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2022年度上期(4~9月) 通信機械生産・輸出入概況 ~通信インフラ需要は一服したものの、部品不足は解消しつつあり、国内需要は好調~

2022年12月14日

一般社団法人 情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)では、2022年度上期(4-9月)の通信機械生産・輸出入の概況をまとめました。

I.概況

2022年度4~9月の日本経済は、個人消費がウィズコロナの下での経済社会活動の正常化の進展により、夏場に感染拡大があったものの前期比プラスを維持しており、設備投資が企業の積極的な投資意欲等を背景に引き続き増加するなど、民需を中心として景気は緩やかに持ち直している。ただ、新型コロナ禍や半導体不足の影響による供給制約が緩和されたことから、輸入増や対外サービスの一時的な支払いが増加したために、7-9月四半期の実質GDP成長率(1次速報値:11月15日)は年率1.2%減と4四半期ぶりのマイナスとなりました。この中で、2022年度4月~9月の通信機器市場では、部品調達難が解消されつつあるボタン電話や構内用交換機の需要が増加しており、円安影響によって輸出も好調なファクシミリ(複合機を含む)の需要も増加しています。一方で、5G高速大容量化のエリア展開に向けたNSA方式の投資が一服している5G基地局関連は低迷しています。

(1)国内市場動向

4月~9月の国内市場金額(=国内生産金額-輸出金額+輸入金額:部品除く)は1兆6,403億円となり、前年同期比では12.0%増と増加しました。夏モデルの出荷が好調であったスマートフォンの輸入が増加したことなどから、国内生産金額の減少をカバーして、国内市場金額は増加しました。

(2)国内生産動向

4月~9月の国内生産金額は1,621億円、前年同期比では8.6%減となりました(秘匿となった携帯電話を除外)。部品調達難が解消されつつあるビジネス関連機器は生産が増加しましたが、通信インフラ需要が一服したことなどから、国内生産は半期で2期連続減少しました。

(3)輸出動向

4月~9月の輸出総額は1,661億円、前年同期比では1.7%増となりました。海外のスマートフォン生産で使用される部品の輸出は減少しましたが、経済活動が回復してきている海外市場向けの需要が増加したことから、輸出額は半期で3期連続で増加しました。

(4)輸入動向

4月~9月の輸入総額は1兆6,736億円、前年同期比では16.8%増となりました。国内でのスマートフォン需要が好調な上、ネットワークの光ケーブル化の需要に合わせて、ルーター&スイッチや伝送装置を含むデータ通信機器も好調なため、輸入額は半期で4期連続で増加しました。

II.国内市場動向(生産動態統計と貿易統計からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表1-1、図表1-2)

機種別の4月~9月の実績は以下の通りです。第2四半期で需要好調なため端末機器とネットワーク関連機器がともに増加したことから、前年同期比では増加に転じました。

①端末機器:1兆877億円(前年同期比 13.6%増
②ネットワーク関連機器:5,527億円(前年同期比 9.0%減

なお、生産動態統計と貿易統計から「国内市場規模=国内生産金額-輸出金額+輸入金額」として国内市場規模を算出しています(海外メーカーの輸入額も含みます)。生産動態統計で携帯電話が2021年度4Qから秘匿となり、以降、携帯電話分は合計に含まれていません

図表1-1:国内市場(機種別、半期別
図表1-2:国内市場(機種別、四半期別

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表2-1、図表2-2)

機種別の4月~9月の実績は以下の通りです。

①有線端末機器
203億円(前年同期比21.7%増)。うち電話機7億円(同11.8%減)、ボタン電話装置69億円(同1.3%増)、インターホン128億円(同39.5%増)となりました。半導体などの部品不足の影響が緩和されつつあるボタン電話装置の国内生産が増加しました。延期されていた住宅やオフィスの設置工事が再開したことから、インターホンの国内生産が増加しました。

②移動体端末機器
187億円(前年同期比7.6%減携帯電話が2021年度4Qから秘匿となり、以降、合計や前年比に含んでいません)。その他の移動体端末機器のうち、その他の陸上移動通信装置142億円(同2.4%増)、海上・航空移動通信装置45億円(同29.3%減)となりました。海外での新型コロナ禍からの経済回復により、陸上移動通信装置の需要が旺盛なことから、国内生産が増加しました。

