山が見られるようになり, 季節の変わり目を感じる今日この頃ですが,会員の皆様には如何お過ごしで しょうか。 ISO 9001関連では,ISO本部からのISO/DIS 9001に対する妥当性確認プログラム が出され,TC176国内委員会からは業界団体への強い協力依頼がありました。 QMS委員会では会員の皆様に妥当性確認プログラムへの参画を呼びかけ, 急なお願いにも関わらず25の組織の皆様に参画して戴きました。 妥当性確認は,ユーザ視点でISO/DIS 9001をどのように見ているかを広く意見 聴取する目的があり,これへの参画は,ISO 9001をよりよい規格とする社会 貢献に他ならず,FDISへのインプットの一部として用いられます。ご協力を戴 いた組織の関係者の皆様には,改めまして御礼申し上げます。 今年度はイベントの実施時期が例年より遅めの設定となっています。今号では 予告を含め2件のご案内をしております。ご一読戴き,是非ご参加下さい。 それでは,メルマガ64号をお届けいたします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●吉川先生によるBSCセミナーの開講日程が決定しました ─────────────────────────────────── お待たせいたしました。QMS委員会ではお馴染みの横浜国立大学名誉教授で ある吉川先生の直接指導によるバランススコアカード(BSC)は,1月28日 (水)〜29日(木)の日程で例年通り少人数定員制の2日間コースとして開講す ることが決定いたしました。 企業では,日常の業務においてもプロジェクトでも予定通り確実に進めること が当たり前の状況となり,マネジメントの重要性が格段に高まっております。 このセミナーでは,BSCの構築を,組織の改善をテーマとしたケーススタデ ィーのシナリオ作りから,如何に目的を達成させるかということに対して多面 的な思考を駆使することで行います。 そして,約7割の時間をケーススタディーに充てて学習するという大きな特徴 があります。 受講者からは,吉川先生の分かりやすい講義と,企業の教育ではない同業他社 の方々とのコミュニケーションをとりながら演習できる内容に毎回高い評価を 戴いております。 また,吉川先生によれば,BSCは確かに一時のブームは過ぎ去ったものの本 質的な経営改善のツールとしている企業も少なくなく,国内外の企業や行政へ の支援活動をされております。 募集については,12月上旬に準備が整い次第展開をする予定です。QMS委 員会会員企業の皆様には会員特典として無料で受講することができます。 講座名:QMS戦略セミナー「バランススコアカードの基礎から構築まで」 日時:【1日目】2015年 1月28日(水)10:00〜16:00 【2日目】2015年 1月29日(木) 9:00〜18:00 会場:東京・JEI浜松町ビル3階 CIAJ会議室 募集定員:16名(予定) 講師の吉川先生とは開催に向けて打合せを行い準備を進めております。 是非,この機会にご参加戴きたくご案内申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●<予告>今年度第2弾の異業種見学会は“東京の酒蔵”です ─────────────────────────────────── 毎回好評を戴いております異業種見学会の今年度の第2弾として,東京の酒蔵 である「小澤酒造株式会社」をお訪ねすることになりました。 これまで,酒蔵は見学先の候補でありましたが実現できなかった経緯がありま すが,このたび小澤酒造株式会社様のお計らいで実現の運びとなりました。 小澤酒造株式会社は,元禄15年(1702年)創業の老舗の酒造業者で,「お客 様との直接のふれあいを求めて積極的に酒蔵見学を行い,銘酒澤乃井を取り巻 く自然と酒造りに対する基本姿勢を訴えてこられ,越後杜氏から社内杜氏への 移行など様々なチャレンジをされ,全国の鑑評会で金賞を多数受賞するなど, 「銘酒」の酒蔵として高い評価を受けています。 また,時代の変遷のなかで,お客様への満足と価値を与える様々な工夫もされ ておりQMSの視点でも多くの気付きが得られるものと期待しています。 今回は,経営者による酒造りに対する品質へのこだわりやこれまでのご苦労を お話戴くとともに,酒蔵の見学と意見交換の場を設定戴き,匠の世界を感じる 見学会として企画を進めております。 年明けの1月上旬頃に準備が整い次第,募集案内をする予定です。 是非,ご期待ください。 見学先 :小澤酒造株式会社 http://www.sawanoi-sake.com/company 住所 :東京都青梅市沢井2-770(JR青梅線沢井駅下車徒歩5分) 実施日 :2015年2月27日(金)13:00〜16:00 (予定) 募集定員:30名(予定) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●QMSサロン 『システムの個人的考えの隙間を埋める』報告 ─────────────────────────────────── 第14回「QMSサロン」を 11月13日に開催いたしました。 QMS委員会フェロー 山本 正 様(MBA,Ph.D)をファシリテーターに迎え, 「システムの個人的考えの隙間を埋める」をテーマに意見交換が行われました。 