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2019年度通期(4~3月) 通信機械生産・輸出入概況 ~新型コロナ影響等により輸出は不振、ネットワーク関連機器は堅調で国内生産は14年ぶりに増加~

2020年6月3日

一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)では、2019年度通期(4-3月)の通信機械生産・輸出入の概況をまとめました。

I.概況

2020年1-3月の日本経済は、実質GDP成長率(1次速報値:5月18日)が年率換算で▲3.4%と2四半期連続のマイナス成長となりました。新型コロナの影響等もあり、個人消費は消費税増税による落ち込みが回復する前に外出自粛で減少、設備投資は年度後半から建設工事や機械生産の低迷が継続して先送りによる減少、輸出は世界景気悪化、輸入は内需低迷などから減少しました。

この中で通信機器市場では、スマートフォンの需要が、従来型フューチャーフォンからの買替が進んだものの、電気通信事業法改正前後での様子見のほか、新型コロナ影響等による購入意欲の低下、第5世代移動通信システム(5G)の端末発売を前にした買い控えなどを背景にして減少しています。一方、5G利活用でのデータトラフィックの増加に向けて、バックボーンとなる有線ネットワーク関連機器の需要が増加し、さらに基地局やルーターなど携帯電話インフラ機器の需要も増加しつつあります。

(1)国内市場動向

2019年度の国内市場金額(=国内生産金額-輸出金額+輸入金額:部品除く)は2兆7,005億円となり、前年比では7.4%減と減少しました。海外で生産される国内メーカー製および海外メーカー製の携帯電話の輸入減少が影響しています。

(2)国内生産動向

2019年度の国内生産金額は4,931億円、前年比は3.8%増となりました。データトラフィックの増加に備えたデジタル伝送装置やネットワーク接続機器の需要が好調で、業務用無線などのその他の移動体端末の輸出も堅調なことから、国内生産は、前年同月比では10か月連続で増加するとともに、2005年度以来、14年ぶりに前年比プラスとなりました。

(3)輸出動向

2019年度の輸出総額は3,074億円で、前年比は22.7%減となり、2年連続、9四半期連続で大きく減少しました。世界景気の悪化が継続していることから、ほとんどの機種とスマーフォン生産用部品の輸出が減少しました。

(4)輸入動向

2019年度の輸入総額は2兆5,783億円となり、前年比9.6%減となり、2年連続、3四半期連続で減少しました。国内でのスマートフォン需要が減少しているため、海外生産された国内メーカー製や海外メーカー製の輸入が大きく減少しました。一方で、5G基地局の整備に向けての輸入は伸びてきています。

II.国内市場動向(生産動態統計と貿易統計からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表1-1、図表1-2)

機種別の2019年度通期の実績は以下の通りです。ネットワーク関連機器が継続して伸びています。

①端末機器:1兆8,242億円(前年比 13.6%減)
②ネットワーク関連機器:8,773億円(前年比 9.0%増)

なお、生産動態統計と貿易統計から「国内市場規模=国内生産金額-輸出金額+輸入金額」として国内市場規模を算出しています(海外メーカーの輸入額も含みます)。

図表1-1:国内市場(機種別、年度別)
図表1-2:国内市場(機種別、四半期別)

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表2-1、図表2-2)

機種別の2019年度通期の実績は以下の通りです。
(2018年1月から2019年12月統計に事後修正あり、特に携帯電話に差異がありました。)

①有線端末機器
490億円(前年比5.1%減)。うち電話機20億円(同38.6%減)、ボタン電話装置141億円(同12.3%減)、インターホン330億円(同1.9%増)となりました。消費税増税や新型コロナの影響で年度後半からの個人消費や企業の設備投資が低迷していることから、ホームやビジネス向け機器の国内生産は減少傾向となりました。

②移動体端末機器
1,760億円(前年比6.8%増)。うち携帯電話(公衆用PHSを含む)1,076億円(同6.5%減)となりました。国内で生産される携帯電話は減少しましたが、業務用/簡易無線などを含むその他の陸上移動通信装置が同比で増加しました。

