2022年7月6日
CIAJ 電磁妨害対策技術委員会
近年、通信装置において高集積化された半導体やLSIを使われるにつれて、粒子放射線が引き起こすソフトエラー(*1)が通信ネットワークで頻繁に発生し、ネットワーク保守や信号伝送品質に深刻な影響を及ぼすようになりつつあります。このソフトエラーによる影響を低減するためには、システムとしてエラー訂正、多重化、部分的イニシャライズなどの対策を施し、その効果を確認することが重要です。この状況を踏まえ、ITU-T(国際電気通信連合・電気通信標準化部門)は、設計・対策方法、試験・評価方法、信頼性規定に関する事項を勧告化しました。更に、日本国内ではこれらの勧告に整合したTTC標準が制定されました(*2)。
CIAJでは、通信装置のソフトエラーに関する信頼性を国際標準に準拠して評価するための規定、そしてその評価結果、すなわちソフトエラー信頼性をCIAJのホームページで公開するための手順等を示した規定などの、ガイドラインを制定しました。
同ガイドラインは、通信装置の加速試験の方法、信頼度レベル、試験装置などに関して記した技術基準(三部)、そして 対象装置や試験装置の登録手続きを規定する運用規定(二部)により構成されます。詳細名称以下のとおりです。
技術基準 第1部 信頼性評価および判定方法 (CES-0110-1) |
技術基準 第2部 ソフトエラー信頼性評価のための試験設備の評価方法 (CES-0120-1) |
技術基準 第3部 測定機器の校正及び点検 (CES-0130-1) |
運用規定 第1部 装置の信頼性登録方法 (CES-0140-1) |
運用規定 第2部 試験設備の登録方法 (CES-0150-1) |
本ガイドラインの制定、およびそれを利用した通信装置のソフトエラー信頼性の登録/公開サービスにより、我が国のソフトエラー対策を推進し、通信装置およびネットワーク全体の信頼性を向上させることができます。ユーザにとってもシステム選定時にこの公開情報が役立ち、また、メーカにとっては自社のソフトエラー信頼度を顧客へアピールでき、製品の競争力アップにつながります。
各ガイドラインのダウンロードはこちら(↓)のページよりお願い致します。
https://www.ciaj.or.jp/standards_publications/standards/standards.html
- 問い合わせ先
-
共通技術部
TEL:03-5962-3452 FAX:03-5962-3455
(*1)ソフトエラーについて
宇宙に存在する高エネルギー粒子が地球の大気に突入すると、大気中の物質の原子核に衝突し核反応が起き、原子核内部の中性子が飛散する。こうして大気中に生成された中性子は、稀に通信装置の中の半導体、集積回路(メモリ、FPGA)などの部品内部のシリコン原子核と核反応を起こし、様々な粒子を発生させる。これが電気的なノイズとなり、一時的なデータ誤り(エラー)を発生させる、このデータ誤り現象をソフトエラーと呼びます。
(「通信装置のソフトエラー対策のITU-T国際標準化とTTC標準TTC」Report 2019. January Vol.33/No.4より引用して要約・加筆)
(*2)TTC基準については、以下のものが制定済みです。
TTC標準 JT-K124 通信装置の粒子放射線影響の概要
TTC標準 JT-K131 通信装置のソフトエラー対策設計手法
TTC標準 JT-K130 通信装置のソフトエラー試験手法
TTC標準 JT-K138 粒子放射線試験に基づく対策のための品質推定法とアプリケーションガイドライン
TTC標準 JT-K139 通信装置の粒子放射線影響の信頼度基準