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━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

   「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

    「2011年度もQMSをいかすべく,邁進いたします! 」


                      2011年7月29日発行 第44号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第44号 目次 ≫

 ・はじめに
 ・2011年度QMS委員会役員のご紹介
 ・総会特別講演報告
 ・秋のイベント 吉川先生によるBSC構築セミナーのご案内
 ・ISO 9000の改訂動向「ISO規格類の妥当性確認情報と今後の動きについて」
 ・TL 9000コーナー「要求事項/測定法ハンドブックの改版予定情報」
 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
 ・編集後記

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●はじめに
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2011年度 QMS委員会委員長の飯田政良です。
どうぞよろしくお願いいたします。

今年は,平年に比べ10日以上も早く梅雨が明け,非常に暑い日が続いたかと思
うと,早くも大型の台風が訪れ豪雨による被害が発生しています。
そんな中,「なでしこジャパン」の活躍と偉業は,日本に大きな元気を与えて
くれました。私たちも最後まであきらめない気持ちを見習いたいものです。

さて,QMS委員会では,先月の総会で皆様から2011年度計画・体制をご承認
いただきまして活動を開始いたしました。

今年度も継続して「 QMSをいかす」をテーマに,「企業の QMS運営に関わる者
として,“自社の QMS”の原点・本質に振り返り,その企業の活動目的に合致
し,実務に即した QMSのあるべき姿を考えてみる」機会を提供できるようにし
ていきたいと思います。

是非とも QMS委員会へのご参加・ご協力をよろしくお願いいたします。

それでは,メルマガ44号をお届けいたします。


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●2011年度QMS委員会役員のご紹介
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6月7日に行われたQMS委員会総会でご承認頂きました新体制をご紹介致しま
す。

◆役員◆
【委員長】
  日本電気                   飯田 政良 (新任)

【副委員長】
  日立製作所                  小田 明  (新任)

【運営委員】
  アンリツ                   多田 聡
  沖電気工業  (研究分科会主査兼務)     青柳 礼子
  サンコーシヤ                 音居 文雄
  日本電気   (普及分科会主査兼務)     斉藤 仁
  富士通                    橋本 辰憲
  富士通    (TL 9000WG チェア兼務)    馬渡 登
  三菱電機                   渡辺 晴彦
  QMS委員会フェロー(元ソニー)       山本 正

【会計監事】
  東芝                     遠藤 一弥 (新任)


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●総会特別講演報告
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今回の総会特別講演では,当委員会の目標テーマである「 QMSをいかす」を軸
に,二つの講演を企画,実施いたしました。
一つは知的資産活用の観点から「現場知」に関する講演,もう一つはヤマト運
輸の“満足創造”経営に関する講演です。いずれも参加者の皆様から好評をい
ただきましたが,特にヤマト運輸の講演には多くの参加者から感動したとの感
想をいただきました。紙面上の都合がありすべてを紹介できませんが,以下に
講演の概要を報告いたします。


第1部 「現場知を活かすマネジメント」
[講師]山本 正 様(QMS委員会フェロー,MBA,早稲田大学 博士課程)

・QMSを取り巻く国際協働環境
 新興国のめざましい成長により,日本製品との品質の差はなくなりつつあり,
 「質」の時代から「個性化」の時代に移り変わってきた。
 「個性化」のためには,企業はこれまでに蓄積してきた固有知識を組織的に
 活用していくことが求められている。

・QMSの現状と課題
 JAB調査によれば,企業が QMSを導入する目的は,意識・パフォーマンスの
 向上であるものの,業績向上にあまり結びついていないという結果となって
 いる。当QMS委員会の調査では,役に立たないQMSの要因として,人材育
 成マネジメントへのシステムアプローチの失敗が見られ,「ものづくり白書
 2007」では経験者の「暗黙知」を可能な限り形式知化する努力も必要である
 が,経験,技能など「暗黙知」の伝承も重要であるとの報告となっている。

