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━ CIAJ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」 QMS委員会

      「2010年度もQMSを ”いかす”べく邁進します! 」

                       2010年7月30日発行 第38号

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ CIAJ ━
≪ 第38号 目次 ≫

 ・はじめに                              
 ・2010年度QMS委員会役員のご紹介                   
 ・総会特別講演概要                          
 ・異業種見学会の報告「ANA機体整備工場」               
 ・ひと足早い 信頼性データ解析講座, BSC構築セミナーのご案内      
 ・ISO 9000の改訂動向「ISO規格類の妥当性確認情報と今後の動きについて」
 ・TL 9000コーナー 「TL 9000 測定法 ハンドブック リリース4.5 」   
 ・知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」    
 ・編集後記                              

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●はじめに
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今年は, 台風シーズンでもないのに, 局部的な前線の発達と気圧の不安定が原
因と思われる異常気象による集中豪雨で各地で土砂災害が発生して多くの方々
の生命と生活を脅かせております。過去に経験がないことが多く, 予想も予防
も出来ないことから, 今や自分だけは大丈夫という保証がありません。

予想も予防も出来ないといえば, 非常に暑い日々が続いておりますが, 確か今
年は冷夏の予想でなかったかたと記憶しております。5, 6月頃のあの寒さは誰
もが, 各地で猛暑日が記録されるとは予想もしなかったと思います。
十分な熱中症対策をしてこの夏を乗り切りましょう。

さて, QMS 委員会では, 6月14日に開催されたQMS委員会総会において, 2010年
度の計画・新体制が承認され, 活動をスタートしました。
今年度も普及分科会, 研究分科会, TL 9000WGの活動を軸に,「QMSをいかす」
為の気付きを与える情報の発信・セミナー等の活動を展開していきます。

今年度も皆様の積極的なご参加をお待ちしております。

それでは,メルマガ第38号をお楽しみ下さい。


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●2010年度QMS委員会役員のご紹介
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QMS委員会総会でご承認頂きました新体制をご紹介致します。

◆役員◆
【委員長】
  東芝                  南部 昇 (新任)

【副委員長】
  日本電気                飯田 政良(新任)

【運営委員】
  アンリツ                多田 聡
  サンコーシヤ              音居 文雄(新任)
  日本電気    (普及分科会主査兼務)  斉藤 仁
  日立製作所               小田 明 (新任)
  富士通                 橋本 辰憲
  富士通     (TL 9000WGチェア兼務)  馬渡 登
  三菱電機                渡辺 晴彦
  QMS委員会フェロー(元ソニー)      山本 正

【会計監事】
  沖電気工業   (研究分科会主査兼務)  青柳 礼子 (新任)


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●総会特別講演概要
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総会においてお二方のご講演を戴きましたので,その概要を報告致します。

<第1部> 「製品を見れば,企業の将来が見える!」
       〜 QMSと人的資源 〜

    [講師]山本 正 様
    (QMS委員会フェロー,MBA,早稲田大学大学院博士課程)

<講演概要>
 JABの調査によれば,QMSを導入する目的として,多くの企業は「品質意識の
 向上」や「パフォーマンスの向上」を狙っている。一方,認証取得の効果の
 調査では製品品質と環境パフォーマンスの向上に効果を感じているものの,
 売上には貢献していないと感じている。QMSと業績が結び付いていない。

 「ものづくり白書」では,自前主義に固執するがゆえに,共同開発が進まず,
 コストダウンが進んでいないと指摘。国内では,合理化を重視する人的資本
 重視の経営が強みであるものの,急速に展開が進む海外では,人材確保が困
 難となる弱みとなっていると指摘。また,強みである人的資源においても,
 熟練技能の伝授・継承が思うようにできていない。

 これまでは製品「品質」の時代であったが,これからはシステムの「質」の
 時代である。これに適応するには,オープンな知的協働と組織的学習が必要。

 組織的学習には5つの要素がある。「自己マスタリー」「メンタルモデルの
 克服」「共有ビジョンの構築」「チーム学習」「システム思考」の5つで,
 どれが欠けても組織的学習はうまくいかない。

 QMS委員会で発行した「役に立たないQMS」では,マネジメントへのシステム
 アプローチの失敗事例が一番多く,QMSが「システム思考」になっていない
 ことを指摘している。

