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2022年度第1四半期(4~6月) 通信機械生産・輸出入概況 ~5G通信向けインフラ需要が一段落し、部品調達難などもあって、国内生産は低迷~

2022年9月14日

一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)では、2022年度第1四半期(4-6月)の通信機械生産・輸出入の概況をまとめました。

I.概況

2022年度4月~6月の日本経済は、実質GDP成長率(2次速報値:9月8日)が年率換算で3.5%増と3四半期連続のプラス成長となった。個人消費が、蔓延防止等重点措置が解除されたあとの大型連休中に旅行や外食が増えたことから増加しました。企業の設備投資も、新型コロナ禍や半導体・部品不足による影響から回復しつつあり、堅調な企業業績を背景にして増加しました。

この中で、2022年度4月~6月の通信機器市場では、光ケーブル網の拡大工事が進み、ネットワークインフラ関連機器が再び増加傾向にありますが、設備投資が一段落している5G基地局関連は低迷しており、また部品調達難が緩和されつつも影響が継続しているビジネス関連機器(ファクシミリと構内用交換機を除き)も低迷しています。さらに円安による部品価格高騰によって製品単価が上がり買い控えに繋がるリスクもあり、大幅な回復は難しい状況にあります。

(1)国内市場動向

4月~6月の国内市場金額(=国内生産金額-輸出金額+輸入金額:部品除く)は7,602億円となり、前年同期比では0.6%増と増加しました。輸入額の大半を占めているスマートフォンの輸入が増加したことから、国内生産額の減少よりも、輸入額の増加が上回りました。

(2)国内生産動向

4月~6月の国内生産金額は733億円、前年同期比では18.4%減となりました(秘匿となった携帯電話を除外)。5G通信向けインフラ需要が一段落したことや、部品調達難による生産減少などから、国内生産は4四半期連続で減少しました。

(3)輸出動向

4月~6月の輸出総額は718億円、前年同期比では13.0%減となり、5四半期ぶりに減少しました。中国のロックダウンなどの影響やスマートフォン市場の低迷から、海外で生産されるスマートフォン向け部品の輸出が減少しました。

(4)輸入動向

4月~6月の輸入総額は7,794億円、前年同期比では5.7%増となり、2四半期連続で増加しました。国内でのスマートフォン需要の回復に合わせて、海外で生産されたスマートフォンの輸入が増加しました。ルーター&スイッチなどのデータ通信機器も好調なため、(2)国内生産の減少額をカバーして、(1)国内市場額が増加しました。

II.国内市場動向(生産動態統計と貿易統計からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表1-1)

機種別の4月~6月の実績は以下の通りです。端末機器は伸びましたが、ネットワーク関連機器が減少したことから、前年同期比では2四半期連続でほぼ横ばいとなりました。

①端末機器:5,129億円(前年同期比 3.1%増
②ネットワーク関連機器:2,473億円(前年同期比 4.2%減

なお、生産動態統計と貿易統計から「国内市場規模=国内生産金額-輸出金額+輸入金額」として国内市場規模を算出しています(海外メーカーの輸入額も含みます)。生産動態統計で携帯電話が2021年度4Qから秘匿となり、以降、携帯電話分は合計に含まれていません

図表1-1:国内市場(機種別、四半期別

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表2-1)

機種別の4月~6月の実績は以下の通りです。

①有線端末機器
98億円(前年同期比17.2%増)。うち電話機3億円(同17.5%減)、ボタン電話装置31億円(同4.3%減)、インターホン64億円(同34.9%増)となりました。半導体・部品不足の影響が続く電話機やボタン電話装置の生産が減少しましたが、住宅やオフィスの設置工事が新型コロナ禍の影響から回復しつつあるため、インターホンの国内生産は増加しました。

②移動体端末機器
100億円(前年同期比4.2%増携帯電話が2021年度4Qから秘匿となり、以降、携帯電話分が合計に含まれない。前年同期比では、前年度で携帯電話分を除外して算出した)。その他の移動体端末機器のうち、その他の陸上移動通信装置82億円(同25.0%増)、海上・航空移動通信装置18億円(同41.2%減)となりました。海外での新型コロナ禍からの経済回復により、陸上移動通信装置の海外需要が増加し、国内生産は増加しました。

③有線ネットワーク関連機器
317億円(前年同期比7.8%減)。うち交換機53億円(同12.7%減)、デジタル伝送装置143億円(同9.5%減)、その他の搬送装置121億円(同3.3%減)となりました。構内用交換機は、働き方改革や新コミュニケーションスタイルへの対応もあって横ばい傾向に加え、半導体不足によって国内生産が減少しました。デジタル伝送装置は、半導体・部品不足による供給制約が継続して国内生産が減少しました。

