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2022年度通期(4~3月) 通信機械生産・輸出入概況 ~部品不足による供給制約の解消と、円安のプラス影響により国内市場規模は拡大~

2023年6月14日

一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)では、2022年度通期(4-3月)の通信機械生産・輸出入の概況をまとめました。

I.概況

2022年度の日本経済は、実質GDP成長率(1次速報値:5月17日)が前年度比1.4%増と2年連続のプラス成長となりました(1-3月期は年率換算で2.7%増)。個人消費は回復基調が続いているほか、設備投資は供給制約の緩和によって企業の自動車購入なども増えて持ち直しています。

この中で、2022年度の通信機器市場では、半導体不足の影響による部品調達難が解消され、ビジネス活動が活発化したことからボタン電話装置、構内用交換機、事業所用コードレスなどのビジネス機器が回復し、ネットワークインフラ増強のために有線ネットワーク機器が国内需要で好調な上に、円安効果によって輸出が好調で増加しています。一方で5G SA基地局やミリ波対応基地局の設備投資が進んでおらず、基地局通信装置関連は低迷が続いています。

(1)国内市場動向

2022年度の国内市場金額(=国内生産金額-輸出金額+輸入金額:部品除く)は3兆7,033億円となり、前年度比では13.1%増と増加しました。部品不足による供給制約が解消した機種は回復し、円安でプラス影響があった輸入機種も増加し、国内市場は拡大しました。

(2)国内生産動向

2022年度の国内生産金額は4,847億円、前年度比では1.0%減と2年連続で減少しました。搬送装置関連が堅調で、供給制約の影響で生産が低迷していた機種も回復しつつありますが、移動体端末機器や無線ネットワーク関連機器が低迷し、国内生産は微減となりました。

(3)輸出動向

2022年度の輸出総額は3,580億円、前年度比では7.7%増と2年連続で増加しました。部品輸出が世界的なスマートフォンの需要減速によって減少していますが、ネットワーク関連機器の輸出がネットワークインフラ増強の投資が好調で、加えて円安効果もあって増加しました。

(4)輸入動向

2022年度の輸入総額は3兆6,129億円となり、前年度比では13.3%増と2年連続で3兆円を超えました。携帯電話が、物価高や部材費高騰を転嫁した端末値上げなどから買い替えサイクルが延びているために輸入台数は減少しましたが、海外メーカー製の高価格帯モデルが堅調な上に円安影響もあって輸入金額は増加しました。

II.国内市場動向(生産動態統計と貿易統計からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表1-1、図表1-2)

機種別の2022年度の実績は以下の通りです。国内需要が好調なため端末機器とネットワーク関連機器がともに増加したことから、前年度比では増加が続いています。

①端末機器:2兆5,270億円(前年同期比 15.0%増
②ネットワーク関連機器:1兆1,764億円(前年同期比 9.2%増

生産動態統計と貿易統計から「国内市場規模=国内生産金額-輸出金額+輸入金額」として、国内市場規模を算出しています(海外メーカーの輸入額も含みます)。

図表1-1:国内市場(機種別、年度別
図表1-2:国内市場(機種別、四半期別

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表2-1、図表2-2)

機種別の2022年度の実績は以下の通りです。

①有線端末機器
439億円(前年度比12.0%増)。うち電話機14億円(同7.8%減)、ボタン電話装置144億円(同8.6%増)、インターホン281億円(同15.1%増)となりました。ボタン電話装置は、半導体などの部品調達難の解消が進んで国内生産が増加しました。またインターホンは部品不足による供給制約や円安による部品調達コストの上昇で国内需要は低迷しましたが、海外向けの販売が好調なことから国内生産は増加しました。

②移動体端末機器
1,463億円(前年同期比4.1%減)。うち陸上移動通信装置1,299億円(携帯電話分に相当1,096億円)、海上・航空移動通信装置164億円(同18.6%減)となりました。物価上昇や部材費高騰によって端末価格が上昇し、買い替えサイクルが長期化した影響により国内生産は減少しました。