 中国,東南アジアの新興国の製造品質は急速に改善され,日本に追いついて
 きた。

 ちょうど30年前に発刊された"Japan as Number One"で指摘されたアメリカ
 の状況と似た現象が国内企業に起きている。

 グローバルに対応するには,日本流をよしとする「自前主義」に固執するの
 ではなく,メンタルモデルを変革し,オープンな知的協働と組織的学習によ
 ってQMSというシステムの「質」を向上させていかねばならない。


<第2部> 「製品の「資質」を構成するもの」
       〜産業文明の象徴である「自動車」を見つめることで
        浮かび上がる真実〜

    [講師]両角 岳彦 様
    (自動車評論家・科学技術評論家,(社)自動車技術会 会員 他)

<講演概要>
 自分自身がベンチャービジネスを起業した時, ISOの仕組みを考案した人は
 偉いと思った。自動車側から品質の側面がどの様に見えるかをお話したい。

 自動車は, 人間の本能に直結した面白さがある。
 自動運転が可能になったら自動車産業は消滅するだろう。
 車が完全にインフラになったら, 消費は消滅する。
 自動車は100年以上にわたって工業文明と消費社会の「エンジン」であり続け
 ている。

 車にとって大切なのは移動している時の空間の感触。
 動くときの感覚。「感性品質」と名づけた。
 官能を物理量に置き換えるべき。

 動けば良いのが車ではない。「移動空間の質」「走り出したときの質」
 に世界のレベルが来ている。

 企業が提供する製品とサービスの「内容と質」にあるのではないか?
 日本がフロントランナーとなった今, モデルがない。
 アップルの成功は「企画品質」。
 「品質の創出と維持」のプロセス全体をマネジメントする=QMS
 QMSとは, トップマネジメントが理解して回すシステム。
 ループを回す立場の仕組みとして動くべき。

 皆がAppleを目指すべきなのか?Appleの成功は「発想」=企画の質。
 業界の「当たり前」は工業文明の「当たり前」に到達していないのではないか。

<所感>
 車が人や社会にとってどうあるべきものかという原点から車を見つめて,
 国内外のメーカの車を何百回と運転を試す実践感覚を通じ, 理論もさること
 ながら人間の感性が大切だという論理に共感できました。ハンドルを握って
 運転し, 何か違和感を感じることが大切で, これを「感性品質」と呼ぶ新し
 い概念を与えてくれました。


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● 異業種見学会の報告「ANA機体整備工場」
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7月2日,ANA機体メンテナンスセンターを訪問し見学会を実施しました。

当日は天候に恵まれ梅雨明けと勘違いさせるほどの暑い中,39名の参加を得る
ことができました。

最初に講堂で,飛行機が飛ぶ原理,機体組み立て,機体整備,新ターミナルビ
ルなどについて,ビデオ上映やクイズを交えて分りやすい説明がありました。

機体整備工場の見学では,飛行機が 4機同時に収容できる巨大な空間に圧倒さ
れ,普段は見ることのできない機体の整備の現場に参加者の多く方が驚きと新
鮮さを感じていました。

人命を預かる飛行機の機体整備とあって,作業しやすい足場,整理整頓された
環境,施錠された工具箱など,作業環境に配慮されていることが実感できまし
た。

今回の見学会コースは一般の見学コースで企画しましたが,アンケートでは,
約9割の方に満足いただき,概ね良好な結果でした。
一方で,ANA の安全管理について踏み込んだ説明や質問の機会が欲しかったと
の意見もありましたので,今後の異業種見学の企画検討に反映していきたいと
思います。


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● ひと足早い 信頼性データ解析講座, BSC構築セミナーのご案内
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夏本番ではありますが,QMS委員会では秋に向けてのセミナーの準備を進めて
おります。このうち,定評ある座学講座2件の日程が確定致しましたので,
折角の機会ながら,日程調整ができないといったご要望にお応えし,今年も
早い段階での日程のご案内をすることといたしました。

◆ 2010年10月 8日    QKM レベルアップセミナー
            『信頼性データ解析講座』

◆ 2010年11月 1日〜 2日 QMS戦略セミナー
            『バランススコアカードの基礎から構築まで』
               (定員制2日間コース)

会員の皆様には,お馴染みの講座と思いますが,簡単に特徴を記します。

『信頼性データ解析講座』は,QMS会員企業の現役品質管理エキスパートが
講師を努め,信頼性の見方,考え方をワイブル確率紙や累積ハザード紙を使っ
た演習で体得して戴くメニューで,昨年の受講者アンケートからのフィード
バックも行い準備をしています。こちらの講座は,品質保証や品質管理部門
の方が例年受講されており,わかりやすい解説に定評があります。