④無線ネットワーク関連機器
107億円(前年同期比54.2%減)。うち固定通信装置29億円(同24.9%減)、基地局通信装置77億円(同60.1%減)。固定通信装置は、地上系で携帯電話基地局のバックホール需要はあったものの、防災行政無線向けの需要が減少しました。基地局通信装置は、5G基地局の設備投資が一段落し、部材不足の影響もあって国内生産は減少しました。

⑤ネットワーク接続機器
40億円(前年同期比44.6%減)。5G通信インフラの需要が伸びず、半導体不足もあって国内生産は減少しました。

⑥有線部品(有線機器用リレー、中継器用など)
71億円(前年同期比2.8%増)。新型コロナ禍から需要回復しつつある機器生産に向けて、有線部品の国内生産も増加しました。

図表2-1:生産総額(機種別、四半期別)

IV.輸出動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表3-1)

機種別の4月~6月の実績は以下の通りです。

① 電話機及び端末機器64億円(前年同期比16.8%増
内訳は、携帯電話51億円(同18.9%増:携帯電話は2021年度4Qから「スマートフォン」と「携帯回線網用その他の無線回線網用のその他の電話」に分割されたが、便宜上、合算したものを携帯電話とした)、コードレスホン1億円(同63.6%増)、その他13億円(同7.6%増)となりました。米国向けのスマートフォンや、経済活動が回復してきている海外市場向けの業務用無線などが増加しました。

② ネットワーク関連機器329億円(同4.9%増)
内訳は、基地局47億円(同2.3%増)、データ通信機器275億円(同6.0%増)、その他ネットワーク関連機器7億円(同15.7%減)となりました。経済活動が回復してきている海外市場向けで需要が増加、米国向けのスマートフォンや基地局の輸出も増加しました。

③ 部品(有線系・無線系の合計)325億円(同28.9%減部品は2021年度4Qから「アンテナ及びアンテナ反射器並びにこれらに使用する部品」と「その他の部品」に分割されたが、便宜上、合算したものを部品とした)、中国のロックダウンなどの影響やスマートフォン市場の低迷から、スマートフォン生産用部品の輸出が減少しました。

図表3-1 輸出動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表3-2)

地域別の4月~6月の実績は、アジア向けが365億円(前年同期比33.0%減)、うち中国向けは144億円(同47.1%減)。北米向けが255億円(同34.8%増)、うち米国は249億円(同34.0%増)。欧州向けが73億円(同3.6%減)、うちEUは60億円(同3.9%増)となりました。

米国向けでスマートフォンや基地局の輸出が増加しており、部品輸出でも、中国向けの比率が減少している一方で、米国向けの比率が増加している。

(3)地域別構成比

1位 アジア 50.8% (前年同期比 -15.2%)
2位 北米 35.5% (同 +12.6%)
3位 欧州 8.7% (同 +1.0%)
その他地域 2.0% (同 +1.5%)
図表3-2 輸出動向(地域別、四半期別)

Ⅴ.輸入動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表4-1)

機種別の4月~6月の実績は以下の通りです。

① 電話機及び端末機器4,995億円(前年同期比8.6%増
内訳は、携帯電話4,968億円(同8.6%増:携帯電話は2021年度4Qから「スマートフォン」と「携帯回線網用その他の無線回線網用のその他の電話」に分割されたが、便宜上、合算したものを携帯電話とした)、コードレスホン10億円(同2.8%減)、その他17億円(同40.1%増)となりました。スマートフォンは、公的機関などでの利用のための買い替えが進み、夏モデルの出荷も好調なため、海外で生産されるスマートフォンの輸入が増加しました。

② ネットワーク関連機器2,338億円(同4.1%増
内訳は、基地局85億円(同72.0%減)、データ通信機器2,201億円(同16.5%増)、その他ネットワーク関連機器52億円(同5.0%減)となりました。データ通信機器のうち、スイッチング機器及びルーティング機器986億円(同30.0%増)、その他のデータ通信機器(伝送装置、通信装置、変復調装置等)1,215億円(同7.5%増)となりました。基地局の国内需要が低迷して輸入も減少しましたが、ネットワークの光化や高速化の需要は増加しています。