今回は,システムの弱点と個人のアクティビティについて考えました。 これは,システム(例えばQMS)を実際に動かしている「個人」の姿は直接的 には見えてこない(人もシステム要素(資源)の一つなっているため)が, そのシステム自身を構築・改善し,運営・管理するのは人であり,システムを 利用するのも人なので,システムだけに着目しないで,システムを動かす個人 のアクティビティに着目するというものでした。 前回のQMSサロンで「事実主張」と「価値主張」を学びましたが,個人的な 価値主張が,実はシステムに影響を与えているということで,システムとして 個人を無視する事もリスクを招くことになるという新しい視点を得ました。 確かに,目標管理の指標として用いられるKPIは,結局は主観であり,どうに でも設定できるし,測定もできるところがあります。 これを考えると,リスクを招くということも,結果のパフォーマンスが低くな ってしまうことも納得できます。 私たちは,システムを構築すると,システム通りに動いていることが良いと考 えますが,システムを動かしているのは人であるという当たり前のことを見落 としてしまうことが弱点つながるということで,ハッとしました。 人がシステムを使うのか,システムに人が使われるのかということです。 形骸化を招く要因に,手順に書いていないからやらなかったという事象があり ますが,その結果,製品の不具合につながっているならば,システムはあって も機能していませんし,システムに人が使われている典型です。 人の思考停止を招いています。怖いことだと思いました。 そして,システムシンキングの基礎として下記の基本を学びました。 ・システムの全体像を考える。(しかし,直接見ることはできない!) ・長期と短期のバランスを取る。(出来事には,時間的なズレがある!) ・動き,複雑性,相互依存というシステムの3つの特質を理解する。 (個々の出来事から,簡単に推論するな!) ・測定可能なデータ(事実主張)と測定できないデータ(価値主張)の両方 を考慮に入れる。 (データでは示せないものが,システムには含まれていることを忘れるな! データで示せないから重要でないと単純に考えるな!) ・私たちはシステムの中でそれぞれの機能を果たしシステムの一部である。 一方,私たちもシステムに影響を与えていることを理解する。 (私たちの考え方次第で,システムも変化する!) システムシンキングでは,因果関係や時系列を考える際に役立つ,因果ループ 図の考え方を学び,因果ループを QMSループに応用して, QMSを形骸化させる ループ図などを知りました。 システムだけで,PDCAを回すのではなく,そこに人の思考のPDCAが入 ることにより,ネガティブスパイラルにも,ポジティブスパイラルにもなるこ とを,ループ図で解説して頂き,形骸化に陥る流れを知り腑に落ちました。 さらに,システムには型があるということで,「システム原型」を学びました。 これは,ピータ,センゲ氏が「The Fifth Discipline」(1990)にて,10個の システム原型を示したものの紹介で,ひとつひとつのシステム原型がとても 分かりやすく,自分たちの QMSに照らすと,あるあるの世界でした。 毎回,発見があり,参加することが楽しみな「QMSサロン」です。 次回,第15回は,2015年3月に開催予定です。 「QMSサロン」は,会員間コミュニケーションを取ったり,リレーションを 築くにも最適な場です。新たな参加者を大歓迎します。 皆様のご参加をお待ちしております。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●ISO 9001関連の最新動向 ─────────────────────────────────── 1.ISO/DIS 9001:2014に関する妥当性確認プログラム参画への御礼 10月にISO/DIS 9001:2014に関する妥当性確認プログラムが出されました。 このプログラムへの参加が会員企業の2015年対応ならびにQMSの見直しに役立 つのみならず,FDISのインプットとなることからQMS委員会としても参加する こととして,最終的に25の組織に参画戴きました。 この場をお借りして参画戴いた組織の皆様には御礼申し上げます。 2.ISO/DIS 9000/9001のISO投票結果について 2015年の改正に関する情報としては,ISO/DIS 9000:2014とISO/DIS 9001:2014 に関するISOでの投票が行われ,結果は以下の通り,いずれも可決されました。 この後は,各国からのコメントに対する対応ならびに前述の妥当性確認の結果 等が反映されてFDISが作成されることになります。 ちなみにFDISは2015年の発行を予定しています。 <ISO/DIS 9000/9001のISO投票結果> ・ISO/DIS 9000:2014 賛成47/55,反対9/66で可決されました。 ・ISO/DIS 9001:2014 賛成64/72,反対8/79で可決されました。 3.ISO 9001の支援文書の公開について 当月は,日本規格協会より3つのISO 9001の支援文書が公開されました。 ISO本部では,正しい情報により規格改正の内容を理解してことを目的に支援 文書の公開をしています。 (1)(2)の資料には最終頁に「この資料の更新版は改正作業の進捗に応じて公開 される」と書かれていますが,いずれもCD作成時点で作成され(メルマガ3月 号で報告済)たものが,DIS発行で更新された情報です。また,(3)は2015年 改正の変更点のひとつである“リスクに基づく考え方(Risk based thinking)” なる支援文書が公開されていたもののISO 9001における“リスク”そのもの の議論が多く公開された文書です。今後も改正作業の進捗により更新される ものと思いますので,以下のURLは要チェックです。 <11月に公開されたISO 9001支援文書> (1) ISO 9001:2015 改正の概要(一般利用者向け)ISO/TC 176/SC 2/N1219 (2) ISO 9001:2015 “リスクに基づく考え方” ISO/TC 176/SC 2/N1221 以上は,3月号で報告の支援文書のDIS発行対応の改定版 (3) ISO 9001:2015におけるリスク ISO/TC 176/SC 2/N1222 以上は,前号で報告したISO支援文書の参考訳案 <(一財)日本規格協会HP(参考訳案)> http://www.jsa.or.jp/stdz/iso/iso9000.asp <ISO/TC176/SC2HP (原文)> http://isotc.iso.org/livelink/livelink/open/tc176SC2public ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●TL 9000コーナー「TL 9000説明会報告,APAC-BPC情報 他」 ─────────────────────────────────── 1.TL 9000セミナー報告 「TL 9000説明会」を11月18日に開催いたしました。 この説明会は昨年度からクエストフォーラム日本ハブとQMS委員会で共催 で開催しており,今年度2回目で通算4回目です。 当日は,QMS委員会会員企業他12社23名の参加があり,国内の情報通信 技術業界各位にTL 9000要求事項と測定法について情報提供を行いました。 今回は,初めて参加されたメンバーも多く,TL 9000認証登録のプロセス についての説明を新たに行いました。 講師:クエストフォーラム公認研修機関 (株)テクノファ 講師 内田 勲 氏 ,小林 真一 氏 演題:TL 9000 説明会 〜TL 9000認証登録プロセスを含む〜 1)クエストフォーラムの概要 2)TL 9000 要求事項 (R5.5) 3)TL 9000 測定法 (R5.0) 今回の参加者から,継続して情報提供の要望もあり,TL 9000WGとして 「TL 9000説明会」を継続開催予定です。(次回は2015年上期) 2.2015年アジアパシフィック ベストプラクティス会議(2015年4月14〜16日) 情報 ・論文募集 クエストフォーラムでは,来年4月に東京で開催するアジアパシフィック ベストプラクティス会議の論文を募集しています。 (概要提出締切:2014年12月19日) 詳細については下記URLに掲載されていますのでご確認ください。 http://questforum.org/japanhub/Call_for_Paper.pdf 3.ISO 9001:2015対応 クエストフォーラムは,ISO 9001:2015を引き続きTL 9000品質マネジメン トシステムの要求事項の基本セットして採用予定です。 TL 9000要求事項ハンドブックR6.0(ISO 9001:2015対応)の発行は, 2016年4月の予定です。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」 ─────────────────────────────────── 前回は,個々人の主観による価値主張と出来事やデータによる事実主張につい てお話を進めましたが,今回は,もう一歩話を進めISO 9001の改訂に含まれる リスクベースドシンキングについて事実主張と価値主張との関連からもう少し 考えてみたいと思います。 リスクを考えるということは過去の出来事を根拠とした事実主張だけでなく将 来起こるかもしれない根拠が必ずしも明確でない事柄についても考えることが 求められるでしょう。それゆえ,今回のリスクベースドシンキングは,計画, 行動,チェック,そして対応・改善するPDCAサイクルに見られるように出来事 を起点とした受身的姿勢に対し,リスクを想定し予め行動する主体的姿勢がよ り求められるでしょう。 しかし,リスクに向きあうことは将来ほぼ確実に起こると予想されることです ら対応・準備をすることがむずかしいものです。例えば,定年退職は必ず起こ るのですがそれに向けて若い時から準備することは容易ではなく,その時にな って状況がより明確になってから考えればよいのだと先送りするのが普通です。 そしてその時点にたって初めて,もう少し早く準備しておけばよかったと反省 するものです。 このように将来起こることがほぼ確実な事柄でさえもそのリスクに対応するこ とは努力が必要です。まして将来起きるかどうか分からない事柄まで準備する という余裕は生まれるはずもなく,リスク対応はさらにむずかしいものとなり ます。 