・現場知を活かすマネジメント
 QMSは文書化されたものを中心に構成されるが,現実の「現場知」は「形式
 知」と「暗黙知」で構成され,それぞれが相互に補完し使われている。
 「現場知」を活かすには, QMSでも形式知化されなく取扱いがむずかしい極
 めて個人的な知識である技能,経験,創発力などの「暗黙知」をどうマネジ
 メントするかにかかっている。
 「情報」と「知識」は識別される。「情報」を知識化するためには,情報を
 理解し,咀嚼し,意味づけをおこなうための「リテラシー」が不可欠である。
 この「リテラシー」の獲得に対し,組織的な関与が必要でありQMSが貢献で
 きる部分である。そのため企業活動での「知識形成」には経営層を含むマネ
 ジメント層の関与が必要である。

・“今ここにある知”を活かす
 「今ここにある知」とは,語ることが難く,「暗黙知」から導かれ,その場
 で「言動」や「行動」として示される「知」である。
 一方「過去の知」はルール化,手順化すべき「知」でコントロールされる。
 マネジメントの本意はコントロールできないものを調整・管理すること。
 これを「マネジメント知」とすれば,「今ここにある知」,すなわちコント
 ロールできない「現場知」を生かすには,経営層と現場とを知識循環させる
 ための支援と仕組みが不可欠となる。

 (理解のため,本メルマガのコラム「知識活用型企業への道」の併読をお勧
  めします。)


第2部 「ヤマト運輸の“満足創造”経営」
[講師]木川 眞 様 (ヤマトホールディングス株式会社代表取締役社長
            執行役員兼ヤマト運輸株式会社取締役会長)

・会社概要
 ヤマト運輸の創立は1919年。トラック4台からのスタートだった。
 現在は社員数13万9320人,営業拠点は直営3868店,取扱店260452店と日本郵
 政以上の規模。車両数は4万4968台,年間の宅急便個数は13億4877万個とな
 った(2011年3月末)。
 それまで民間による事業化は採算が合わないとされた宅配事業を1976年に開
 始。一個でも電話一本で集荷,翌日配達,運賃は安くて明瞭,荷造りが簡単
 という宅配コンセプトのものと,不退転の覚悟で開始した。
 その後,ヤマトの宅配事業の成功により多数の企業が市場参入したものの,
 宅配市場(宅配便取扱個数シェア)ではトップ(約4割)を占める。

・満足創造経営
 4つのステークホルダー(お客様,社会,株主,社員)の満足度を最大にす
 る目標を持ち事業を展開している。

 お客様の満足創造:宅配から“個配”へ。受け取るお客様に特化した更なる
         利便性を追求。「日」「時間」「場所」を選べる「宅急便
         受取指定」はその第一弾サービス。

 社会の満足創造:社会と共に持続的に発展する企業として「安全」「環境」
         「社会貢献」に注力。「安全第一,営業第二」はヤマトの
         基本理念となっている。
         「環境」では車両台数を減らしたり,電気自動車を利用す
         るなど。都市部では台車を使っている。

 株主の満足創造:財務戦略の着実な遂行による企業価値の拡大。

 社員の満足創造:宅配はサービス業。第一線の社員がサービス品質を決める。
         良い仕事(サービス)を提供することで,お客様が満足し,
         社会が満足する。そのことで社員が満足し,モチベーショ
         ンアップにつながる。この循環を回す仕組みとして2008年
         から「満足創造運動」を開始した。

         その一つに木川社長時代に始めた「満足BANK」制度がある。
         これは“褒める”制度。ポイント制で,同僚から褒められ
         たり,お客様から感謝されたりするとポイントをもらえる。
         お客様からの感謝は50ポイント。褒めた同僚にも3ポイント
         がつく。貯まったポイントに応じて,銅,銀,金,ダイヤ
         モンドのバッチがもらえる。当初は反対意見もあった。
         パワハラで「俺を褒めろ」の心配もあったが, これがうま
         くいった。褒められることでモチベーションが上がる。