③有線ネットワーク関連機器
1,343億円(前年比8.5%増)。うち局用交換機90億円(同1.7%増)、構内用交換機55億円(同24.7%減)、デジタル伝送装置488億円(同13.1%増)、その他の搬送装置639億円(同9.7%増)となりました。構内用交換機は、景気悪化から設備投資意欲が低下し、企業の拠点統廃合やFMCによる回線数削減などの影響で減少傾向にあります。一方で、局用交換機は、公衆交換電話網からIP網に移行する際に必要となる収容装置や変換装置の需要が増加しました。デジタル伝送装置はデータトラフィック増加に対応した通信事業者のメトロ領域での投資があり、国内生産および輸出ともに増加しています

④無線ネットワーク関連機器
649億円(前年同期比11.2%減)。うち固定通信装置291億円(同12.8%減)、基地局通信装置358億円(同9.9%減)。携帯電話インフラ機器は5G商用サービスに向けて需要が拡大し始めましたが、海外生産や海外メーカー製が多く、国内生産は低迷しています。

⑤ネットワーク接続機器
430億円(前年同期比32.9%増)。5G商用サービスに向けたネットワークシステムの強化、動画サービスによるデータトラフィック増大への対応、さらに新型コロナ対策のための職場ネットワーク環境整備への対応等に備えて需要が伸びました。

⑥有線部品(有線機器用リレー、中継器用など)
259億円(前年同期比12.0%減)。新興国のスマートフォン生産向けの部品輸出が減少しているために、部品の生産も継続しています。

図表2-1:生産総額(機種別、年度別)
図表2-2:生産総額(機種別、四半期別)

IV.輸出動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表3-1、図表3-2)

機種別の2019年度通期の実績は以下の通りです。

①電話機及び端末機器220億円(前年同期比26.2%減)
内訳は、携帯電話191億円(同29.3%減)、コードレスホン3億円(同12.5%減)、その他 26億円(同6.5%増)となりました。米国向けでは、携帯電話が減少し、その他に含まれる業務用無線などが増加しました。

②ネットワーク関連機器1,235億円(同5.5%減)
内訳は、基地局25億円(同43.3%減)、データ通信機器1,173億円(同4.4%減)、その他ネットワーク関連機器37億円(同6.6%増)となりました。世界景気の低迷によって需要減が継続していますが、その他ネットワーク関連機器がアジア向けで増加しました。

③部品(有線系・無線系の合計)1,619億円(同31.7%減)
需要減によってアジア新興国でのスマートフォン生産が低迷していた上に、新型コロナ影響による生産停止もあって、スマートフォン生産用部品の輸出減少が続きました。

図表3-1:輸出動向(機種別、年度別)
図表3-2:輸出動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表3-3、図表3-4)

地域別の2019年度通期は、アジア向けが1,845億円(前年同期比29.4%減)、うち中国向けは600億円(同50.9%減)。北米向けが703億円(同15.5%減)、うち米国は695億円(同15.4%減)。欧州向けは412億円(同7.0%増)、うちEUは338億円(同0.4%増)となりました。スマートフォン生産部品輸出の減少が大きく影響して、輸出全体に占める中国輸出の割合は19.5%まで減少しました。

(3)地域別構成比

1位 アジア 60.0% (前年構成比 -5.7%)
2位 北米 22.9% (同 +1.9%)
3位 欧州 13.4% (同 +3.7%)
その他地域 3.7% (同 +0.1%)
図表3-3:輸出動向(地域別、年度別)
図表3-4:輸出動向(地域別、四半期別)

Ⅴ.輸入動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表4-1、図表4-2)

機種別の2019年度通期の実績は以下の通りです。
(2019年1月から2019年12月統計に事後修正がありました。)

①電話機及び端末機器1兆6,212億円(前年比15.7%減)
内訳は、携帯電話1兆6,098億円(同15.8%減)、コードレスホン45億円(同11.4%減)、その他69億円(同2.9%増)となりました。新型コロナ影響などによって、海外で生産される国内メーカー製や海外メーカー製の輸入が減少しました。一方、その他に含まれるテレビ会議や電話会議システムなどがアジアからの輸入で増えています。