③有線ネットワーク関連機器
662億円(前年同期比0.7%減)。うち交換機102億円(同7.5%減)、デジタル伝送装置284億円(同5.6%減)、その他の搬送装置277億円(同12.1%増)となりました。構内用交換機は、半導体などの部品不足の影響が残り国内生産が減少しました。デジタル伝送装置も、光ケーブル網の拡大工事に合わせて需要は再び増加傾向にありますが、供給制約も影響して国内生産が減少しました。

④無線ネットワーク関連機器
322億円(前年同期比32.4%減)。うち固定通信装置72億円(同17.4%減)、基地局通信装置250億円(同35.8%減)。固定通信装置は、地上系で携帯電話基地局のバックホール需要は増加したものの、防災行政無線向けの需要が減少しました。基地局通信装置は、5G高速大容量化のエリア展開に向けたNSA方式の投資が一服し、国内生産が減少しました。

⑤ネットワーク接続機器
108億円(前年同期比17.9%減)。5G通信インフラに関連した需要が伸びず、部品不足の影響もあって国内生産が減少しました。

⑥有線部品(有線機器用リレー、中継器用など)
138億円(前年同期比0.1%増)。新型コロナ禍から需要回復しつつある機器生産に向けて、有線部品の国内生産も増加しつつあります。

図表2-1:生産総額(機種別、半期別)
図表2-2:生産総額(機種別、四半期別)

IV.輸出動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表3-1、図表3-2)

機種別の4月~9月の実績は以下の通りです。

① 電話機及び端末機器122億円(前年同期比34.3%増
内訳は、携帯電話96億円(同40.0%増)、コードレスホン2億円(同325.0%増)、その他25億円(同11.2%増)となりました。米国向けスマートフォンが増加したほか、景気回復しつつある海外市場で好調なコードレスホン、業務用無線などが増加しました。

② ネットワーク関連機器770億円(同27.4%増)
内訳は、基地局145億円(同46.9%増)、データ通信機器608億円(同23.7%増)、その他ネットワーク関連機器17億円(同17.0%増)となりました。経済活動が回復してきている海外市場向けにネットワーク関連機器が増加、O-RANを活用した基地局も増加しました。

③ 部品(有線系・無線系の合計)769億円(同18.0%減)、中国などのスマートフォン市場 の低迷から、スマートフォン生産用部品の輸出が減少しました。

図表3-1 輸出動向(機種別、半期別)
図表3-2 輸出動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表3-3、図表3-4)

地域別の4月~9月の実績は、アジア向けが850億円(前年同期比20.6%減)、うち中国向けは379億円(同31.3%減)。北米向けが595億円(同54.8%増)、うち米国は583億円(同54.8%増)。欧州向けが168億円(同15.0%増)、うちEUは138億円(同28.2%増)となりました。

米国向けがスマートフォン、基地局、部品で増加しており、輸出額では中国向けよりも半期で2期連続上回っています。

(3)地域別構成比

1位 アジア 51.2% (前年同期比 -14.4%)
2位 北米 35.8% (同 +12.3%)
3位 欧州 10.1% (同 +1.2%)
その他地域 2.9% (同 +0.9%)
図表3-3 輸出動向(地域別、半期別)
図表3-4 輸出動向(地域別、四半期別)

Ⅴ.輸入動向(財務省「貿易統計」からCIAJにて纏め)

(1)機種別の詳細動向(参照:図表4-1、図表4-2)

機種別の4月~9月の実績は以下の通りです。

① 電話機及び端末機器1兆6,736億円(前年同期比16.8%増
内訳は、携帯電話1兆545億円(同20.2%増)、コードレスホン25億円(同23.7%増)、その他38億円(同47.6%増)となりました。スマートフォンは、夏モデルの出荷が好調であった上に、海外メーカー製の9月発売もあり、海外で生産されたスマートフォンの輸入が増加しました。

② ネットワーク関連機器5,204億円(同18.0%増
内訳は、基地局258億円(同48.1%減)、データ通信機器4,825億円(同26.8%増)、その他ネットワーク関連機器121億円(同14.2%増)となりました。データ通信機器のうち、スイッチング機器及びルーティング機器2,124億円(同31.4%増)、その他のデータ通信機器(伝送装置、通信装置、変復調装置等)2,701億円(同23.4%増)となりました。基地局は国内需要が低迷して輸入も減少しましたが、ネットワークの光ケーブル化の需要に合わせて増加しています。

③ 部品(有線機器と無線機器用部品の合計)924億円(同15.7%減

図表4-1 輸入動向(機種別、半期別)
図表4-2 輸入動向(機種別、四半期別)

(2)地域別の詳細動向(参照:図表4-3、図表4-4)