・東日本大震災への対応
 ここで3月11日に発生した東日本大震災への対応がビデオで紹介された。

 現地クロネコヤマトのドライバー自身の判断で実施された被災地の支援活動。
 後からそれを知った本社スタッフが後方支援を始め,全社的活動となった。
 これがTV報道でも紹介された「救援物資輸送協力隊」活動。

 当初,救援物資の在庫管理,仕分け,配送は,自治体や自衛隊が行っていた。
 しかし,彼らには物流のノウハウがない。見かねたクロネコヤマトのドライ
 バーが無償で支援を申し出たことから活動が始まった。

 公式指定された避難所に避難した住民は支援物資を受けられるものの,多少
 の損傷で済んだ自宅や施設がある住民は,家を丸ごと失った住民に遠慮して,
 自宅や施設で避難生活。そこには支援物資が行き渡らない。そんな話しを聞
 きつけたドライバーは独自に配送マップを作成。配送先は当初の倍に。一日
 4往復の配送を行った。

 避難所によっては,欲しいものが違う。それをデータベース化してそれぞれ
 のニーズにあったものを配送する。日頃から地域に密着したドライバーだか
 らこそ,業務ノウハウが活き,木目細かい配送ができる。

 被災地のお客様からの声:(抜粋)
  「ヤマトさんの荷物が届き,これで日本中と繋がると思いました。」

 木川社長の言葉:
  「会社の車を勝手に使って,指示されてもいないことをやる。本来ならば,
   許されないこと。相当勇気のいること。でも,そうせざるを得ない心情
   を持った社員が大勢いてくれた。うれしかった。
   『サービスが先,利益は後』と常々言葉では言っている。社員へ繰り返
   し言ってきたこともあるが,ヤマトのDNAとなっている結果と思う。」

 ヤマト運輸が取り扱う宅急便個数は年間13億個。その一つひとつから10円の
 支援金を捻出して年間130億円の支援をする。これは企業として最大限の恩
 返し。

・ヤマト運輸の「満足創造研修」
 最後にヤマト運輸の社員教育である「満足創造研修」に実際に使われている
 ビデオが紹介された。セールスドライバーの体験を集めた「感動体験ムービ
 ー」である。十数話の実体験を写真と短い言葉,そして控えめ音楽(BGM)
 でまとめたシンプルなものであったが,大変感動的なビデオであった。会場
 には涙をこらえる参加者も。

 講演の最後に社訓がスクリーン上に静かに流れた。
       一,ヤマトは我なり
       一,運送行為は委託者の意思の延長と知るべし
       一,思想を堅実に礼節を重んずべし

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 当日のヤマト運輸様の講演資料,およびアンケート結果は,下記のQMS委
 員会ホームページの会員専用サイトからご覧いただけます。
   http://www.ciaj.or.jp/qms/
   (会員専用サイトに入るには,ID,PWが必要です)


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●秋のイベント 吉川先生によるBSC構築セミナーのご案内
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夏本番ではありますが,QMS委員会では秋に向けてのセミナーの準備を進め
ております。

このうち,今年で8年目を迎え,何といってもBSCの国内第一人者である横浜国
立大学の吉川武男名誉教授による直接指導で, BSCの講義から構築までを演習
中心で定評のあるBSC構築セミナーの日程が確定いたしました。
折角の機会ながら,日程調整ができないといったご要望にお応えし,今年も
ひと足早く日程のご案内をすることといたしました。


◆ 2010年10月17日〜18日 QMS戦略セミナー
            『バランススコアカードの基礎から構築まで』
               (定員制2日間コース)

本講座は,バランススコアカード(BSC)をマスターしたい方は勿論のこと,
演習を通じて,目標管理の基礎をはじめ,日々の業務に大いに役立つ要素が
盛り沢山で,企画や戦略を策定する力を鍛えるにはもってこいの内容です。

こちらの講座は,様々な職位,分野の方に受講いただいておりますが, QMS
委員会の継続テーマでもある「 QMSをいかす」を担う企業のキーマンの候補
となる方の受講をお勧めいたします。

