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2020年度上期(4~9月) 通信機械生産・輸出入概況 ~通信インフラ・ネットワーク機器は好調を継続するも、新型コロナ禍等で携帯電話やビジネス機器は低迷~

2020年12月16日

一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)では、2020年度上期(4-9月)の通信機械生産・輸出入の概況をまとめました。

I.概況

2020年4-9月の日本経済は、実質GDP成長率(7-9月の2次速報値:12月8日)が年率22.9%と新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大による大幅減少の反動で大きな伸び率となりましたが、依然、感染拡大前の水準には戻っておらず、感染拡大防止と経済活動の両立を図るという厳しい状況の中で持ち直しの動きがみられています。

この中で通信機器市場は、5G向け通信インフラ構築や光ケーブル網の全国整備に合わせたネットワーク設備投資の需要が継続して増加していますが、新型コロナ禍の影響による事業活動縮小や需要低迷によって、需要額で大きな割合を占める携帯電話などのコンシューマ関連機器やビジネス関連機器の需要が減少しました。

(1)国内市場動向

4月~9月の国内市場金額(=国内生産金額-輸出金額+輸入金額:部品除く)は1兆1,644億円となり、前年同期比では3.5%減と減少しました。輸入総額の減少が影響しています。

(2)国内生産動向

4月~9月の国内生産金額は2,223億円、前年同期比では0.5%減となりました。新型コロナ禍により携帯電話などの端末機器の国内生産が減少したことから、上下期では2018年度下期から3期ぶりに減少しました。

(3)輸出動向

4月~9月の輸出総額は1,321億円で、前年同期比16.0%減と減少が継続しています。アジアの新興国でスマートフォン出荷が頭打ちになり、その生産に向けた部品輸出が減少したことに加え、新型コロナ禍で海外景気が減速したことから、上下期では5期連続で減少しました。

(4)輸入動向

4月~9月の輸入総額は1兆1,202億円となり、前年同期比4.3%減となりました。ネットワーク関連の国内需要は好調を継続していますが、輸入総額のうち大きな割合を占める携帯電話が買い控えなどから減少したために、上下期では4期連続で減少しました。

II.国内市場動向(生産動態統計と貿易統計からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表1-1、図表1-2)

機種別の4月~9月の実績は以下の通りです。
生産動態統計と貿易統計から「国内市場規模=国内生産金額-輸出金額+輸入金額」として、国内市場規模を算出しています(海外メーカーの輸入額も含みます)。

①端末機器:6,743億円(前年同期比 15.8%減)
②ネットワーク関連機器:4,901億円(前年同期比 20.7%増)

図表1-1:国内市場(機種別、半期別
図表1-2 国内市場(機種別、四半期別)

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表2-1、図表2-2)

機種別の4月~9月の実績は以下の通りです。

①有線端末機器
203億円(前年同期比18.9%減)。うち電話機9億円(同8.5%減)、ボタン電話装置63億円(同8.3%減)、インターホン132億円(同23.8%減)となりました。新型コロナ感染拡大による購入意欲の低下や、住宅やオフィスビルの着工の遅れなどから、インターホンやボタン電話の需要が大きく減少しました。

②移動体端末機器
757億円(前年同期比7.0%減)。うち携帯電話521億円(同9.5%減)となりました。新型コロナ感染拡大による購入意欲の低下や5G端末発売を前にした買い控えなどによって携帯電話の需要が低迷し、国内生産も減少しました。

③有線ネットワーク関連機器
730億円(前年同期比20.9%増)。うち局用交換機73億円(同90.5%増)、構内用交換機14億円(同56.6%減)、デジタル伝送装置327億円(同55.7%増)、その他の搬送装置283億円(同3.3%減)となりました。構内用交換機は、固定電話の利用機会の減少や在宅勤務によるオフィスの縮小などよって国内生産が大きく減少しました。デジタル伝送装置は、5G向け通信インフラ構築や光ケーブル網の全国整備に合わせて、バックボーンとなるネットワーク設備としての需要が好調で、国内生産の増加が継続しています。

④無線ネットワーク関連機器
279億円(前年同期比10.6%増)。うち固定通信装置106億円(同10.0%減)、基地局通信装置173億円(同28.5%増)。固定通信装置は、民間の設備投資が低迷しているために国内生産が減少しましたが、基地局通信装置は、5G向け通信インフラ構築に向けて国内生産の増加が継続しています。

⑤ネットワーク接続機器
134億円(前年同期比24.6%減)。新型コロナ禍の影響によって、テレワークやオンライン会議によるネットワークトラフィックが増加して通信事業者や官庁向けの需要が好調ですが、民間の企業の設備投資が減少するとともに、価格競争激化による単価の下落などもあり、国内生産は同比で減少しました。

⑥有線部品(有線機器用リレー、中継器用など)
120億円(前年同期比11.9%減)。海外で生産されるスマートフォン向けの部品輸出が減少しているために、部品生産の減少も継続しています。

図表2-1:生産総額(機種別、半期別)
図表2-2 生産総額(機種別、四半期別)

IV.輸出動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表3-1、図表3-2)

機種別の4月~9月実績は以下の通りです。

①電話機及び端末機器92億円(前年同期比23.6%減)
内訳は、携帯電話75億円(同29.7%減)、コードレスホン1.2億円(同6.5%増)、その他16億円(同23.0%増)となりました。携帯電話が海外景気低迷の影響でさらに減少しました。