もう一方の『バランススコアカードの基礎から構築まで』は,今年で7年目を
迎え,何といってもBSCの国内第一人者である横浜国立大学の吉川武男名誉教
授による直接指導で,BSCの講義から構築までを習得できることです。
バランススコアカードをマスターしたい方は勿論のこと,演習を通じて,目標
管理の基礎をはじめ,日々の業務に大いに役立つ要素が盛り沢山で,企画や
戦略を策定する力を鍛えるにはもってこいの内容です。こちらの講座は,様々
な職位,分野の方に受講戴いておりますが,企業のキーマンの候補となる方の
受講をお勧めいたします。

いずれの講座も,QMS委員会会員企業の皆様には,無償で受講できる会員特典
が適用されます。
予算を気にせず最高レベルの講義が受けられるまたとない機会です。是非,
この機会をお見逃しの無いよう受講者の選定・派遣の計画をお願い致します。

詳細については,整い次第ご案内を致します。なお,いずれの講座とも,会場
は東京・JEI浜松町ビル3階 CIAJ会議室で開催の予定です。


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●ISO 9000の改訂動向「ISO規格類の妥当性確認情報と今後の動きについて」
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1)Environmental Management System -- Guidelines for incorporating
 ecodesign ISO/DIS 14006 が審議されております。

 環境ゴールと継続的改善について,それらをいかにシステム的手法に適用さ
 せるかに関するガイドラインのドラフトです。

2)ISO JTCG (Joint Technical Coordination Group) のブエノスアイレス会議
 の報告

 5月に開催されたJTCGの報告書が回覧されました。ISOでは,さまざまな範囲
 に広がるISO マネジメント規格の表現的統一を検討しています。用語・用語
 定義の一貫性のさらなる向上,文書構成の統一などが検討されています。

3)ISO 19011 マネジメントシステム監査に関するガイドラインが
 DIS(Draft of International Standard)の段階に入りました。

 このガイドラインは,第一者,二者監査のためのガイドラインですが,第三
 者である審査機関もおおいに参照すること,さらにさまざまなマネジメント
 システム共通のガイドとなるため,考慮すべき範囲と内容が多いガイドライ
 ンです。今後の予定は,FDIS(Final DIS) に進み5月には正式発効される計
 画になっています。


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●TL 9000コーナー「TL 9000 測定法 ハンドブック リリース4.5 」
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クエストフォーラムから「TL 9000 測定法ハンドブック リリース4.5」が 7月
に発行されました。2010年12月31日から有効となります。

本書の翻訳版の発行については,日本規格協会から今年10月に発行が計画され
ています。この翻訳作業については,当 QMS委員会 TL 9000WGメンバーも協力
要請を受けて参加しています。

今回のリリース 4.5の主な変更点は,ISO 9001:2008を反映したTL 9000要求事
項ハンドブックリリース 5.0と整合したこと,測定法の更新,製品分類表に新
規追加を行なったこと等です。

米国のTL 9000認証取得企業に対しては,リリース4.5 は,2011年1月からの使
用を推奨し, 2011年 7月からは必須となっています。日本企業については,
上記の翻訳版発行を伴うため,推奨時期,必須時期ともに米国の時期以降とな
る見込みです。

測定法ハンドブックは,引き続き2011年にリリース 5.0の発行が予定されてい
ます。


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●知識活用型企業への道「QMSにおける知的資産運用への取り組み」
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前回は,文書化された知識が活用されるには,書き手側の能力だけでなく使い
手側の能力(リテラシー)が必要であると述べ,双方の能力がマッチして初めて
文書化された知識が組織としてうまく活用できることを指摘しました。
また,組織活動ではルールと自由をセットとして捉えるべきであり,ルールを
定めることにより逆に自由に発想できる範囲が明確になり組織活動の無駄が少
なくなることを考えました。

組織活動では,ありすぎる自由は煩雑さと混沌をまねきやすく,多くの人が協
働する場合は,基本的なルールがあることが求められます。
このように考えると企業の組織活動を支えるシステム的なアプローチの基盤は
個々人の価値観に基づくものでなく,企業の価値観に基づかなければならない
と見えます。

ルール自体は個人の能力の多様性を否定するものでもなく,ましてや画一的な
行動を期待するのでもなく,組織活動として必要な企業の価値観をベースに方
向や段取りを定めるものであり,少なくともその組織活動に係わり合いを持つ
者は,これらを理解し実践することが求められます。
( 野球でもただ球を打てばいいのではなく,ルールがあるからゲームとなり,
 皆が競える競技となります。ルールはプレーヤーの個性や価値観を否定して
 いるものではありません。)