③ 部品(有線機器と無線機器用部品の合計)461億円(同13.5%減:部品は2021年度4Qから「アンテナ及びアンテナ反射器並びにこれらに使用する部品」と「その他の部品」に分割されたが、便宜上、合算したものを部品とした

図表4-1 輸入動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表4-2)

地域別の4月~6月の実績では、アジアからが7,464億円(前年同期比6.9%増)、うち中国は5,724億円(同0.9%増)。北米からは117億円(同4.6%増)、うち米国は110億円(同6.2%増)。欧州からは121億円(同36.6%減)、うちEUは117億円(同36.6%減)となりました。

アジアからは、基地局の輸入が前年比で減少しましたが、携帯電話や、スイッチング機器及びルーティング機器の輸入が増加しており、好調を継続しています。

図表4-2 輸入動向(地域別、四半期別)

(3)地域別構成比

1位 アジア 95.8% (前年同期比 +1.1%)
2位 北米 1.5% (同 ±0%)
3位 欧州 1.6% (同 -1.0%)
その他地域 1.2% (同 ±0%)

VI.受注・出荷動向(CIAJ受注・出荷統計より)

(1)2022年度4~6月の実績

CIAJ会員の国内メーカーによる受注出荷の4月~6月の実績は3,442億円で、前年同期比3.3%増となりました。このうち、国内出荷は2,660億円の同比4.7%増、輸出は782億円の同比1.3%減となりました。

国内出荷は、端末機器が減少した一方で、ネットワーク関連機器が増加したため、前年同期比で増加しました。輸出は、有線端末・ネットワーク関連機器が増加した一方で、無線ネットワーク関連機器の減少によって前年同期比で微減となりました。
※CIAJ受注・出荷統計=CIAJ会員の国内メーカーの受注・出荷額
(=国内出荷額+輸出額 =国内生産額+海外生産した輸入額)

(2)機種別動向

国内出荷と輸出を合わせた機種別の4月~6月の実績は以下の通りです。

① 有線端末機器 1,130億円(前年同期比3.5%増
インターホンや事業所用コードレスホンなどは、部品不足の影響が続いて減少し、電話機も、海外生産での部品不足や人員不足の影響を受けて減少しました。一方で、ファクシミリ(パーソナルとビジネス向けを含む、複合機を含む)の国内出荷や輸出は、企業活動が戻りつつあることから回復しました。このため、有線端末機器全体では同比で増加しました。

② 移動体端末機器 887億円(同比7.4%減
携帯電話は、5G対応スマートフォンへ買い替えが進んでいますが、購入価格帯が下がることにより、フィーチャ―フォンを含めた携帯電話全体では出荷金額が減少しました。さらに、その他の移動端末機器も大きく減少したことから、移動体端末機器全体では同比で減少しました。

③ 有線ネットワーク関連機器 543億円(同比27.0%増
ビジネス機器は、企業の設備投資の延期再開などから国内需要は回復しつつあり、構内用交換機は増加しましたが、電子部品の調達難による供給制約もあるボタン電話は減少しました。デジタル伝送装置やPON・MCは、光ケーブル網の拡大工事が進み、部品不足による供給制約もありますが再び増加しています。(デジタル伝送装置の輸出も海外市場の回復により増加)。このため、有線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

④ 無線ネットワーク関連機器 728億円(同比6.0%増
5G向けの基地局通信装置が、国内の投資が落ち着いたことから減少し、グローバル出荷となる米国向け輸出も減少しました。地上系固定通信装置も国内需要は減少しましたが、輸出は海外市場の5Gインフラ構築に向けて増加しました。衛星系固定通信装置は国内需要と輸出とも大幅に増加しました。このため、無線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

⑤ その他ネットワーク関連機器 87億円(同比18.7%増
LANスイッチは、半導体などの部品不足の影響があり減少しました。一方でルーターは、データセンターなどに向けたインフラの高速化需要で増加しました。このため、その他ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

⑥ 通信機器用部品 67億円(同29.8%減

【補足】国内生産動向での携帯電話の動向

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」)において、比較的大きな実績値をもつ「携帯電話」が、2021年度4Qから秘匿となったため、推定した結果を図表に追記し、その差異を把握しました。

推定方法は、CIAJ受注出荷統計での携帯電話実績の比率を参照し、同様の傾向になると仮定して、生産額の2021年度1~3月分、2022年度4~6月分を推定しました(緑色のセル)。

また、前年同期比は携帯電話分を除外して算出していたものから、携帯電話分を含めて算出し直しています。

図表2-1 補足 生産総額(機種別、四半期別)

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