③有線ネットワーク関連機器
1,479億円(前年度比9.3%増)。うち交換機(局用と構内用)190億円(同11.8%減)、デジタル伝送装置580億円(同5.5%減)、その他の搬送装置709億円(同35.5%増)となりました。交換機(主に構内用)は、部材費高騰を価格転嫁したことから買い控えなどもあって国内生産は減少しました。デジタル伝送装置の国内生産は減少しましたが、PON・MCなどを含むその他の搬送装置が国内生産を増やしています。

④無線ネットワーク関連機器
933億円(前年度比17.6%減)。うち固定通信装置251億円(同14.5%減)、基地局通信装置683億円(同18.7%減)。固定通信装置は、携帯電話基地局のバックホール需要があったものの、防災行政無線向けなどの需要が減少しました。基地局通信装置は、5G SA基地局やミリ波対応基地局の設備投資が進まず、国内生産は低迷が続いています。

⑤ネットワーク接続機器
291億円(前年度比23.1%増)。半導体不足によって一部の機種で供給不足の影響が出ていますが、ネットワークインフラ投資などによって官庁、通信事業者や民間向けの需要が大幅に増加し、国内生産が増加しました。

⑥ 有線部品(有線機器用リレー、中継器用など)
269億円(前年度比1.3%減)。世界的なスマートフォン減速によって輸出される生産用部品が減少し、国内生産が減少しています。

図表2-1:生産総額(機種別、年度別)
図表2-2:生産総額(機種別、四半期別)

IV.輸出動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表3-1、図表3-2)

機種別の2022年度の実績は以下の通りです。

①電話機及び端末機器216億円(前年度比4.8%減
内訳は、携帯電話169億円(同9.9%減)、コードレスホン3億円(同440.5%増)、その他45億円(同14.2%増)となりました。経済活動が回復してアジア向けコードレスホン、業務用無線の輸出が増加しましたが、携帯電話では米国向けスマートフォンが減少しました。

②ネットワーク関連機器1,622億円(前年度比18.6%増))
内訳は、基地局283億円(同12.6%減)、データ通信機器1,304億円(同28.1%増)、その他ネットワーク関連機器35億円(同33.0%増)となりました。データ通信機器は、海外でのネットワークインフラ投資が継続しており、円安効果もあって増加しました。

③部品(有線系・無線系の合計)1,742億円(同0.7%増
世界的なスマートフォン減速によってアジア新興国向けのスマートフォン生産用部品が減少しましたが、米国向けの部品輸出が大幅に増加して、部品輸出は2年連続で増加しました。

図表3-1 輸出動向(機種別、年度別)
図表3-2 輸出動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表3-3、図表3-4)

地域別の2022年の実績は、アジア向けが1,747億円(前年度比10.1%減)、うち中国向けは769億円(同20.7%減)。北米向けが1,350億円(同31.7%増)、うち米国は1,322億円(同31.8%増)。欧州向けは380億円(同30.8%増)、うちEUは303億円(同40.5%増)となりました。米国向けでは携帯電話や基地局の輸出は減少しましたが、データ通信機器や部品の輸出が大幅に増加したために、2年連続で米国向けが中国向けを上回っています。

(3)地域別構成比

1位 アジア 48.8% (前年比 -9.6%)
2位 北米 37.7% (同 +6.9%)
3位 欧州 10.6% (同 +1.9%)
その他地域 2.9% (同 +0.8%)
図表3-3 輸出動向(地域別、年度別)
図表3-4 輸出動向(地域別、四半期別

Ⅴ.輸入動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表4-1、図表4-2)

機種別の2022年度の実績は以下の通りです。

①電話機及び端末機器2兆3,584億円(前年度比16.3%増
内訳は、携帯電話2兆3,461億円(同16.2%増)、コードレスホン50億円(同28.5%増)、その他74億円(同21.0%増)となりました。携帯電話は、買い替えサイクルが長期化していることから需要が減少し、海外生産された国内メーカー製や海外メーカー製の輸入台数は減少しましたが、海外メーカー製の高価格帯モデルが堅調な上に円安影響もあって輸入金額は増加しました。コードレスホンは、海外工場での部品供給不足や生産人員不足によって停滞した生産が回復して輸入が増加しました。