ルールを理解し実践するためには,組織は個人への教育訓練が不可欠なことは
もちろんですが,それとともにそのルール自体が適切なのか,また効果的なの
かなどの視点から企業自体の組織的学習が求められます。
( 現状に合わない,またはだれも守らないルールを提示してもゲームは楽しく
 ありません。)

一般的に教育訓練は個々人への教育に注目しがちですが,組織的な価値観を
個々人の価値観としてある程度求めるのであれば,組織は個人以上に学習しな
ければなりません。
その結果をもって初めて個々人への教育訓練を始めなければならないでしょう。
教育訓練の対象を個々の業務に絞って考えることも必要ですが,それとともに
マネジメントシステム自体が組織的学習能力を持ち成長しなければ結局は形骸
化し,従業員の個人的な能力成長に頼った弱いシステムになることは明らかで
す。

ゆえに企業はマネジメントシステム自体への教育訓練を忘れてはなりません。
(継続的改善)
そこで,今回はマネジメントシステムの組織的学習の中核的な考え方である
「システム思考」について少しお話させていただきます。
システム思考は,自動車を例に例えればエンジンが強力になり速度を上げるこ
とが可能となった場合でも,それに見合ったブレーキ性能,ハンドル性能,
タイヤ性能,車体剛性,ギヤーやショックアブソーバーなど,さまざまな自動
車としての構成要素が同時にバランスよく向上しなければそのエンジンを活か
した良い車としては完成しないということと似ています。

各構成要素とそれらを組み合わせ得られる全体特性を,バランスさせながら
マッチングさせる思考です。成功するために必要な一つの要素が弱くては,
成功に結び付くシステムは完成しません。
ここが重要です。システムは,弱いところのレベルにあったシステムになると
見ています。例えば,設計・開発力が優れていても,マーケティングやセール
スが貧弱であれば,結局は業績が上がらないということになります。

組織活動でのシステム思考の構成要素として,
 ①自己マスタリー(個々人の高い習熟性),
 ②メンタル・モデルの克服(固定化された概念やイメージの打破),
 ③共有ビジョンの構築(人々が心から参加し献身できる将来像),そして
 ④チーム学習(対話で始まる協働思考)(Seage,1990)
が指摘されています。
まずこれらの要素が適切な状態でなければシステム思考はできません。
(エンジンが無ければ,車の設計が適切にできないのと同じです。)

ISO で述べている業務遂行に必要な力量に関する教育訓練は,どちらかといえ
ば個人を対象とした自己マスタリーの要素にあたります。
それ以外のメンタルモデル,共有ビジョンおよびチーム学習という要素は,
個々人では無理なのでQMSとして学習しなければならないと見えます。
いくら個人への教育訓練を行ってもそれを活かす仕組みがなければ意味があり
ませんが,結構その点を忘れてしまいがちです。

皆さんのQMS を見返してみて,これらの要素がどのように組み込まれているの
か,考えてみてください。PDCAサイクルを回すにも,組織的学習の視点で考え
てみるといいでしょう。
品質方針・目標を共有ビジョンの構築の視点で見てください。また, QMS自体
をメンタル・モデルの克服の対象として考えてみてください。
その後これらを俯瞰してみてください。これらの要素は ISOの要求事項に具体
的にはありませんが,QMS を構築し維持していくために不可欠な概念を提示し
ています。現状ではどうしようもないと見えることも,具体的なものとして観
察できるようになります。

先に,自動車の例で述べましたが強力なエンジンが開発できなければ,高性能
な車を作るという目的は達成できません。一方で,特に強力なエンジンがなく
とも優れたバランスをもった車を世の中に送り出すことは可能です。
(このように発想を変えることがメンタルモデルの克服です。)
1台700万円の車と100万円の車では求められるバランスが異なり,その企業の
成功シナリオに対しバランスが取れたQMSが求められるでしょう。

観察したけ結果,どうしようもないと思われるQMSでも,バランスしたQMSの状
態が明らかになりそれなりに調整できれば,その QMSは企業目的に対しより有
益に機能することになるでしょう。
(逆にお受験QMSでは,試験100点で実技5点では,ほとんど役立つことは期待で
 きません。QMS担当者としては困ったことになります。)

先に述べたように企業の中で強力なエンジンがたまたま開発できたラッキーな
企業は,そのエンジンを武器にすればいいのですが,強力な武器を得るには大
変な資本と時間とそして運が必要です。だれもが簡単に強力なエンジンが手に
入るわけではありません。ないものねだりをしても仕方がありません。特に強
力な武器が手に入らなくとも,人材という資源があります。