地域別の4月~9月の実績では、アジアからが1兆5,975億円(前年同期比17.1%増)、うち中国は1兆2,631億円(同17.5%増)。北米からは266億円(同20.6%増)、うち米国は243億円(同20.5%増)。欧州からは291億円(同4.6%減)、うちEUは279億円(同5.0%減)となりました。

アジアからは、基地局の輸入が前年度比で減少しましたが、携帯電話やデータ通信機器の輸入が増加しており、好調を継続しています。

(3)地域別構成比

1位 アジア 95.4% (前年同期比 +0.2%)
2位 北米 1.6% (同 ±0%)
3位 欧州 1.7% (同 -0.4%)
その他地域 1.2% (同 ±0%)
図表4-3 輸入動向(地域別、半期別)
図表4-4 輸入動向(地域別、四半期別)

VI.受注・出荷動向(CIAJ受注・出荷統計より)

(1)2022年度4月~9月の実績

CIAJ会員の国内メーカーによる受注出荷の4月~9月の実績は7,045億円で、前年同期比5.1%増となりました。このうち、国内出荷は5,236億円の同比1.3%減、輸出は1,810億円の同比29.8%増となりました。

国内出荷では、有線系の端末機器やネットワーク関連機器が増加した一方で、無線系で衛星系が増加したものの、移動体端末やネットワーク関連機器が減少したために前年同期比で減少しました。輸出では、海外景気の回復もあって、有線系の端末・ネットワーク関連機器が大幅に増加したことから前年同期比で増加しました。
※CIAJ受注・出荷統計=CIAJ会員の国内メーカーの受注・出荷額
(=国内出荷額+輸出額 =国内生産額+海外生産した輸入額)

(2)機種別動向

国内出荷と輸出を合わせた機種別の4月~6月の実績は以下の通りです。

① 有線端末機器 2,606億円(前年同期比21.9%増
電話機やインターホンは、海外生産での部品不足や人員不足の影響を受けて減少しました。一方で、ファクシミリ(パーソナル向けとビジネス向けで、複合機を含む)は、部品不足などによる供給制約が残るものの、需要は好調に推移し、円安影響もあって、国内需要も輸出も増加しました。このため、有線端末機器全体では同比で増加しました。

② 移動体端末機器 1,857億円(同比5.8%減
携帯電話は、5G対応への買い替えが進んでいるスマートフォンの需要は増加していますが、フィーチャ―フォンを含めた携帯電話全体では、価格帯が比較的安い端末が好まれることから出荷金額は減少しました。このため、移動体端末機器全体では同比で減少しました。

③ 有線ネットワーク関連機器 1,075億円(同比19.6%増
ビジネス機器は、延期されていた企業の設備投資の再開などから国内需要は回復しつつあり、ボタン電話装置や構内用交換機が増加しました。デジタル伝送装置やPON・MCは、光ケーブル網の拡大工事が進んでおり、部品不足による供給制約もありますが、2020年度特需の反動で減少した2021年度と比べて増加しつつあります。輸出も海外景気の回復によって増加しました。このため、有線ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

④ 無線ネットワーク関連機器 1,180億円(同比11.7%増
衛星系固定通信装置は、国内需要と輸出とも計画以上の大幅増となりました。しかし、基地局通信装置が、5G高速大容量化のエリア展開に向けたNSA方式の投資が落ち着いたことから減少し、地上系固定通信装置も減少しました。このため、無線ネットワーク関連機器全体では同比で減少しました。

⑤ その他ネットワーク関連機器 190億円(同比9.9%増
LANスイッチは、半導体などの部品不足の影響があり減少しました。一方でルーターは、通信事業者やデータセンターなどに向けたインフラの高速化需要で増加しました。このため、その他ネットワーク関連機器全体では同比で増加しました。

⑥ 通信機器用部品 137億円(同26.0%減

【補足】国内生産動向での携帯電話の動向

III.国内生産動向(経済産業省「生産動態統計調査」)において、比較的大きな実績値をもつ「携帯電話」が、2021年度4Qから秘匿となったため、推定した結果を図表に追記し、その差異を把握しました。

推定方法は、CIAJ受注出荷統計での携帯電話実績の比率を参照し、同様の傾向になると仮定して、生産額の2021年度1~3月分、2022年度4~9月分を推定しました(図表2-1補足の緑色のセル)。また、前年同期比は、携帯電話分を含めて算出し直しています。

図表1-1 補足 国内市場(機種別、半期別)
図表2-1 補足 国内市場(機種別、半期別)

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