一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会（CIAJ）では、2019年度上期（4-9月）の通信機械生産・輸出入の概況をまとめました。

I．概況

2019年4-9月の日本経済は、実質GDP成長率（2次速報値：12月9日）が年率1.8％と4四半期連続のプラス成長となりました。海外経済の減速などから外需の減少傾向が継続している一方で、消費税引き上げ前の駆け込み需要による個人消費や、設備投資・公共投資といった内需によって景気が支えられています。

この中で通信機器市場は、電気通信事業法の改正を前にした買い控えなどから携帯電話の需要が減少しており、第5世代移動通信システム（5G）に変わる端境期であることから無線系インフラ機器への投資もまだ低調です。一方で、5G商用サービスや4K/8K映像配信に対するデータトラフィックの増加に備えてバックボーンとなる有線系ネットワーク関連機器の需要は増加しました。

（１）国内市場動向

4月～9月の国内市場金額（＝国内生産金額－輸出金額＋輸入金額：部品除く）は1兆1,958億円となり、前年同期比では0.8％減と減少しました。輸入総額の減少が影響しています。

（２）国内生産動向

4月～9月の国内生産金額は2,124億円、前年同期比では6.5％増となりました。携帯電話の国内生産が増加したことと、有線ネットワーク関連機器が好調なため、上下期では2012年度上期から14期ぶりに増加しました。

（３）輸出動向

4月～9月の輸出総額は1,573億円で、前年同期比24.5％減と大幅減が継続しています。アジアの新興国ではスマートフォン出荷が頭打ちになり、その生産に向けた部品輸出が大きく減少しています。また通商問題などによって海外の設備投資も減速が続いており、上下期では3期連続で減少しました。

（４）輸入動向

4月～9月の輸入総額は1兆1,702億円となり、前年同期比3.4％減となりました。有線ネットワーク関連の国内需要が好調なため、データ通信機器のうち「その他（伝送装置、通信装置、変復調装置等）」が増加していますが、輸入総額のうち大きな割合を占める携帯電話が買い控えなどから減少したために、上下期では2期連続で減少しました。

II．国内市場動向（生産動態統計と貿易統計からCIAJにて纏め）

（１）機種別の詳細動向（参照：図表1-1、図表1-2）

機種別の4月～9月の実績は以下の通りです。
生産動態統計と貿易統計から「国内市場規模＝国内生産金額－輸出金額＋輸入金額」として、国内市場規模を算出しています（海外メーカーの輸入額も含みます）。

①端末機器：7,887億円（前年同期比  6.4％減）
②ネットワーク関連機器： 4,071億円（前年同期比 12.2％増）

図表1-1：国内市場（機種別、半期別）

図表1-2：国内市場（機種別、四半期別）

III．国内生産動向（経済産業省「生産動態統計調査」からCIAJにて纏め）

（１）機種別の詳細動向（参照：図表2-1、図表2-2）

機種別の4月～9月の実績は以下の通りです。

①有線端末機器
258億円（前年同期比0.0％増）。うち電話機13億円（同22.2％減）、ボタン電話装置72億円（同10.9%減）、インターホン173億円（同12.9％増）となりました。パーソナル・家庭向けではセキュリティに対応した電話やテレビ付きインターホンなどが増加傾向にあります。ボタン電話は、固定電話としての価値低下によるマイナス傾向が継続しています。

②移動体端末機器
686億円（前年同期比11.2％増）。うち携帯電話（公衆用PHSを含む）448億円（同7.3％増）となりました。海外で生産されるスマートフォンの買い控えに対して、国内で生産されるスマートフォン以外の携帯電話（フィーチャーフォンなど）が同比で増加しました 。

③有線ネットワーク関連機器
611億円（前年同期比15.6％増）。うち局用交換機38億円（同5.1％減）、構内用交換機38億円（同28.8％増）、デジタル伝送装置210億円（同24.0％増）、その他の搬送装置293億円（同11.5％増）となりました。構内用交換機は、国内では企業の設備投資が上向いたため、リプレイス需要が好調でした。デジタル伝送装置は、データトラフィックの急増を見込んだバックボーン需要により、国内生産の増加が継続しています。

④無線ネットワーク関連機器
253億円（前年同期比17.6％減）。うち固定通信装置118億円（同0.6％減）、基地局通信装置134億円（同28.4％減）。官庁や民間向けの防災用/業務用無線や、官庁向け衛星系通信装置の需要は増加していますが、携帯電話向けの基地局通信装置などが低迷していることも合わせて、無線ネットワーク関連機器の国内生産は同比で減少しました。

⑤ネットワーク接続機器
180億円（前年同期比38.3％増）。5G商用化などの新たなサービスに対応するために高速・高機能化の更新需要が伸び、ネットワーク接続機器の国内生産は同比で増加しました。

⑥有線部品（有線機器用リレー、中継器用など）
136億円（前年同期比11.1％減）。海外で生産されるスマートフォン向けの部品輸出が減少しているために、部品生産の減少も継続しています。

図表2-1：生産総額（機種別、半期別）

図表2-2：生産総額（機種別、四半期別）

IV．輸出動向（財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め）

（１）機種別の詳細動向（参照：図表3-1、図表3-2）

機種別の4月～9月実績は以下の通りです。

①電話機及び端末機器121億円（前年同期比0.6％減）
内訳は、携帯電話107億円（同1.4％増）、コードレスホン1.1億円（同39.2％減）、その他13億円（同9.9％減）となりました。携帯電話は米国向けが2017年度第2四半期から8四半期連続で大きく増加しましたが、2019年度第2四半期から減少に転じました。