楽天は2012年までに社内公用語を英語にすると発表しました。グローバル・ビ
ジネスを促進するために社内公用語を英語化することが不可欠だと,楽天は判
断されたと思います。この場合,少なくとも従来の業務能力にプラスして英語
力が人材に求められることになります。

共有ビジョンを提示し,メンタルモデルを変え,自己マスタリーを要求し,世
界的な視座でのチーム学習の促進を促すといったシステム的な思考が見てとれ
ます。
この例では,英語は活動の本質でないけれど,本質を活かすために不可欠な要
素であると企業がけ決心したのだと思います。
それに適合していない人たちは個人の価値観とは別に,将来的には企業活動か
ら残念ながら取り残されることになります。(英語が苦手な私としても,何と
もいい難いのですが現実にはそうなるのでしょう。)
この例は,組織の価値観が個人の価値観に影響を与えることを示しています。
当初は不満を言っているが個々人の自己マスタリーの内容が変わってくる例で
しょう。そして,結局英語がマスターできた人は活動の場が広がり感謝するで
しょう。

一方で,国内企業の教育訓練の実態を調査した「ものづくり白書2007」 (経産
省など)では,国内企業の一人あたりの教育訓練の経費が3000円/月,多くの企
業が「計画的なOJTが必要だ」と答えながらも,「業務が多忙で時間が取れな
い」と回答した企業が約64%あると報告されています。
企業が考えていることと,行動することのギャップが明確になっています。
QMS 自体でも「考えていること」と,「行動」とのギャップがあります。建て
前と本音の違いとも言えます。そこで建て前の議論から本音の議論へと脱皮し
なければ,例えば「グローバル企業になる」という建前から,具体的に行動を
促すことができる「公用語を英語にする」とした本音の議論に展開しなければ
「システム思考」は価値が出ません。建て前で構築した QMSはほとんど現実的
には役に立ちません。形を作ったらシステム思考で魂を入れなければいけない
でしょう。

そこで,本音のシステム思考を目指すために私たちは何を理解したらよいので
しょうか。建て前での議論と違い本音で議論を始めると具体的な話になります
が,そこで大きな障害になるのが,それを実現するためのリスクです。

例えば社内公用語を英語にしたら実務で活躍してきた人が実務で活躍できなく
なるかもしれない。皆が英語を習得できるとは考えられない。英語ができない
人をどのように処遇するのか。現実には英語でコミュニケーションがうまくと
れないかもしれない。業務効率が低下するのでは,などなどさまざまなリスク
が表面化してきます。

こうなると,そう簡単に社内公用語を英語にすることがいいのかどうか,悩み
始めてしまいます。楽天の場合は,さまざまなリスクを乗り越えても,今後の
企業の将来を支えるために英語化を選択し決心したのだと思います。

そこで次回では,本音でシステム思考を議論するときに起きるリスクに関係す
る考察を,リスクマネジメントの背景にある不確実性だけでなく,曖昧さと不
確定性についても話を進めてみたいと思います。
不確実性と不確定性の違い,曖昧さは何か,なぜ起きるのかなど,少し突っ込
んで確認するのも意味がありそうです。


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●編集後記
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雨模様で暑さも一服ですが,先日までは連日各地の最高気温がニュースになる
位に今年の暑さは厳しいですね。

皆さん,体調管理は万全でしょうか。

そんな猛暑のこの7月,今年も高校野球の地方予選が行われています。
よく行く蕎麦屋さんのテレビにも,グラウンドで真剣にプレーする人たち,ス
タンドで汗だくになって応援する人たちを映し出していました。その一生懸命
さに対して,蕎麦を食べながらときどき箸を休めて見てしまいました。

さて,QMS委員会は新体制になりました。どうぞよろしくお願いします。
皆さん,暑さに負けず,元気に笑顔でお仕事がんばっていきましょう。


最後までお読みいただき, 有難うございました。


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──「QMSを経営に活かしたいあなたに贈る」──

* 配信追加は下記にお知らせください。
 mailto:qmsmelg@ciaj.or.jp
* 発行:一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会 QMS委員会メルマガ編集部
 http://www.ciaj.or.jp/top.html
 http://www.ciaj.or.jp/qms/(QMS委員会ホームページ)
* 発行責任者:QMS委員会メルマガ編集部事務局(菅野 清裕)
* 皆様のご意見・ご要望をどしどしお寄せください!
 qmsmelg@ciaj.or.jp
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