QMS委員会会員企業の皆様には,無償で受講できる会員特典が適用されます。
予算を気にせず最高レベルの講義が受けられるまたとない機会です。是非,
この機会をお見逃しの無いよう受講者の選定・派遣の計画をお願い致します。

詳細については, 9月初旬にメールにてご案内を致します。
会場は東京・JEI浜松町ビル3階 CIAJ会議室で開催の予定です。


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●ISO 9000の改訂動向「ISO規格類の妥当性確認情報と今後の動きについて」
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ISO 19011「品質 及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針」の
改訂作業が進み,最終段階のFDIS(Final Draft International Standards)
の段階にあり,FDISがIS(International Standards)なり次第発行される予
定でJIS化が進められております。


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●TL 9000コーナー「要求事項/測定法ハンドブックの改版予定情報」
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◆今回は,TL 9000 品質マネジメントシステム 要求事項/測定法ハンドブック
 の改版予定,その他を掲載しました。

(1)「TL 9000 品質マネジメントシステム 測定法ハンドブック リリース5.0」
  状況
  →2011年11月までに原案化,2012年末に発行予定。

(2)「TL 9000 品質マネジメントシステム 要求事項ハンドブック リリース6.0」
  状況
  →測定法ハンドブック リリース5.0の2-3年後に発行予定。

(3) 「クエストフォーラム オリエンテーション講座」
  クエストフォーラムの構成/内容について説明のコンテンツは日本ハブWEB
  会員ページに掲載予定。

(4) クエストフォーラム本部アップデート(ニュースレターより)
  ワークグループ状況−OSWG,Validation Audit状況(15/23完了)


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●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
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前回は“過去の知”と“今ここにある知”のお話しをしました。

我々は仕事にあたり,図面,情報およびデータなど成文化された“過去の知”
を,仕事を行うための基礎として活用しております。また,“過去の知”は,
ソフトウェアや設備の中に組み込まれ,知らずしらずに活用している場合もあ
ります。このように“過去の知”は QMSの中でも手順類や作業指導書とともに,
活動記録やノウハウ集などに蓄積され活かされているものです。

一方で,“今ここにある知”とは,その場で使われる“知”であり,例えばス
キルや技能といわれる極めて個人的なものです。例えば職人技やデザインなど
芸術的な感覚や勘,さらに新たなアイディアを生み出す能力やリテラシーとい
われる理解にかかわる“知”であり,それ自体を直接的に見ることも語ること
も難しい“暗黙知”の領域に属するものです。

仕事現場ではこの二つの“知”は組み合わさり,相互に補完し合いながら使わ
れています。例えば,単純作業を除き文書類だけで仕事を行うことはできず,
経験に基づく技能,勘およびアイディアなどを組み合わせて仕事を行うことが
必要です。
仮に,経験も知識も必要でなく文書類だけで仕事ができるとすれば,その仕事
は今後コンピュータや機械類に置き換わっていく種類の仕事と言えます。

実際のところ人とひとが関係し合いながら進める仕事は,手順化するだけでは
うまくいかず,その「場」の雰囲気や相手の気持ちを理解しながら信念を持ち
ながら進めることが重要な点です。

同じように QMSを仕組みとしてうまく機能させるためには,基本的に必要な内
容を決めて文書化することが基本となりますが,それだけで QMSがうまく機能
するわけではありません。文書化できない部分を先に述べたように現場にある
“今ここにある知”が補完していることを忘れてはいけません。文書類ととも
に,“今ここにある知”をも QMSの中で有効活用することを考えなければなり
ません。

そこで,今回は「過去の知」と「今ここにある知」との対比の中,「情報」と
「知識」の違いを考えてみたいと思います。現在のように情報通信技術の発達
により「情報」だけが氾濫し,逆に情報過多が情報選択を困難にし,また情報
漏えいなどあたらたな課題を生み出しており,企業の情報を使いこなす能力が
さらに重要になってきたと言えます。