②ネットワーク関連機器7,576億円(同7.4%増)
内訳は、基地局624億円(同51.7%増)、データ通信機器6,765億円(同5.8%増)、その他ネットワーク関連機器187億円(同24.8%減)となりました。データ通信機器のうち、スイッチング機器及びルーティング機器3,696億円(同2.2%増)、その他のデータ通信機器(伝送装置、通信装置、変復調装置等)3,069億円(10.4%増)となりました。携帯電話インフラ関連の整備に向けて、基地局などの輸入が大きく増加しています。

③部品(有線機器と無線機器用部品の合計)1,995億円(同10.3%減)

図表4-1:輸入動向(機種別、年度別)
図表4-2:輸入動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表4-3、図表4-4)

地域別の2019年度通期の実績では、アジアからが2兆4,131億円(前年比10.2%減)、うち中国は1兆9,019億円(同13.3%減)。北米からは686億円(同0.3%減)、うち米国は648億円(同1.1%増)。欧州からは503億円(同6.9%減)、うちEUは491億円(同7.5%減)。

ほぼ倍増した基地局の輸入は、アジアからがほとんどを占めています。

(3)地域別構成比

1位 アジア 93.6% (前年構成比 -0.6%)
2位 北米 2.7% (同 +0.3%)
3位 欧州 1.9% (同 ±0%)
その他地域 1.8% (同 +0.3%)
図表4-3:輸入動向(地域別、年度別)
図表4-4:輸入動向(地域別、四半期別)

VI.受注・出荷動向(CIAJ自主統計「受注・出荷統計」より)

(1)2019年度通期の実績

2019年度通期のCIAJ自主統計受注・出荷総額は1兆5,011億円で、前年比4.8%減となりました。このうち、国内出荷は1兆2,087億円の同比2.9%減、輸出は2,923億円の同比12.0%減となりました。

国内出荷では、移動体端末機器以外の機器が増加したものの、移動体端末機器が大きく減少したために、前年比で減少となりました。
※自主統計「受注・出荷」=CIAJ会員の国内メーカーの受注・出荷額
( =国内出荷額(国内生産+海外生産)+輸出額 =国内生産額+海外生産した輸入額 )

(2)機種別動向

国内出荷と輸出を合わせた機種別の2019年度通期の実績は以下の通りです。

①有線端末機器 5,320億円(前年比3.6%減)
IP化の移行に向けたIP関連の電話機や、インターホン・テレビドアホンの国内需要は堅調でしたが、世界景気低迷の影響を大きく受けたビジネスファクシミリ(ビジネスファクシミリ複合機を含む)の輸出減少が大きな割合を占めるため、有線端末機器全体では同比で減少しました。

②移動体端末機器 4,534億円(同比16.6%減)
その他の移動端末機器の輸出は好調でしたが、携帯電話の需要が落ち込むとともに、購入価格帯がハイエンドからミドルへ移行して端末単価が下落したことによって低迷しました。

③有線ネットワーク関連機器 2,128億円(同比7.7%増)
ボタン電話や構内用電子交換機は企業の設備投資の低迷などにより減少しましたが、デジタル伝送装置は国内需要と輸出とも好調で、PON(ONU/OLT)も国内需要で好調なため、有線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

④無線ネットワーク関連機器 2,310億円(同比10.6%増)
携帯電話インフラ装置の需要が高まりつつある中で、基地局の国内メーカー出荷は前年比で減少しましたが、官庁や民間向けの地上系固定通信装置や、官庁向け衛星系固定通信装置の需要が大幅に増加したため、無線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

⑤その他ネットワーク関連機器 445億円(同比7.9%増)
ルーターとLANスイッチとも需要が好調なため、同比で増加しました。特にLANスイッチは、通信事業者向けとその他民間向けともに大きく増加しました。

⑥通信機器用部品 274億円(同19.9%減)

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