②ネットワーク関連機器489億円(同18.5%減)
内訳は、基地局4億円(同67.3%減)、データ通信機器473億円(同16.3%減)、その他ネットワーク関連機器12億円(同46.2%減)となりました。データ通信機器が海外景気低迷によって大幅に減少したことから輸出が低迷しています。

③部品(有線系・無線系の合計)740億円(同13.2%減)
最大輸出時と比べて輸出額が3分の1まで減少していますが、5G関連やデータセンター向けの需要が高まっており輸出が持ち直しつつあります。

図表3-1 輸出動向(機種別、半期別)
図表3-2 輸出動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表3-3、図表3-4)

地域別の4月~9月実績は、アジア向けが819億円(前年同期比14.8%減)、うち中国向けは241億円(同27.6%減)。北米向けが322億円(同10.6%減)、うち米国は317億円(同10.9%減)。欧州向けは144億円(同27.7%減)、うちEUは106億円(同38.1%減)となりました。

通商問題などから輸出全体に占める中国輸出の割合は18.3%とさらに減少しました。また、新型コロナの感染再拡大が懸念される米国や欧州への輸出も減少しています。

(3)地域別構成比

1位 アジア 62.0% (前年同期比 +0.8%)
2位 北米 24.3% (同 +1.4%)
3位 欧州 10.9% (同 -1.7%)
その他地域 2.8% (同 -0.5%)
図表3-3 輸出動向(地域別、半期別)
図表3-4 輸出動向(地域別、四半期別)

Ⅴ.輸入動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表4-1、図表4-2)

機種別の4月~9月実績は以下の通りです。

①電話機及び端末機器5,875億円(前年同期比16.8%減)
内訳は、携帯電話5,816億円(同17.0%減)、コードレスホン23億円(同2.2%減)、その他36億円(同9.4%増)となりました。携帯電話は、買い控えなどから需要が減少したことと、海外メーカー新製品の発売月が前年と異なったためにスマートフォンの輸入が減少しました。

②ネットワーク関連機器4,247億円(同17.1%増)
内訳は、基地局374億円(同84.4%増)、データ通信機器3,778億円(同13.4%増)、その他ネットワーク関連機器95億円(同3.5%増)となりました。ネットワーク設備投資の需要増により、データ通信機器のうち、スイッチング機器及びルーティング機器と、その他(伝送装置、通信装置、変復調装置等)がともに増加しました。

③部品(有線機器と無線機器用部品の合計)1,080億円(同6.6%増)

図表4-1 輸入動向(機種別、半期別)
図表4-2 輸入動向(機種別、四半期別

(2)地域別の詳細動向(参照:図表4-3、図表4-4)

地域別の4月~9月実績では、アジアからが1兆432億円(前年同期比4.1%減)、うち中国は7,713億円(同7.6%減)。北米からは284億円(同21.2%減)、うち米国は260億円(同23.5%減)。欧州からは310億円(同36.4%増)、うちEUは305億円(同39.1%増)。

欧州からは、部品(同126.8%増)、基地局(同1,116.0%増)の輸入が増えています。

(3)地域別構成比

1位 アジア 93.1% (前年同期比 +0.1%)
2位 北米 2.5% (同 -0.6)
3位 欧州 2.8% (同 +0.9%)
その他地域 1.6% (同 -0.4%)
図表4-3 輸入動向(地域別、半期別)
図表4-4 輸入動向(地域別、四半期別)

VI.受注・出荷動向(CIAJ自主統計「受注・出荷統計」より)

(1)2020年度上期(4-9月)の実績

4月~9月のCIAJ自主統計受注・出荷総額は6,606億円で前年同期比12.2%減となり、このうち、国内出荷は5,474億円の同比8.5%減、輸出が1,131億円の同比26.6%減となりました。
※自主統計「受注・出荷」=CIAJ会員の国内メーカーの受注・出荷額
(=国内出荷額(国内生産+海外生産)+輸出額 =国内生産額+海外生産した輸入額)

(2)機種別動向

機種別の4月~9月実績は以下の通りです。

①有線端末機器 2,181億円(前年同期比19.3%減)
新型コロナ禍の影響を受けて、コードレスホンやインターホンなどの国内需要が減少した上に、海外景気低迷によってパーソナルファクシミリ(パーソナルファクシミリ複合機を含む)やビジネスファクシミリ(ビジネスファクシミリ複合機を含む)の輸出も減少したため、有線端末機器全体では同比で大きく減少しました。

②移動体端末機器 1,962億円(同比8.6%減)
携帯電話は買い控えなどによって需要が低迷しました。その他の移動端末機器(防災用/業務用無線など)は輸出が好調でした。

③有線ネットワーク関連機器 1,108億円(同比8.0%増)
ボタン電話や構内用電子交換機などのビジネス機器は、新型コロナ禍によるワークスタイルの変革が影響し、固定電話の利用機会の減少や在宅勤務によるオフィスの縮小などよって減少しました。一方で、デジタル伝送装置やPON/MCは、国内需要が好調を継続していることから、有線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

④無線ネットワーク関連機器 1,064億円(同比17.7%減)
携帯電話向けの基地局通信装置の需要が5G商用化サービスに向けて増加していますが、官庁や民間向けの地上系通信装置と官庁向け衛星系通信装置が前年同期に大きな需要があった対比で大幅に減少するため、無線ネットワーク関連機器全体では同比で減少しました。

⑤その他ネットワーク関連機器 165億円(同比23.4%減)
ルーターは横ばいに対し、民間の設備投資が低迷していることからLANスイッチが大幅に減少したため、その他ネットワーク関連機器全体では同比で減少しました。

⑥通信機器用部品 126億円(同11.2%減)

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