ここで文書化された知識を過去の経験や知識を形にした「過去の知」と考えれ
ば,これらは QMSを構築するための最初の課題でした。

一方で「過去の知」をいかに積み上げたとしても,それが今の現場でうまく使
えないものであるとすれば,その QMSは形骸化しやすいものとなり,単に監査
用 QMSとしてしか機能しない状況を生み出してしまいます。そこで QMSの中で
「過去の知」を活かすために,今回はそのヒントとして「情報」と「知識」の
違いを考えてみたいと思います。

一般的に「情報」と「知識」の違いを明確に意識することはありませんので,
少しおさらいが必要です。「情報」と「知識」の識別として知的経営に関する
著名な研究(野中郁次郎,寺本義也,クロー・ゲオルクフォン)から簡単に整
理したものを次に示します。

 1.「情報」も「知識」も,特定の文脈で「意味」をもつ。
 2.「知識」は,信念やコミットメントに関係し目的をもった行為にかかわる。

ここに述べた「情報」と「知識」の注目すべき違いは,「情報」はそれが“正
しい”または“信じるに足りるか”に関連づけられていない点です。

一方で,「知識」はその人が“正しいと信じたもの”に関係します。例えば,
地球を中心に天体が動いているとする「天動説」と地球が太陽の周りを回って
いるとする「地動説」との議論が,中世に長年続いてきたことを考えると,
「知識」というものは確実なものではなく,その時のその場の状況に依存する
ことになります。
(これを,知識とは「認知的側面」をもつものと考えられます。)
すなわち,「知識」とは何を信じるかにより理解が変わるものであることを忘
れてはいけません。

これを QMSに置き換えて考えると,まず「知っている」ことを「知識」と考え
るのではなく,何にとって「知識」となっているかを問う必要があります。
すなわち,「知識」とは何らかの「価値観」を伴うものであり,さまざまな事
柄を「知っている」だけでは単に「情報」を知っているということです。QMS
の成文化された文書類を行わなければならないことと信じることができなけれ
ば,文書類は単なる「情報」であり価値観がともなっていません。

そこで,QMSでは「情報」を「知識」に変換するために企業活動の目的にかか
わる信念やコミットメントなど従業員の皆さんが心から信じるに足りるものが
必要となります。
これが QMSで方針・目標を明らかにする必要性のひとつです。経営者が心から
信じていることをコミットメントすれば,皆も信じることができます。
他方,「情報」も「知識」も「意味」を持ち何らかの行動を導くものでありま
すが,注目すべき点は「情報」から導かれた行為と「知識」から導かれた行為
には,その「行為の質」に違いが出ることです。

やらされ感があり受動的に行動するか,やる必要があると信じ主体的に行動す
るかの違いですが,この違いは個人の「行為の質」の違いとして現れ,それら
が集積され「組織の質」に,また「 QMSの質」につながるものです。
この点は「知識」がもつ「目的をもった行為」に関連し重要な点であります。
例えば学校で勉強をしているある生徒が,将来商社に入社し国際的に活躍した
いという「夢」を持っているとした場合,英語力の獲得はその目的に関連し
“目的をもった学習”となり獲得した内容は単なる「情報」ではなく「知識」
となり易いものです。学習自体で知った事柄や行為に「意味」の違いがあるわ
けではありませんが,「目的をもった学習」は主体性を導くため,身につきや
すいだけでなくその奥行きも深くなるものです。

このように,「情報」と「知識」を識別し考える重要性は,それまで蓄えてい
た「情報」を「知識」にするために「目的」と関連付けし,QMSにより「情報」
を「知識」に転換させることです。「情報」は“ストック”であり,「知識」
は行動など“フロー”とみることができます。“情報データベース”
“ナレッジ・データベース”は,ノウハウを含めさまざまな情報が蓄積されて
いますが,それら「情報」を「知識」に転換するには QMSとして「目的」とい
う知識化するための「軸」を与えることが必要であることがお分かりになると
思います。