②ネットワーク関連機器1兆682億円(同13.5%増
内訳は、基地局620億円(同29.9%減)、データ通信機器9,808億円(同17.9%増)、その他ネットワーク関連機器254億円(同21.1%増)となりました。基地局は、設備投資が低迷しているためにアジアや欧州からの輸入が減少しました。一方で、データ通信機器(ルーター・スイッチおよびその他(伝送装置、通信装置、変復調装置等))はネットワークインフラ投資やデータセンター設備投資などに向けて輸入が増加しました。

③部品(有線機器と無線機器用部品の合計)1,863億円(同14.7%減

図表4-1 輸入動向(機種別、年度別)
図表4-2 輸入動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表4-3、図表4-4)

地域別の2022年度の実績では、アジアからが3兆4,439億円(前年同期比13.0%増)、うち中国は2兆7,456億円(同13.7%増)。北米からは613億円(同33.1%増)、うち米国は554億円(同33.3%増)。欧州からは616億円(同0.0%増)、うちEUは575億円(同2.1%減)。

アジアからは円安影響もあってスマートフォンの輸入が増加しました。北米や欧州からはデータ通信機器(その他(伝送装置、通信装置、変復調装置等))の輸入が増加しました。

(3)地域別構成比

1位 アジア 95.3% (前年同期比 -0.3%)
2位 北米 1.7% (同 +0.3%)
3位 欧州 1.7 (同 -0.2%)
その他地域 1.3% (同 +0.2%)
図表4-3 輸入動向(地域別、年度別)
図表4-4 輸入動向(地域別、四半期別)

VI.受注・出荷動向(CIAJ受注・出荷統計より)

(1)2022年度の実績

CIAJ会員の国内メーカーによる受注出荷の2022年度の実績は1兆5,709億円で前年度比13.3%増となりました。このうち、国内出荷は1兆1,767億円の同比5.4%増となり、輸出が3,942億円の同比45.7%増となりました。国内出荷は、買い替えサイクルが延びている携帯電話が減少しましたが、固定通信装置での大型案件がプラスとなり前年度比で増加しました。輸出は、海外経済減速に左右されることなく、円安効果もあって前年度比で増加しました。
※CIAJ受注・出荷統計=CIAJ会員の国内メーカーの受注・出荷額
(=国内出荷額+輸出額 =国内生産額+海外生産した輸入額)

(2)機種別動向

国内出荷と輸出を合わせた機種別の2022年度の実績は以下の通りです。

①有線端末機器 5,552億円(前年度比18.7%増
事業所用コードレスやファクシミリ(複合機を含む)は、供給制約は緩和されましたが、円安による部品価格や輸送費高騰を背景とする価格転嫁を反映して単価がアップしたことから、台数は減少したものの金額は増加しました。特にファクシミリでは、ビジネス需要が活発化した米欧アジア向けの輸出が増加し、円安効果もあって大幅に増加しました。

②移動体端末機器 3,612億円(同比12.2%減
携帯電話は、物価上昇や部材費高騰による端末価格上昇で買い替えサイクルが長期化した影響でスマートフォン需要が低迷しており、出荷台数と金額ともに減少しています。その他の移動端末機器も減少しました。

③有線ネットワーク関連機器 2,489億円(同比21.6%増
ボタン電話や構内用電子交換機は、半導体などの部品調達難が解消して回復基調にあり、増加しました。デジタル伝送装置やPON/MCは、ネットワークインフラの設備投資が回復して大幅に増加しています。特にデジタル伝送装置の輸出は、海外でのネットワークインフラ増強のための設備投資が増加し、円安効果もあって大幅に増加しました。

④無線ネットワーク関連機器 3,366億円(同比45.5%増
固定通信装置は、地上系では携帯電話基地局のバックホール需要があったものの防災無線関連の需要が低迷したことから減少した一方で、衛星系では官庁向けの大型案件があり増加しました。基地局通信装置は、5G SA基地局やミリ波対応基地局の設備投資が進まず国内は減少していますが、O-RANを活用した米欧向けの輸出が増加しました。

⑤その他ネットワーク関連機器 437億円(同比18.3%増
ルーターとLANスイッチともに、ネットワークインフラ投資やビジネス需要の回復によって官庁、通信事業者や民間向けの需要が大幅に増加しました。

⑥通信機器用部品 252億円(同26.8%減

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