②ネットワーク関連機器600億円(同4.4％減）
内訳は、基地局13億円（同51.7％減）、データ通信機器565億円（同3.0％減）、その他ネットワーク関連機器22億円（同23.1％増）となりました。データ通信機器は、海外景気低迷による需要減により輸出が低迷しています。

③部品（有線系・無線系の合計）853億円（同36.2％減）
2018年度当初からのIT輸出、特に通信機器用の部品輸出の減少傾向が継続しています。

図表3-1：輸出動向（機種別、半期別）

図表3-2：輸出動向（機種別、四半期別）

（２）地域別の詳細動向（参照：図表3-3、図表3-4）

地域別の4月～9月実績は、アジア向けが962億円（前年同期比33.5％減）、うち中国向けは333億円（同51.7％減）。北米向けが360億円（同5.8％減）、うち米国は356億円（同5.4％減）。欧州向けは198億円（同7.7％増）、うちEUは171億円（同6.5％増）となりました。

通商問題や、スマートフォン需要の頭打ちから、輸出全体に占める中国輸出の割合は21.1％とさらに減少しました。

（３）地域別構成比

1位	アジア	61.2％	（前年同期比 －8.2％）
2位	北米	22.9％	（同　＋4.6％）
3位	欧州	12.6％	（同　＋3.8％）
	その他地域	3.3％	（同　－0.2％）

図表3-3：輸出動向（地域別、半期別）

図表3-4：輸出動向（地域別、四半期別）

V．輸入動向（財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め）

（１）機種別の詳細動向（参照：図表4-1、図表4-2）

機種別の4月～9月実績は以下の通りです。

①電話機及び端末機器7,064億円（前年同期比8.0％減）
内訳は、携帯電話7,007億円（同8.0％減）、コードレスホン23億円（同13.4％減）、その他33億円（同5.4％増）となりました。電気通信事業法の改正を前にした買い控えなどから、国内メーカーと海外メーカーが海外で生産するスマートフォンの輸入が減少しました。

②ネットワーク関連機器3,627億円（同10.2％増）
内訳は、基地局203億円（同2.7％増）、データ通信機器3,332億円（同12.1％増）、その他ネットワーク関連機器92億円（同23.9％減）となりました。通信ネットワーク設備の需要が増えたため、データ通信機器のうち「その他（伝送装置、通信装置、変復調装置等）」が同比30.9％増と継続して増加しました。

③部品（有線機器と無線機器用部品の合計）1,011億円（同11.8％減）

図表4-1：輸入動向（機種別、半期別）

図表4-2：輸入動向（機種別、四半期別）

（２）地域別の詳細動向（参照：図表4-3、図表4-4）

地域別の4月～9月実績では、アジアからが1兆879億円（前年同期比3.8％減）、うち中国は8,342億円（同7.5％減）。北米からは361億円（同4.7％増）、うち米国は340億円（同6.8％増）。欧州からは227億円（同18.5％減）、うちEUは219億円（同20.3％減）。

データ通信機器のうち「その他のデータ通信機器（伝送装置、通信装置、変復調装置等）」は、アジア、欧州、北米からの輸入が増えました。

（３）地域別構成比

1位	アジア	93.0％	（前年同期比 －0.6％）
2位	北米	3.1％	（同　＋0.3％）
3位	欧州	1.9％	（同　－0.4％）
	その他地域	2.0％	（同　＋0.7％）

図表4-3：輸入動向（地域別、半期別）

図表4-4：輸入動向（地域別、四半期別）

VI．受注･出荷動向（CIAJ自主統計「受注･出荷統計」より）

（１）2019年度上期（4-9月）の実績

4月～9月のCIAJ自主統計受注・出荷総額は7,527億円で、前年同期比2.9％増となりました。このうち、国内出荷は5,985億円の同比7.8％増、輸出が1,541億円の同比12.8％減となりました。
※自主統計「受注・出荷」＝CIAJ会員の国内メーカーの受注・出荷額
（＝国内出荷額(国内生産＋海外生産)＋輸出額  ＝国内生産額＋海外生産した輸入額）

（２）機種別動向

機種別の4月～9月実績は以下の通りです。

①有線端末機器  2,703億円（前年同期比2.4％減）
コードレスホンやインターホンが堅調でしたが、海外景気低迷の影響を大きく受けたパーソナルファクシミリ（パーソナルファクシミリ複合機を含む）やビジネスファクシミリ（ビジネスファクシミリ複合機を含む）の輸出が減少したため、有線端末機器全体では同比で減少しました。

②移動体端末機器  2,147億円（同比13.9％減）
携帯電話は買い控えなどによって需要が低迷しました。その他の移動端末機器（防災用/業務用無線など）は国内需要、輸出とも好調です。

③有線ネットワーク関連機器  1,026億円（同比18.6％増）
ボタン電話や構内用電子交換機は国内ではほぼ横ばいですが、輸出が減少しました。また、デジタル伝送装置は、国内需要、輸出とも好調で大きく増加しているため、有線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

④無線ネットワーク関連機器  1,293億円（同比60.2％増）
携帯電話向けの基地局通信装置は低迷していますが、官庁や民間向けの防災用/業務用無線や、官庁向け衛星系通信装置の需要が大幅に増加しているため、無線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

⑤その他ネットワーク関連機器  215億円（同比5.4％増）
ルーターは横ばいですが、LANスイッチが好調を継続しており、同比で増加しました。

⑥通信機器用部品  142億円（同21.0％減）

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