“段取り中心”の業務では,QMSの方針,目的・目標にそって段取りが定まり
成文化されますが,“知識活用型”業務では,業務を手順化するだけではその
活動の本質を示すことはできませんから,情報を収集し行動に結びつけ「知識」
とするための「目的」を,企業全体で共有させていくことが QMSの重要な役割
の一つであると考えています。

これは全体「目的」がないまま行うことは,単に部分的な“PDCAサイクル”を
回すことに似ており,改善活動が部分的なものにとどまり,全体最適のために
「システム」としてPDCAを機能させることができないことに類似します。

PDCAサイクルだけを回しても,その上位概念として活動目的が明確でなければ
システム化しませんが,「情報」を「知識」にすることにも同じことが言えま
す。“過去の知”を「情報」とすれば,それを今の企業活動目的にそって
「情報」を再編成し,活動に求められている“今ここにある知”として「知識」
を獲得する工夫が必要です。そのためには「目的」としての心から信じられる
“経営者の信念やコミットメント”が非常に重要な役割を担っているというこ
とがお分かりになると思います。単なる夢やスローガンではないことを理解し
なければなりません。

さて,いつもの通りこれらの内容を概念からお伝えするには紙面が足りません。
今回のテーマは 6月に開催されたQMS委員会総会特別講演にて筆者が発表さ
せていただいたものの一部を補筆するつもりで書いてみました。総会発表資料
は発表時間の制限のある中で若干難解になるかもしれないと思いつつも,とり
あえず「現場知を活かすマネジメント」に必要な事柄を意図して入れ込んでみ
ました。ゆえに,何を言っているか理解が難しいところは,今後のメルマガを
通じて少しずつ補筆していく所存です。


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●編集後記
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梅雨も明け本格的な夏到来です。
今年は例年と異なり,力を合わせて節電の夏を乗り切らないとなりません。
毎朝テレビでも,天気予報ならぬ「電力予報」が流れていますね。

ここ数日は過ごしやすい気候ですが,来月からは暑さも戻って来るとの事で,
世の中では,節電や暑さ対策のグッズが良く売れているようです。
会員の皆様は,どのような工夫でこの節電の夏を乗り切りますか?

私は月並みですが,以下のような取り組みをしています。

[節電対策]
 ・家電のプラグを個別スイッチ(5連)に挿してこまめに消す
  (改善箇所:テレビ,扇風機,充電掃除機,洗濯機,電子写真立てetc.)
 ・温水器(風呂,キッチン,洗面所など)のリモコンパネルは基本はOFF
  (今まで付けっぱなしでしたが,これが電気をかなり消費するようです)
 ・電気ポットを魔法瓶に変えた(やかんで沸かし入れる行為がレトロです)
  (納戸から引っ張り出し実に20年振りの再登場です!模様が昭和!)

[暑さ対策]
 ・よしずを買って窓につけた(見た目に涼しい?)
 ・かき氷器を買いました。休日のおやつ,外出帰り,風呂上りに最高です!
  (アイスクリームより確実に体が冷えます!)
 ・保冷材をタオルに巻き,首,脇の下を冷やしクーラーを減らす
  (でも首を冷やし過ぎると,頭が痛くなりますのでご用心!)
 ・庭に打ち水をする(すぐ蒸発してしまいますが涼しい感じがします)

このように,節電の夏を意識しつつ涼しくなる工夫をしてみると,少し不便で
も,最近忘れていた身近なことに気がついたり,気持ちがほっとしたりと,
情緒を楽しむ余裕がでてきたようにも感じます。

節電の夏を憂うのではなく,楽しむ気持ちが乗り切る秘訣かも知れませんね。

最後までお読みいただき,有難うございました。


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──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」──

* 配信追加は下記にお知らせください。
 mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp
* 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会
    QMS委員会メルマガ編集部
 http://www.ciaj.or.jp/top.html
 http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ)
* 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(菅野 清裕)
* 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!
 qmsmelg@ciaj.or.jp
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