それでは対応が困難だから将来を考えることは無駄かと言えばそうでもなく, 将来の姿を頭の片隅に入れておくことにより何らかのきっかけから行動に移せ る可能性があります。しかし,何も考えていなければきっと見過ごしてしまう でしょう。リスクや機会へ対応には,意外とその様なことから大きな違いを生 み出すような気がします。無駄に見えるかもしれない将来予測をいつも気にか けるだけでも効果があるものだと思っています。 また,将来の出来事は長期にわたり準備が必要なものがあり,その時点で対応 しようとしてもほとんど何もできないものです。例えば,知識や技能の獲得は 一朝一夕にできないことは重々分かっているのですが,それをコツコツと積み 上げていくことは至難の業です。まして,いつ役に立つかもしれない事柄に継 続的に努力することはとても困難です。 企業活動も同じことが起こるものです。いつ結果が出るか分からない教育・訓 練に多くの投資をするよりは,経費削減の方が企業にとって当面有益に見える ので,積極的に取り組み始めます。これは将来を質に入れ現在を買うといった 行動にも見えます。将来は不確実であり不確定ですが,それを単純に無視する ことはリスクが現実のものとなった場合,事態をより深刻化させるでしょう。 私たちは将来にしか向かえないからですから,常に将来に目を向け立ち向かっ ていかなければならないのです。 さて,運よく事前に特定されたリスクは何らかの準備や覚悟があるため不意打 ちを食らうことはないのですが,特定されなかったリスクが現実のものとなる とかなり影響を受けます。例えば,取引先の意向の急激な変化などは,これま での計画が水泡に帰してしまいます。このようにリスクは組織内部から発生す るだけでなく,外部環境からも突如発生します。例えば,ビジネス環境の変化 がゆっくりと進むのであれば,その都度生じるリスクに何とか対応できるので すが,急激に変化した場合は企業の対応限界を超えてしまい適切な対応が取ら れるまで時間がかかるものです。この対応スピードの差が企業力の差を生み出 す原点の一つです。 このようにリスクのインパクトは変化スピードやタイミングといった時間軸の 要素でも変化するため,どの程度の変化速度のリスクに耐えられるかを知りリ スクと機会のバランスを考えることも将来予測としては必要なのでしょう。そ れゆえ,形にとらわれず戦略的に QMSも変化させていく覚悟も必要です。 さて,話を少し戻しますが, QMSの中でも過去を起点とした改善は,例えば出 来事やデータなどをもとに短期的に対応することが可能でしょう。一方,将来 予測は長期的な対応が求められるものなので,明確な根拠のないリスクや機会 はノイズと見なされ無視されることも少なくないでしょう。しかし,ノイズの ように見えるものでも仮に起きれば将来致命的になると見えるリスクもあるわ けです。 そのような場合そのリスク予想が正しいかどうかを議論することはあまり意味 がありません。なぜなら判断する根拠がない主観的な予測は価値主張を含むた め適切な判断ができないためです。将来予測がもたらす効果とは,どのような 事柄が起き,どのようなインパクトがあるかを推論こと自体が重要なのであり, 正しいかどうかを議論することだけではありません。この話題は先の QMSサロ ンでお話いましたが,ほとんど起こらないかもしれないけれど,仮に起きたと したらどうなるのかを考えることは非常に重要なリスク回避です。推論するこ とは頭の中で行うので,かなり知識と能力が求められますがトレーニングのつ もりで行ってもよいでしよう。 さて,まえがきが長くなりましたが今回の本題はどの時間軸で物事を考えるの かという観点です。 QMSの中にある時間軸は,現場対応なのでどうしても短期 的な時間軸となります。一方,経営的に見れば中・長期の時間軸をも視野にい れることが必要となります。短期的な価値観の上で構築された QMSは,どうし ても処置対応型のものとなりやすく問題が顕在化しなければ良いとする風土を 生みやすく,そのような風土は根本的な解決に目を向けることを阻害するかも しれません。 システムを考えるとき,時系列上の振る舞い(Behavior Over Time)と,因果ル ープの考察という二つの軸があります。今回の QMSサロン(第14回)では,こ の二つの観点からQMSの振る舞いをお話しました。 その中で,例えばある時点でうまく機能していたシステムが,時間の経過とと もにその機能が低下してしまう現象を考察しました。はじめは適切に機能して いたシステムが時間経過すると,異なる因果ループが働きだしブレーキをかけ 始める例を示しました。 これを QMSに当てはめてみますと,構築当初 QMSはPDCAループやプロセスアプ ローチが十分に機能し,さまざまな課題を表面化させ改善が行われため成果が あがります。しかし,時間経過とともに QMSが成熟すると表面化する課題が次 第になくなり,結果的に重箱の隅をつつくような問題点が指摘され始めます。 すると QMSの有効性を疑問視する人々が増え QMSに参画する人々は QMSの有効 性を軽視し始めます。本当は QMSがうまく機能しているので課題が少なくなっ ているのですが,それを役立たないものと勘違いする人が増えてきます。その 結果,監査対応だけすればよいという風土を生み出します。 一旦このループが動き出すと QMSの形骸化が加速し,本来有効に機能している QMS自体を窒息させ本当に無能化させてしまうということになります。このよ うに人間系が入るシステムは,時間経過とともに因果ループが変化することを 認識する必要があります。 このような時間系列と因果ループの変化はシステムシンキングの中ではシステ ム原型として多数示されており,今回の QMSサロンではいくつかのシステム原 型をもとにお話しました。参加者の皆さんから現状と当てはまる部分が多いと のご意見をいただきましたのでシステム原型を知ることは無駄ではないようで す。私たちはシステムを作り上げる時は,一生懸命行うのですが時間が流れ因 果ループが変容することをあまり考慮していません。 システム自体が変化しないとしてもそのシステムに参画する人々の意識は変化 するものですから,それに応じてシステムも変化させる必要性があります。そ のためにはシステム自体は本質的に安定しようしますので,常にシステムを刺 激するバイアスをかける必要があります。今回の QMSに含まれるリスクベース ドシンキングとは QMSに与えるバイアスだと個人的には感じる次第です。 QMS 自体は変わらなくても新たなバイアスから見直すと新たな課題が表面化するも のです。そして新たな価値が生じてきます。 さて,最終的にはシステムとそこに参画する人々との隙間を埋めていかなけれ ばならないと見ていますから,今回の QMSサロンの表題を「システムと個人の 隙間を埋める」としました。しかし,講座を聞くまでは表題の意味が良く分か らないとのご意見をいただきましたので,今回のメルマガにて若干の補足を入 れた次第です。話が長くなってしまいましたがお許しを頂きたいと思います。 なお,先に示しましたシステム原型は第5回QMSサロンの「イネーブラー」の講 座にてご紹介したセンゲ氏(センゲ,ピーターM. (2004)『世界最強の法則 - 新時代のチームワークとは何か』守部信之訳,第10版,徳間書店。 原著:Senge, Peter M. (1990)The Fifth Discipline, Random House, Inc,。) が示しておりますが,翻訳版では割愛されているので原書をお読みになるか, またはシステムシンキング関連の書籍の中で引用されていますので参考にされ るとよいでしょう。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記 ─────────────────────────────────── このメルマガの読者の最近の関心事は,なんといってもISO 9001の2015年改正 なのではないでしょうか。そして,ISO/DIS 9001:2014の発行以降は熱心に情報 収集をされているのではないでしょうか。 「はじめに」で紹介した妥当性確認の回答内容を分析したところ,コメントを されている要求項番としては,以下の要求項目への偏りが見られました。 ・4.1 組織及びその状況の理解 ・4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解 ・4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 ・6.1 リスク及び機会への取組み ・7.1.6 組織の知識 ・7.2 力量 ・8.4.2 外部からの提供に関する管理の方法及び程度 ・8.4.3 外部提供者に対する情報 コメントの内容からは, ・新規の要求項目に対する理解不足 ・新規の要求項目または関係する項目に対して組織に適用することが難しい ・従来から要求項目ではあるが組織に適用することへの評価が難しい といった背景によるコメントであるものと考察をいたしました。 また,参画戴いた複数の方からは,要求項目のひとつひとつを見ることで多く の気付きやわかっていたつもりであったことがよくわかったという感想を頂戴 しました。今回,妥当性確認に参加できなかった皆様もご自身で確認されてみ てはいかがでしょうか。 最後までお読み戴き,ありがとうございました。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」── * 配信追加は下記にお知らせください。 mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp * 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会 QMS委員会メルマガ編集部 http://www.ciaj.or.jp/top.html http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ) * 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(菅野 清裕) * 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください! qmsmelg@ciaj.or.jp ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Copyright(C)2004-2014 CIAJ QMS committee All rights reserved.